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M&Aから日常業務まで。事業部に開かれた法務チームの仕事とは

弁護士と聞くと、法廷で「異議あり!」と指をさすシーンが頭をよぎりますが、どうやら近年は弁護士事務所に所属し法廷で活躍するのではなく、企業内で活躍する弁護士が増加しているようです。(参考:日本組織内弁護士協会(JILA))
 
バイセルにも企業内弁護士が在籍し、法令遵守を超えたコンプライアンス体制を構築しています。今回のnoteでは、法務チームの仕事内容や企業内弁護士としての働き方について伺いました。

管理本部 経営管理部 法務チーム 弁護士
浅谷朱音(あさたに・あかね)
弁護士登録後、法律事務所勤務を経て、2021年4月より現職。
趣味:着物、近代建築めぐり

M&Aから日常業務まで、取締役から現場まで

――早速ですが法務チームのお仕事について教えてください。

法務チームは私と法務事務を担当するメンバーとの2名体制で、事業を適法かつコンプライアンスに則って実行するために様々な法的アドバイスを行っています。
大きく分けると、①コーポレートアクションに関する法務、②日常的な事業活動に関する法務、③リスクマネジメントの3つです。

①では、取締役会・株主総会の事務局業務や株式事務、M&A関連について会社法、金融商品取引法上のリスクチェックや各種ドキュメントの作成などを行います。
②では、契約書・利用規約の作成・レビュー、社内規程の管理、事業部からの日々の法律相談や法律に関する社内啓蒙活動などを行います。
③では、コンプライアンス・リスク管理委員会の主催や、日々のインシデントの把握、初期対応までを行います。

――多岐にわたる業務ですが、それぞれどのような体制で進めているのでしょうか?

コーポレートアクションについては大きな意思決定が伴うので、経営陣の意思をヒアリングしつつ、専門的な調査を要する案件については顧問弁護士と連携することも多いです。

2022年8月のフォーナインのM&A時には、株式譲渡契約を結ぶ前から関わらせていただきました。外部と連携して法務デューデリジェンスを実施したり、契約書他のドキュメントをレビューしたり、契約後もPMIにおいて社内規程の整備やリスクマネジメントの面で参画したり。フォーナインのフランチャイズ事業はバイセルには無いビジネスモデルなので、未知の領域でした。
バイセルではこのように積極的にM&Aを進めようとしていますし、新しくジョインする企業の事業内容によって、扱う法律も多様化していくため、法務としてはとても刺激的です。

日常的な事業活動においては、各事業部の皆さんと連携することが多いです。
例えば景品表示法に関してはマーケティング戦略部、特定商取引法に関してはセールスコンプライアンスマネジメント部、古物営業法に関しては商品戦略本部やテクノロジー戦略本部からよく相談を受けています。契約書のリーガルチェックの中で気になったことを、法務側からお尋ねすることも多いですね。
これらの相談には私限りで回答することがほとんどですが、法の解釈が定まっていない先進的な分野や精緻な調査が必要な分野については、各分野に精通した顧問弁護士に依頼することもあります。
その際の企業内弁護士の関わり方としては、社内で十分な下調べと論点整理を行い、顧問弁護士が検討しやすいようにサポートを行うことが中心となります。また、顧問弁護士から法的意見をいただいた後に事業部向けにわかりやすく共有することも大事な仕事の一つです。

リスクマネジメントにおいては、月に1回コンプライアンス・リスク管理委員会を開催し、その時グループ各社で起きている事象や新規事業のリスク分析・予防策などを常勤取締役に報告しています。
日々のイレギュラー案件については起きた時点で法務に報告がくるフローになっているので、必要に応じてタイムリーに介入して適切な対応方法を検討しています。

どの分野でも、アドバイスする時には専門家すぎる意見は出さないようにしています。実務運用のことも考慮した現実的なアドバイスを心がけています。

法的に0か100かで回答しない

――専門家すぎる意見は出さない、ということについて詳しく教えて頂けますか?

