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freee人事労務で、トランスジェンダーの「生活上の性別」と「戸籍上の性別」の管理が分けられるようになった話。

freee DEI leadのmioです。6月はプライド月間(PRIDE month)のため、freeeの「ジェンダーによらず活躍できる環境づくり」の事例をご紹介をさせていただきます。
プライド月間(PRIDE month)とは?はこちらがよくまとまっています。

「社会全体を前に推し進めるべく、本質的であればあえてリスクを取って挑戦していく」freee人事労務での取り組みについて

freeeは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションのもと、だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォームを実現しようとしている日本発の統合型ERPの開発・販売をしている会社です。freee会計、freee人事労務、freee販売などあらゆる業務の課題を解決するプロダクトを展開し、個人事業主から上場企業まで幅広くご利用いただいています。

「freee 人事労務」の概要イラスト。従業員が勤怠を記録し、管理者が給与計算や労務管理を行い、会計ソフト「freee 会計」と連携できる流れがイラストで表されています。
freee人事労務のプロダクトイメージ写真

組織が一定規模になると、人事労務に関わる皆さんの課題で上がるのが、「人事データベース」「人事マスタ」の話です。従業員の個人情報を一元管理できるものを指しますが、給与情報や評価情報、従業員の個人情報といった情報の性質から、多重管理をしている会社が少なくありません。
それまでの運用が属人化しているケースも多く、担当者ごとに管理している情報が違うケースは、担当者の退職に伴い、運用から漏れてしまうケースなども発生してしまうリスクがあります。

この運用で、「極めてセンシティブだが、運用ルールの想定に入っていないケースが多い」項目の一つが、従業員の「生活上の性別」に関する情報です。
健康保険証を発行する上で必要なため、労務手続き上「戸籍上の性別」は運用ルールに必ず入っていますが、生活上の性別が戸籍上の性別と乖離があるトランスジェンダーの方の運用は、個別対応であることが大半かと思われます。
複数名のトランスジェンダーの方が在籍するfreee自身も、これまで健康診断時の対応などの場面で、個別対応にて運用をしておりました。

ただ、人的資本の情報開示が2023年3月31日以降に終了する事業年度にかかる有価証券報告書から適用され、その項目の中に性別情報を含むデータを求められるほか、社内でもジェンダーギャップの解消のための施策を検討する場面などで性別情報に触れる可能性があり、「戸籍上の性別」を元にした運用だけでは、不用意なアウティングに繋がる可能性が考えられました。
(※アウティング……本人の了解を得ずに他の人に公にしていない性的指向や性同一性等の秘密を暴露する行動のこと)

また、弊社はIT企業のためありませんが、製造業や接客業の場合、更衣室の問題や、ユニフォームの問題など、日常業務において性別情報がどうしても必要になってくるケースもあり、製造業のDEI担当者から、勉強会などで性別の管理方法と対応についての悩みをご相談いただくこともありました。

自社の課題解決を目指すのと同時に、同時にユーザーさんたちの現場での悩みの解決にも繋げたいと考え、社内で人事データベースを一元管理できないかと弊社のメンバーサクセス部門とプロダクトマネージャーたち、サポート部門を巻き込んでの相談を始めました。
(※メンバーサクセス部門……弊社の労務部門の呼称。メンバーがfreee入社後に活躍する(サクセス)ことを目的にしているため、チーム名をメンバーサクセスとしています。)

本施策に関わったメンバー一同の前提にあったのは、freeeに参画するメンバーに必ず持っていてほしい「マジ価値2原則」のうちの一つ、「社会の進化を担う責任感」。社会全体を前に推し進めるべく、社会に信頼される存在であると同時に、本質的であればあえてリスクを取って挑戦していく、というものです。

社会の進化を担う責任感:社会全体を前に推し進めるべく、社会に信頼される存在であると同時に、本質的であればあえてリスクを取って挑戦していく。
社会の進化を担う責任感

