【嫉妬】〜男が知らない女の社会〜

SNSを覗けば他人の投稿に一喜一憂したり、イラッとさせられたり、他人の生活が羨ましくなったり、疎ましくなったりする。これは現代が生んだ気苦労であるが、この感情自体は「嫉妬」の一種であり遥か昔からある感情だ。SNSは否が応でも他人の生活を知らせてくる。そしてそれを自分で内面化し、比較材料にし、疲弊する怖さを孕んでいる。
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昔からこんな文化はある。「年賀状」はそうだ。1年に1回、聞いてもないのに自分が今どんな生活をしているか、送りつけてくる。家族写真や近況報告とともに。年賀状のせいで私たちの脳には年1回は皆様に近況を報告しなさい、とインプットされているかの如く、節目節目での報告が染み付いているのだ。
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前章で書いたとおり男の敵が「色欲」ならば女の敵は「嫉妬」である。嫉妬は身近な人にほど抱きやすい感情だ。他人の成功には激しい嫉妬は生まれない。自らの充実感が不足してくると突然嫉妬は現れる。男にも嫉妬はある。だが、女のほうが嫉妬深い。それは女社会が嫉妬なしでは語れず、閉塞感をもっているからであろう。
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ファミレスやカフェで、よく女同士の話を盗み聞きしている。ガールズトークはだらだらと話し始め、唐突に何かを思い出し、脱線し、最終的に何が言いたいのか分からないままとんでもないところに着地する。まるでコース料理のように前菜に近況報告を嗜み、メインディッシュの噂話と悪口に舌鼓を打つ。およそ男には思いも付かないようなキラーワードで他人を形容し、噂話だけで1時間以上話せる脅威のポテンシャルを持っている。
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これは到底男には出来ない。たいていの男は女の話はつまらない、と思っている。男は特定のテーマを掘り下げて結論まで理論立てて話そうとする。そして会話になにか意味を見出そうとする。
だが女の話はとりとめもない。とにかく情報が羅列され続けて最後まで回収などされない。けれど片方の女は即座に「わかる!!」と共感しているのである。男からすると?だ。同じ人間でも男と女は違うのだ。
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というように女には女の社会がある。近所付き合いにも如実に表れる。
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僕の母親の話。母は時代柄お見合いで結婚し、そこから社会には1度も出ることなく、家事育児に邁進してきた。家に帰ればいつも母が待っていて3食きっちり食卓にはご飯が並ぶ。外出はスーパーくらいでお酒も飲まない。友達もおらず、たまに僕の野球チームのママ仲間と近所で立ち話するくらいだ。子どもからすると幸せな家庭だったのかもしれないが、閉塞感のある暮らしだと思ってしまう。
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母はよくワイドショーやバラエティを見てはいつもぶつぶつ文句を言っていた。子どもながらきっと色々なことが悔しいのだろう、と思っていた。
きっとどこの家庭もそんな感じなのだろう。有名人の不祥事は主婦層から異常に叩かれる。それは自分たちがしたくてもやってはいけないことを遵守しているのに許せない、という同調圧力からだ。
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そして主婦のプライドは無駄に高い。そんなことは自覚せず、社会で活躍する女性のこともなぜか悪く言う。それは家庭に専念してきた自分を少しでも肯定したいという気持ちからなのだろう。
母の場合は美魔女が特に嫌いだった。いい歳して美を意識して男に媚びるのがハナにつくのだろう。母と祖母が一緒になってやっぱり女は家庭に入るべき、と口にしたことにはゾッとした。
女性の社会進出は男性だけでなく女性によっても阻まれていると思う。
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夕食時には決まって噂話と悪口を聞かされた。
「○○さんのとこのお母さん、高飛車でいつも感じ悪いわぁ。自慢話ばっかり。裏表あるで。」
「○○くんはあの学校受験するらしいよ。」「○○さんとこは共働きやからそりゃ子どももグれるわ」僕はふーんとしか言わない。思えばこの経験を通して女の話はくだらないと決め付けてしまったのかもしれない。と同時に子どもである自分にも期待をかけているのだろうな、と思った。
僕はある意味、母の周りの狭い世界、世間様に向けた作品だったのだ。
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僕はそんな母に嫌悪感を持ったまま、期待は裏切りいつしか二人の会話はなくなってしまった。
だが今となってはそれも仕方なかったのだろうと思う。男は基本的に皆、自己依存で生きている。
自分で稼いで、ステータスを持って、どんなものを持つのか、も自己責任だ。自分の勲章は自ら勝ち取るしかない。逆に駄目だったときも自己責任である。
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だが、女社会は他者依存も内包している。自分の学歴や職業、持っているバッグ以外にも旦那の職業や年収、子どもの成績や進路、自分以外のステータスまで比較対象になる。独身のバリキャリで仕事一筋、それだけが勲章にはならないのだ。
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こうした違いが女社会の生きづらさをより助長している。それはかつて男尊女卑の概念があったことに紐づくだろうし、女が一歩引くという負の思想を現代まで引き継いでしまったことにある。女社会は閉塞感を持ち、嫉妬が横行する世界なのだ。
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かつて付き合っていた女性に「女にも色々あるから」と言われたことがある。その時はこいつに話しても無駄、と思われたことだろう。男にできることといえば、その違いを認識し、できるだけ共感してあげること、そして妻をカースト制度の頂点に君臨させてあげられるよう仕事に精を出すことだろう。

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