読書感想文#3『苦役列車』

このところ、寒い日が続きましたが今週は比較的暖かかったですね。2月の中旬くらいから雪の予報などもありますが、体調を崩さぬように過ごしたいものです。

直近の報告としては、昨年12月から知り合いの読書家の方とともに読書会を開きました。特徴としてはお酒を飲みながら話すというところでしょうか。
本に囲まれた空間でお酒を飲みながらお話しするのは非日常感がありますね。最近のオアシスとなっております。

その読書会にて初回の題材が西村賢太の『苦役列車』です。

2010年の芥川賞受賞作品で話の暗さというか臭さというか、匂いみたいなところがお酒のアテになるなと思います。

初回ということもあり比較的ライトな作品になりますが、感想文を読んでいただけたらと思います。

正直、タイトルに「苦役」という言葉があるけどあんまり「苦役感」はなかったと思います。1980年〜1990年代くらいの時代設定として、江戸川区を飛び出て飯田橋に住んでるし、日給5700円くらいは貰えてるじゃないですか。
これは個人的な調査になりますが、1980年代に東京の女性が働き始めた際の手取りが16万円ほどだったと聞きました。また一人暮らしをしていたと。

月に25日くらい働けば15万円くらいはもらえる計算になるので、全然苦役ではないと思いますね。苦悩しているのは物理的なものではないことがわかります。

義士も聖女も堕落するし、堕落無くしては救われないのですが、偉大なる破壊の前に人間は太刀打ちできないのであって、自発的な堕落は単に怠慢なので、もっと頑張れ!!って正直思いましたが、実はこの作品に対しての感想にしてはならないのです。

作者自身の人生の思い出と経験によるイメージの重なりが創造物の中心とするなら、怠慢に対してキレても意味がないのです。自己主張に対して反論したところで理解の飛躍(想像できないことを理解すること)していくことはないじゃないですか。

なので、主人公の精神性について考えてみます。

親が犯罪者のため逃げるように地元を出る。
早くして一人暮らしを始める。
一人足として時々働く。

この3点だけでも相当なストレスにはなります。生活が荒むことも理解できるなぁと。
自分は学校には行けないけど、周りの人は学校に行っていたり、彼女がいたり、爽やかな笑顔で接してくる同僚とか自己嫌悪する素材としては十分なわけですよね。

これは持論なのですが、自意識の中に閉じこもると現実世界に対して敏感になると思うんですよね。ネガティブな意味で。

「なんで自分だけこんなに不幸なんだ。」

とか

「どうして自分はこんな風体になってしまったんだ。」

とかとか。。

そういった自意識に閉じこもった時にInstagramとか見ると老若男女問わず充実した世界で生きてる人が死ぬほど出てくるので、これもまた自己嫌悪とか妬みみたいなのが積もってくるんですよね。

ビジネスで成功して海外でセレブみたいに生活している人が同い年だったりとか

知らん社長が月収30万なんて一瞬ですよって言い出したりとか。

現実世界の話が多すぎませんか?

各々の精神に関してはどのようにお考えでしょうかと聞いてみたいですね。

なので落ち込んだ時はできるだけSNSは見ないが鉄則だと思います。
あと青春系のアニメもほんとに俺はダメダメだなって考えたりしますね。

話がそれましたが、
自意識の中で「充実」とか「成功」とかに対して虚無感が見えました。
ただ普通に野球とか読書とか風俗とかはする人だから、生きることについては絶望してないのが太宰とかとの違いではあるのか。。と思います。

自意識の中で、だらしのない生活を送るが、精神は崇高でありたいと思い続けているところはいいなって思いました。

「お蕎麦」「お寿司」「ローンウルフ」といった言葉の使い方とかさ。
カッコ良いなって思いました。ちょっと丁寧にしてる!!と思ったらこの人の性格がわかるような気がしました。

作品の中で仕事に行くとき、バスに乗って行くんですけど、隣に座ったおじさんがコンビニでご飯を買い込んで食べ出して、サラダを食べるんですが、
サラダを食べ終えようとした時の器に残った野菜とドレッシングの汁を「ちゅっ」と飲み込んだのを見て吐き気を催したっていうシーンが印象深いですね。

「ちゅっとした感じ」

この言葉は今回の読書会で少し流行りました。

主人公=西村賢太であると思いますし、そうでなかったら想像力が凄まじいですよ。
イメージの重なり方がすごいなと思いました。

今回はこれくらいにします。

だいぶ更新の時間が空いてしまいましたが時々こうやってアウトプットするのは楽しいですね。

次回は、バタイユの『眼球譚』についてです。

近々更新しますので、興味あれば一読いただけますと幸いです。


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