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9月に読んだ(読んでいる)本

職場に、毎朝4時に起きて朝日を浴びながら瞑想をしたら、それだけで満たされた気持ちになりますよ、と教えてくれたお母さんがいて、試しに真似して起きてみた。たしかに、世界はかくも美しい…、という気分に。

でもさすがに眠すぎて二度寝した。し、二度寝もなかなかに幸せだった。二度寝をするための早起き。

学問領域

『結婚と家族のこれから ー共働き社会の限界』 筒井淳也

恋愛であれこれ悩んだら、メタ認知として知っておくと見方が変わるだろうなと思う。というのも、自由恋愛でカップルを作り子供を育てる、ことを幸福とする家族観は、経済成長期と戦間期の極めて特殊状態、なんだって。そうだよね。家族社会学と福祉国家論の入門書。

私たちの生活が「カップル」及びその子どもという親密性の特定の形にこれほど依存するようになったのは、特に近代化以降でした。女性が(雇用された)男性に経済的に依存し、男性は女性と子どもを支える責任を担うという性別分業家族のあり方は、20世紀を中心とした時代限定的なものなのです。
このことは、「感情」についても当てはまります。つまり、夫が妻に、妻が夫に感情的な愛着を示すようになるのは、家族が「家」から分離した近代社会においてなのです。

最終章では、現代が、情緒的つながりをもった他者との結びつきの機会が限られた人にしか与えられていない不平等状態になっている状態を指摘する。要は、家族を持てる人が少なくなっている社会。そして、「ケア労働」がそもそも個々人にカスタマイズされたパーソナルな実践である(例:相手の好き嫌いに合わせて夕飯を準備するなど)一方、家族が解体されていく中で、家族と同等の役割をそもそもほかのセクターが担えるのか、という問いかけを行っている。

筆者の立場としては、家族の役割は家族しか担えないだろう、ということだと思う。じゃあどうする?そのあり方を考えるのがこれからの課題なのだろう。

『どうして男はそうなんだろうか会議ーいろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと』 澁谷知美

男の悪口がたくさん書いてあるのかなと思って読んだら、(悪口はあったけれど)「ホモソーシャルあるある」が面白おかしく指摘されていて、うんうんと読み進めた。
例えば、飲み会なんかで、場を盛り上げて笑いを取ってなんぼみたいな、オスゴリラ的なマインドがあって、でもそうやって話をしていたときより、特に盛り上がりポイントはなくても淡々と相手の話に耳を傾けているときの方が、話も長続きするし芯を食った話が聞けたりする、という発見。
自分も大学2,3年くらいまであったな。飲み会の場でいかに面白いことを言えたか、みたいな暗黙のゲームを勝手に意識していた時期。
でもそれって、何話したか何も覚えていないんだよね。みんなの好きな食べ物も聞けずに。

それまでは会話の形をした競争をやっていたけど、いまはなるべくケアをするように心掛けている(つもりだ)。相手の微細な変化を感じ取ること、世界に対する不安の形を取り出しては共感すること。

『介護する息子たち:男性性の死角とケアのジェンダー分析』 平山亮

↑の本の第4章に登場する平山亮さん。語り口がとても鋭かったので、思わず最新の著作を買って読んだ。「男性性」を考える際に、父や夫である状態に焦点を当てた男性研究はあるが、それ以前に男性は必ず誰かの「息子」であるから、息子として父親または母親を介護する際に発露する「男性性」を研究するに至ったとのこと。頭いい。実際に、息子による母親への暴力は多く、本来「ケアすべき女性がいないから代わりに」という消極的な理由を持って語られることが多いとのこと。

自分がいかに「男らしさ」に縛られて生きているかを思い知らされる。そして、企業の中で働くとは、多かれ少なかれそういった性質を強めることになる。それは、「ケア」の実践と両立するのか?

『なぜ女性はケア労働をするのかー性別分業の再生産を超えて』 山根純佳

今読んでいる本。
今まで読んできた(そう多くない)本の中で、1番2番のレベルで発見が多い。ジェンダーは、ずっと構造に立ち向かう主体の力を信じて、変革の言葉を編み出してきた。それは、ジェンダーだけでない分野にも力を与えると思う。

立ち向かう構造はなんでもいい。資本主義からパワハラ上司まで。ひとは無意識に構造側に立つ。意識的に避けない限りは、常に構造寄りになる。今ある仕組みをうまく利用して立ち回ることが、成功の条件のように喧伝されている。でもそれは、その仕組みにのれなかった不運な大多数の上に成り立つ。

なめられたら、毅然とした態度で立ち向かわなければならないと思う。間違っても、ヘラヘラしながらお茶を濁してはいけない。
それは労力と覚悟の要ることだけど、しないまま生きる人生よりも、ずっとマシだ。


