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【おうちでできる科学実験】メントスとコーラで火山噴火を再現しよう!【YouTubeに公開した動画の内容を解説】

みなさん,こんにちは.
地球科学系技術者の井上雄介です.

今回は,僕のYouTubeチャンネル「ジオチューブ-地球を知る時間-」で投稿したメントスコーラで火山噴火を再現する実験動画の内容について解説してきたいと思います.


コーラにメントスを入れる実験(いわゆる,メントスコーラ)というのは,YouTuberの登竜門とも言われており,多くの有名なYouTuberさんが実施されております.しかし,その原理について,きちんと説明されている方は少ないです.今回投稿した動画は科学実験という位置づけですので,ただ実験をやるだけでなく,「なぜ,そのような現象が起きるのか?」「メントスコーラでなぜ火山の噴火が再現できるのか?」についても説明しました.
※実験準備では,工具(精密ドライバー)を使用します.怪我をしないように取り扱いには十分注意しましょう.お子さんは必ずおうちの人と実施するようにしましょう.
※実験は汚れるので,汚れても良い場所で実施するようにしましょう.



実験準備

実験では下記のものを準備する.
<準備するもの>
・コーラ 500mLペットボトル1本
・メントス 5個
・糸
・はさみ
・精密ドライバー(キリ型)

写真1 実験の材料

以下に,実験準備の手順について述べていく.
<準備手順>
①精密ドライバーでメントス5つ全ての中心に穴を開けていきます.

写真2 メントスに穴を開ける様子

②穴を開けた全てのメントスに糸を通します.糸がメントスの穴に通りにくい場合は,精密ドライバーで糸を押し込んであげると糸が通りやすくなります(図1).

図1 メントスに開いた穴に糸を通す様子
写真3 5つのメントスに穴を通した様子

③はさみで糸を適当な長さにカットします.
④メントスを通した糸の片方の端を何回か結んでおきます.
※結んだ方を下にしてもメントスが糸を貫通して落下しないことを確認しておきましょう.
⑤コーラのキャップの中心に精密ドライバーで穴を開けます.
⑥⑤で開けた穴にメントスを通した糸を通します(写真4).

写真4 コーラのキャップの穴に糸を通した様子

実験

まず,ペットボトルのコーラを汚れても良い場所に設置します.今回は,お風呂場の床にチラシを敷いて,その上にコーラを設置しました.
先ほど,準備手順⑥でメントスを取り付けた糸を通したキャップをペットボトルの元々キャップが合った場所に閉めます.
※キャップを閉めるときは,メントスがコーラに触れないように糸を手で支えておきましょう.
ここで,手から糸を離すとどうなるでしょうか?

なんと,コーラが勢いよく噴き出しました.
YouTubeに投稿した動画のうち,実験の様子の部分を切り取ったものは下記のzipファイルからダウンロードできます.

なぜ,コーラにメントスを入れると勢いよくコーラが噴き出したのでしょうか?
この理由について以下に説明していきます.

なぜ,メントスコーラで火山の噴火現象を再現できるのか?

火山噴火のメカニズム

コーラにメントスを入れることで火山の噴火現象を再現できる理由について説明する上で,まずは火山噴火のメカニズムについて説明しておく必要があります.以下に,マグマの発生から火山が噴火するまでの過程について説明します.
マントル上部かんらん岩という物質が溶けてマグマが発生します.
地球の内部は表層から地殻,マントル,核(外核,内核)の順に層構造から成り立っています(図2).

図2 地球内部の層構造

ここで,ゆで卵の断面で考えてみましょう.ゆで卵は表面は殻(から)で覆われており,中心に向かって白身,黄身の順に成しています.このゆで卵の殻に相当するのが地殻,白身に相当するのがマントル,黄身に相当するのが核と考えてもらえれば良いと思います(図3).

図3 地球内部の層構造(左)とゆで卵の断面(右)の対比

②マントル上部で発生したマグマは周りの地殻を構成している物質よりも軽いので浮力により上昇します.マグマが上昇していくと,やがて周りの岩石と釣り合う状態になります.すると,その場所で浮力を失ったマグマがどんどん貯まっていき,マグマの貯蔵庫であるマグマだまりができます(図4).

図4 マグマの発生からマグマだまりの形成

③地殻の内部には圧縮する力や引っ張りの力が加わっています.マグマだまりに何らかの強い力が加わると,その影響によりマグマに異常をもたらします.ここでは,マグマだまりに引っ張りの力が加わるとしましょう.すると,マグマだまりの上部の圧力が下がり,マグマ中に溶けていた気体が溶けきれなくなって気化します.それにより,マグマだまりの上部で発泡します(図5).

図5 マグマの発泡

④マグマが発泡すると,マグマの体積が膨張し上昇します.上昇していったマグマは火道(マグマの上昇通路)の上部にガスが沢山たまっていきます.ここで,火道の上部にフタみたいなものがあると考えましょう.ガスが沢山たまっていくと,フタは耐えきれなくなって外れて,勢いよくマグマが地表に噴き出します.これが火山の噴火となります(図6).

図6 火山の噴火現象

メントスコーラと火山噴火の関係

では,なぜメントスコーラで火山の噴火現象を再現できるのかを説明していきましょう.
通常,ペットボトルのコーラには炭酸ガスが溶けています.マグマにも気体が溶けていることから,この実験ではコーラをマグマと見立てることにしましょう.
ここで,コーラの中にメントスを入れると,コーラ中に溶けていた炭酸ガスが溶けきれなくなって気化し,大量の泡が発生します.この現象は,図5に示したマグマの上部で発泡現象が起きるのと同じですね.
コーラ内に大量の泡が発生すると,コーラの体積が膨張して上昇し,勢いよくコーラが噴き出します.これは図6に示したマグマが体積膨張により上昇し,勢いよく噴出する現象と同じであると言えます(図7).
以上のように,大量の泡の発生→体積膨張→上昇→噴出の過程をたどる点でメントスコーラと火山の噴火現象では同様であると言えます.

図7 コーラが噴出するプロセス

ここで,なぜ,メントスをコーラに入れると大量の泡が発生したのか?という疑問が湧いてきた人もいるかと思います.これはメントスの構造に関係します.肉眼では見えないですが,メントスの表面には気孔と呼ばれる穴が大量に存在します(図8).この気孔があることにより,大量の泡を発生することができます.したがって,大量の泡を発生させるための促進剤としてメントスを入れたわけです.

図8 メントスの表面

今回は,メントスとコーラで火山の噴火現象を再現する実験を実施しました.実験はコーラが勢いよく噴き出しますので,実施する場所には気をつけないといけないですが,お手軽にできる実験なので興味を持たれた方は,是非とも真似してみてください!

挿入イラスト(図1に挿入)
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