トランスジェンダーの方の人数の算出はとても難しいものですが、世界各国でのデータを見るに人口の0.5%−1%ほどと言われています。それに対して、2020年の総務省統計局の調査によれば、日本で戸籍変更したトランスジェンダーの方の割合は0.000081%となっており、その差分がつまり戸籍上の性別と生活上の性別が異なる、今回の施策の対象になる方々と言えます。
人数は少ないかもしれませんが、当事者の人生においての重大性は極めて甚大です。私たちのプロダクトを通して、この方々の生活が脅かされないよう、仕組みでカバーする方法はないだろうか。またfreeeユーザーさんたちの中でも、対応方法に困る方を減らしたい。そういった想いからこのプロジェクトを進めていきました。

freee人事労務で「生活上の性別」と「戸籍上の性別」の管理が可能に。更に、申請のフローの最適の形も提案し、当事者も担当者も悩まなくて済むように。

この画像は、カスタム申請作成画面のスクリーンショットです。従業員が利用する申請を作成するためのフォームです。以下は各フィールドの説明です:

申請名 (必須): 自認性別登録
申請の名称です。
申請コード (必須): A001
申請を管理するための番号です。
説明: 会社で扱われたい性別と戸籍上の性別が異なる場合に提出
従業員向けの申請内容の補足説明です。
申請種別: 身上変更
勤怠申請または身上変更申請として指定します。
備考: 利用しない
備考を記入させる場合に利用します。
申請理由: 任意にする
申請理由を記入させる場合に利用します。
添付書類: 利用しない
添付書類を記入させる場合に利用します。
カスタム申請作成画面

プロダクトマネージャーたちからの助言やメンバーサクセス部門の申請の作成、社内の当事者たちからのフィードバックを経て、freee人事労務のカスタム項目&カスタム申請を使って、社内で「生活上の性別」と「戸籍上の性別」を別で管理できるようになりました。

ここまでくれば、社内施策としては、一旦完了ですが、私たちにはとても大事な仕事が残っていました。
この仕組みをユーザーさんも苦労することなく社内で構築できるためのナレッジの共有です。

トランスジェンダーの方のみならず、社内で何かしらの困難を抱える方の対応を進める上では、運用上の問題点を極力無くしておく必要があります。申告の際の一番のハードルは何かと当事者にヒアリングをしたところ、「社内申請をしたときに、直属のマネージャー承認が必要で、知られたくない個人情報を見られてしまうこと」という答えが返ってきました。

本件においても、制度を整える担当者が意図せずに申請しづらい経路を設定しまった、というケースが発生することがないように「freeeとして直接労務担当者への申請経路を推奨しよう」と申請経路の設定まで踏み込んだヘルプページを作成しました。

トランスジェンダーの性別登録の管理を行う – freee ヘルプセンター

このページを作るために、サポートチームが主体となって、当事者メンバーやメンバーサクセス部門からのレビューを経て、公開しました。設定を行うのは、各企業担当者の皆さんのため、ご判断は委ねますが、freeeとしての知見を生かしたヘルプページになりました。

実際に進めてみて感じた「マジ価値」の重要さ。

今回この施策を進めるにあたって、感じたのはfreeeのユーザーに届ける「マジ価値」志向の強さでした。ただ「ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えるか」という視点でのみ話が進むことは、こんなに心地良いのかと自社のことながら嬉しく感じました。

今回本件に関わったfreee人事労務のプロダクトマネージャー吉田にも、コメントをもらっています。

freee人事労務は労務業務の課題を解決するプロダクトです。
労務業務は労務担当者だけでなく、従業員の協力があって成り立っています。具体的には勤怠情報の登録や入退社や身上変更に伴う従業員自身の情報変更に対する更新業務などです。

freee人事労務のプロダクトマネージャーはこういった労務業務を通した労務担当者、従業員の双方に目を向け、それぞれの課題解決を目指しています。そのためのアプローチとして、ユーザへのヒアリングなどを行うことで、労務業務における課題を正しく認識し、その課題を解決するためのソリューションを考えるようにしています。
しかしながら、今回のようなトランスジェンダーの課題はまだまだスモールビジネスの世界においてはまだまだ浸透が弱く、認識も広がっていない領域です。
センシティブな内容でもあるということもあいまって、ユーザから声が上がってくるということも少なく、自分たちではなかなか気づけない課題でもあります。このような課題こそ、労務担当者と従業員双方にとってコミュニケーション面などで課題が大きいと考えています。
このような課題に対して、解決方法について一緒に考えることができたことは大きな発見であり、解決していくうえでの大きな前進にもなりました。