事務所に勤めていた頃もクライアントは企業が中心でしたが、外部の法の専門家という立場上、どうしても法的に保守的な立場でのアドバイスになってしまいがちでした。また、外からみえる事情は限られていることもあり、現場の実務に深く踏み込んだ提案をすることも難しかったです。

現在は企業に所属する一員でもあり、前述のようにM&Aや新たな取組にも挑戦しています。事業部側からの相談に対して、常に「法的にNG」「法的にOK」と0か100かだけで回答を戻していては、事業が進展しません。「この方法では難しいが、例えばこういう方法をとれるのではないか」「実務の負担を抑えるにはこういう方法もとれるのではないか」というように、事業部の意向も受け止めながら法的リスクを最小限にした落とし所を柔軟に探っていくようにしています。

また、相談してきてくれた方は絶対に無下にしないということも心がけています。「法律が関係あるかわからないんですけど…」という質問も多くいただくなかで、多くがリスクやコンプライアンス面での課題を秘めています。
リスクマネジメントも法務チームの管轄なので、見えなかったリスクを拾っていく意味でも、法務が相談しやすい環境であることは大切だと思います。「管轄外」というワードは、たとえそうでもあまり言わないようにしています。

――月に1回、ロジスティクスでの法律相談会も開催されてますよね。

そうですね、それも気軽に相談いただきたいと思ってのことです。

中古業界は時折メディアで不安な情報が取り上げられることもあって、消費者からの印象がすごく良い訳では無いのも事実です。だからこそ、バイセルとしては法律を守るだけじゃなくて、プラスアルファでお客様に安心していただける水準まで、法律よりも厳しい基準でサービス品質を保つようにしています。
法務としても、法律上問題ないかだけではなく、どこまでやればお客様が安心できるかという面で、アドバイスするようにしています。

船橋ロジスティクスでの法律相談会

会社に深く入り込んで事業を作り上げる感覚

――法律事務所から企業内弁護士へと転職されましたが、働き方においての変化はいかがですか?

勤務時間はすごくホワイトになりました(笑)。前職はクライアントの依頼があれば対応する姿勢だったので、どうしても勤務時間が不規則になりがちでしたが、今は9時〜18時の就業時間を守ってやれることに取り組んでいます。プライベートな時間も確保しやすくなりました。

仕事内容としては大きく変わった訳ではないのですが、関わり方の深さや長さ、周りの人は変化しました。企業の中に入るとアイデアレベルの相談から、サービス提供開始、事業成長まで、当事者意識を持って継続的に関われています。また事務所では周りが皆弁護士なので似た人種ではあり法的な専門用語が飛び交う環境でしたが、企業には色々な部門でのスペシャリストがいて、カルチャーも違って、学ぶことは多いです。
会社の中に入ることで、自分の専門的な知識を活かしながら、周りの人と一緒に事業を作り上げている感覚が持てるのは楽しいなと思っています。

―—今後、法務チームとしてどういう体制を築いていきたいですか?

中古品を取り扱うリユース業界においてコンプライアンス面の強化は今後も重要視されていくと思っています。
現在は、法的な判断を私が担っている状況なので、メンバーが増えればもっとタイムリーに相談に対応できるのにな、と思うことも少なくないです。相談やインシデントへの対応に留まらず、もっとこちらから働きかけできると良いなとも思っています。テックと行った勉強会や全社的な教育など、社員の啓蒙活動も積極的に行っていきたいですね。

――法務担当として必要な資質は何だと思いますか?

未来のリスクを考えて先手を読んで動いていくことが必要なので、想像力がある人、そしてアドバイスするだけの知識もある人でしょうか。
バイセルのバリューでもあるホスピタリティは法務に特に大切です。専門家になりすぎず、現実的に事業部の思いも加味して、一番良い方法を考えていく法務でありたいと思っています。


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