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バンコクへと誘った言葉(2017年『魅惑のバンコク』)

バックパッカーという言葉が広まる前、リュックを背負って旅する若者たちが「カニ族」と呼ばれていたのをご存知でしょうか? 北海道から沖縄まで、日本の最果てをめざして夏に旅する個人の長期旅行者たちが、1955年頃から登場しはじめ、1960年代後半に現象化したのです。彼らの背負うリュックは横に長く、列車内など細い道を歩くときに横バイで進む姿からそう呼ばれました。

そのカニ族がバックパッカーと名前を変えたのは1976年。元祖アウトドアライターの故・芦沢一洋による書籍『バックパッキング入門』が刊行された年です。もとをたどると話は1972年。芦沢が訪れたカリフォルニア州バークレーの書店に「ニューライフ・スタイル」というコーナーが作られていました。健康、自然食品、エコ、スポーツ、生態学などのジャンルが雑多に並ぶ中、彼はそこでバックパッキングに関する書籍と出会います。翌年からアウトドア雑誌で「新しいアウトドアのスタイル」として紹介しはじめ、1976年に一冊の書籍にまとめました。ここから日本ではバックパッカーのブームが起きました。背負う荷物は横長から縦長へ、旅先は国内から国外へと世界を広げ、イメージは一新されました。

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2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定の定額マガジン(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。あとnoteの有料記事はここに登録すれば単体で買わなくても全部読めます(※登録月以降のことです!登録前のは読めない)。『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』も全部ある。

2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定です(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。テキストを発掘次第追…

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