使い方が広くスモールビジネスの世界にも認知され、結果として世の中の労務担当者、従業員それぞれが抱える課題の解決につながることを願っています。そして、今後も引き続きスモールビジネスにかかわるすべての人の課題を解決し、社会全体を前に推し進めていきたいと考えています。

freee人事労務プロダクトマネージャー吉田コメント

まだまだあります、freeeの取り組み

freeeでは、本プロダクト以外にも、社内で様々な取り組みをしています。以下に一部を紹介します。

freee社内での取り組みを画像や写真を用いて説明しています。内容は以下の文章に文字で書き直しています。
freee社内での取り組み

メンバーが使いたいトイレを安心して使えるように
みんなが不安なくトイレが使えるよう、freeeのトイレは「ジェンダーフリー」になっています(現状では大崎オフィスのみ)。多目的トイレも性自認だけでなく、様々な事情がある方を前提にデザインされています。アイコンはジェンダー問わずを表すだけでなく車椅子の方や宇宙人がいるなど、「だれでも」ということを表現したアソビゴコロあるデザインをデザイナーが考案してくれました。
保険証の表記変更の依頼
freeeは関東ITソフトウェア健康保険組合に加入していますが、事務局と相談し性別表記や戸籍上の名前の表記を裏面に行うなどの対応を行っています。
合理的配慮の具体例リスト公開
人に合わせた柔軟な対応をしています。「こんなことを相談したらカミングアウトと思われないかな?」「相談を受けたがfreeeとしてどういう対応ができるか知っておきたい」という声にお答えして、社内で合理的配慮の一覧表を公開しました。 LGBTQ+の当事者向けの対応事例も共有されており、会社がどういう対応をしてくれるのかをカミングアウトを要せずに知ることができるようになっています。
健康診断対応
特にトランスジェンダー当事者にとって、健康診断時の対応はとてもセンシティブです。 移行フェーズにおいて対応方法が変わります。社内では対応することを前提に、ワークフローが組まれています。
各種相談窓口の拡充
職場でのコミュニケーションで齟齬が発生することは誰にでもあることです。 そんなちょっとしたコミュニケーション上のヘルプから生きづらさの相談まで、みんながじぶんらしく働ける環境を実現するためのアシストをするための複数の窓口があります。 ダイバーシティよろず相談窓口/産業医相談窓口/心理カウンセラー相談窓口など、相談の種類に寄り添った窓口を開放しています。
緊急連絡先の続柄
社内の制度(慶弔見舞金、社宅制度、特別休暇制度等)においては、同性パートナーも、事実婚のパートナーも、異性のパートナーも、同等に扱うこととなっています。 また、会社として緊急連絡先を登録する続柄が選べるのですがその続柄に「パートナー」が選べるようになっています。
オフカツ「LGBTQ+allies」
部活よりもゆるいfreeeのゆるふわコミュニティ「オフカツ」にて、社内での情報交換やコミュニケーションなどを目的とした従業員グループがあります。 定期的に集まって、ご飯を食べ、社内の事を知るコミュニティとして機能しており、約100名のメンバーが参加しています。

freeeはまだまだすべてにおいて環境が整っているわけではありません。
多様であること(Diversity)や公平であること(Equity)を前提に、お互いの違いを当たり前だと思えるよう(Inclusion)、誰もが自然体で安心して働ける環境を作っていけるよう、引き続き環境整備に励みます。

freeeは「あえ共freee」というマガジンから、freeeの事業や組織に関する情報を「あえて、共有」しています!ぜひフォローをお願いします(^^)


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