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OZAWA選手が見たくて金を払ってしまった!

いつのころからか、プロレスについて自発的に何かを調べるということがなくなった。

例えば「誰と誰の試合がすごくよかった」とか「どこどこの誰がすごくいい選手でさ」なんて話をいくら聞かされても、脳内でおおよその予測がついてしまうというのか。実際ここ数年、そういうものだったと思うのだ、日本のプロレスは。近年、自発的に知りたいと思い、そうしてみた出来事といえば

■メイン後にKENTA選手が乱入して内藤選手を襲撃し、バッドエンドに終わった新日本のドーム大会

■福田社長の白塗り、アクトレスタイム、黒幕の渦に飲み込まれた昨年正月の全日本

■飯伏選手が試合中に怪我をしてしまった、昨年正月のノア武道館での丸藤さんとの試合

■Sareee選手の裏投げの件

これくらいだったはず。結局、そこから事件の匂いが漂ってこないものには一切興味をそそられないというか。なので「いい試合だった」と聞かされても、一向に興味が持てないのだ。そもそもプロレスがお金をいただいて人様に見ていただくモノである以上、試合内容がいいなんていうのは大前提以前の当たり前の話だとしかオレは捉えていない。それはさておき。

おととい、2日の夜のこと。ブラックめんそーれから電話があった。声のトーンが酔っ払い。

「明日も千葉で試合ですけど家でチューハイ飲んでますよ、シャー!」

案のじょう酔っ払っていた。前日はノアの武道館大会に参戦してきたという。そこから、かなり興奮気味にこんな話を始めたのだ。

「タジリさん、OZAWA選手って知ってます?シャー!」

「あ、清宮選手に酷いことばかりする若い選手でしょ?」

プロレスについて自発的に何かを調べることはないオレでも、その一連のストーリーについては、毎日のようにどこからか流れてくるtweetの数々で知っていた。それだけ拡散数が多かったということなのだろう。

「そのOZAWA選手と清宮くんのメインが凄かったんですよ、シャー!」

「どんな感じに?」

「始まる前からOZAWA選手への大コールで、始まってからもそれが続いて、最後はトップに飛び乗ってのフェニックスでチャンピオンになっちゃって、お客さんもそれを大歓迎してて!シャー!」

この時点では、技のキレるヒールがベビーに勝った試合かな?というイメージが浮かぶ程度だった。

「でですね、OZAWA選手はすごい技がたくさんあるのに、技以上にキャラで魅せるという、ノアでは新しいタイプだったんですよ、シャー!」

「へえー!」

「昨日も序盤は『やる気あんのか?』と思われそうなノラリクラリから試合が始まって、シャー!」

「うんうん」

「日本にも本格的なダークヒーローが登場したというか、これまで日本にいなかったまったく新しいタイプのレスラーだと思いましたね、それはきっとお客さんにとっても、シャー!」

「それはなんだか気になるね!」

電話を終えた時刻がかなり遅かったので、その日はそのまま寝てしまった。翌朝目を覚ますと、昨夜の会話が頭の同じ位置に残っており、なぜか事件の匂いを漂わせてくる。すぐさまOZAWA選手について検索してみた。まずはABEMAの無料動画から。そして、最初に見たのがこれ

「♪清宮に勝ってうれしいなあ~!清宮に勝ってうれしいなあ~!♬」

いい意味で気が狂っていて、普通ではない。この一発だけで完全に魅了されてしまった。その後の語りもセリフ感がまったくなく、自然体極まりない。しかも内容が面白い、というか痛快。言ってはいけなさそうなことを次々と口にする。そのままOZAWA選手のtwitterを見てみた。こちらも、触れてはいけない大先輩の弱点をつつきまくっており、そのさい使用する言葉のチョイスがまたセンス抜群。いま、こういうのいちばん応援されるに決まってるじゃん。

「OZAWA選手、調べてみたけど面白いね!」

興奮したオレは、めんそーれに電話していた。

「武道館の試合はどうやったら見れるのかな?」

「それはPPVを購入していただくほかないんですよ、シャー!」

というわけで、プロレスについてネットで調べるなんてほぼしたこともなく、専門誌すらここ何年も読んだことのないこのオレが、4000円のPPVを購入してしまったのである。試合までのストーリーと本人の言動にすっかり魅了され、OZAWA選手の「金を払う価値」に完全誘導されてしまったのだ。プロレスで、肝心なのはここである。いい試合なんていうものは、見に来た人が持ち帰る「結果」でしかない。見に来させる。そのための行程と入念な作業の方が商売としてはよっぽど重要だと、オレは思う。もちろん、いい試合をすることは、飲食店である以上うまいものを出すべきであるという当然の前提と同じであることは先に述べたように言うまでもなく。「いい試合さえしていればお客さんは来るはず」。そうではない、順番が逆なのだ。オレはそう考えている。というわけで、生まれて初めて日本でPPVを買ってみた。

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