POSSE Vol.54 地方移住の先にユートピアはあるのか

タイトルだけでいい特集だと思った。
当初、自分の研究計画では、地方移住者の価値観を通じて、競争原理が支配する社会へのアンチテーゼが見えるかと思っていた。「資本主義に代わる価値観」が取り出せるかと思っていた。でも今は、それは違うような気がしている。

結局、各地域それぞれに、限られた人的リソースや自然環境などの地域資源を確保しながら、いかに「持続可能な地域社会」となるかの競争に勝ち残るという課題は共通している。

高齢化が進む地域でインフラ整備の財源確保はどうするのか。結局、限られた資源で町おこしを行うという、大都市から地方にちょっとした資源の引き戻しを行っているに、過ぎないと言ってしまえばそれまでだ。一部の移住地域は、起業家のたまり場になっているそうな。それはそれで結構なのだろうけど、社会貢献<自己実現が透けて見えるとなんとも。

では、移住地域社会にしかない価値はなにか。それは、都市の企業で働くということによって失われた地域社会へのコミットメントやつながりかもしれない。ただ一方で、条件不利地域はどうしても健常者を前提としている節は否めない。身体が不自由になって田舎暮らしをできるか、知的障害があって偏見を受けずに暮らせるか。そこらへんの疑問が払しょくできず、なんとも言い難い。


ビジネス

『頭のいいひとが話す前に考えていること』 安達裕哉

自分は悩みを相談するのがあまりうまくない。なぜなら、だいたいその答えはもう分かっていて、実はそれを聞いて後押しをしてほしいだけ、のことが多いし、なんならその願望すら先回りして言ってしまうので、身構えて親身に聞いてくれた相手に肩透かしを食らわせてしまうからだ。

自分は逆に悩みを聞くのは人より長けていると感じている。それはこの本で一番強調されているように、「相手に満足してもらう」=「言語化して整理してもらうこと」の、言語化力にそれなりに自信があるから。

というか、「悩み」というのは実は「具体的な対策を考える」部分が抜けた問題対処なので、あんまり意味がない。悩んでそうなら、整理してあげる。
ただ、その先の対策まで言ってしまうと行きすぎてしまうし、自分は相手に言わせる前に言ってしまうことがあるから気をつけたい。考えて言葉にするのは、当人に任せるべき。

フローチャートでわかる経理・財務現場の教科書

たとえば給与支払いや調達品購入が発生して、それが最終的にどのように簿記の仕訳に載ってくるのか、がフローチャートで分かりやすく書いてある。小さい会社だけど、会計処理のことをあまりよく分かっていなかったので勉強中。

会社法入門 神田秀樹

これもビジネス教養かな。コンサルだと仕事術読みがちだけど、自分がいる組織が何に乗っ取って今の形になっているか、を考えるのもありだと思う。

その他一般書

官僚たちのアベノミクス 軽部謙介

3部作らしい。1部目しか読んでいないけど、かなり面白い。解散選挙前とか、各省庁が重鎮に自分たちの推す政策通してもらうようにあれこれと働きかける。これぞ政治っていう感じが面白い。
そして、利害関係者の多さから、政策の形が当初から次第にいびつに歪んでいくさまがなんとも言い難い。

『子どものまま中年化する若者たち 根拠なき万能感とあきらめの心理』 鍋田恭孝

「そんなんじゃ通用しないぞ」「甘えてばかり」とか、自分のやりたいことを我慢してきた結果、自分ができなかったことを若い世代ができるのが許せないのか、アドバイスに見せかけた邪魔をするようなおっさんおばさんばかりだ。
この本は、そうした現状をケースを交えて憂慮している。ところどころお説教ぽい部分もあるけど、あとがき読めば、今までにない時代を生きる若者をやさしく見守ってくれてるおじちゃんってことが分かって温かい気持ちになる。


『入門 財政学』 土居丈朗

勉強中。国の歳入の使い道とか、ちゃんと知っとかなきゃなと思った。
国会ってほとんど予算案と法律案決めてるわけだし。公民で習ったんだけどね。

『心理学』

これも、男性学を勉強する中で、臨床社会学や臨床心理学の分野の先生が多いから勉強中。
あと、こないだモラルハラスメント専門の臨床心理士の人と話して面白かったのもある。どんなに金や地位のある人でも、きれいな形の愛情は手に入れることは難しいのだと思った。
若い男性はなにかと抑圧されやすいんだって!精神科医のイケメンYouTuberの先生が言ってた。なめんなよ!

哲学の先生と人生の話をしよう 國分巧一郎

本当に面白い。
國分さん、アカデミアと市井の人々をつなぐ天才だと思う。
こんな風に学問の話をできるようになりたいな。さらっと。相手のためになるエッセンスだけを、嫌味なく。

でもお悩み相談風の自分語りには、しっかり「自慢してんじゃねーよ!」って言ってしまうところが好き。

今の会社のインターン生がやめるってなったら、これあげようかな。老婆心。


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