『幌馬車』アメリカ西部の大自然と西部劇ならではのアクション〜楽士のつぶやき
こちらのページは、楽士坂本真理による、個人的な音楽演奏上の解説を中心としたもので、イベント全体の趣旨を解説するものではないことをご承知おきください。
イベント概要については、国立映画アーカイブのイベントサイト、下記のフライヤーもご参照ください。
こんにちは。まり先生です
楽器大好き むらさきmusicラボ
こんにちは。「幌馬車」の音楽演奏を担当します「楽士」の坂本真理57歳です。
こどもは、ふたりとも成人していますが、まだ家ではママ業真っ最中です。
私は、49歳まで幼稚園園長をしていて、今は無声映画の演奏のほか、普段は「教えること」と「楽器に関すること」の活動しています。
無声映画は、2016年に幼稚園園長を退職してからデビュー。大変、遅咲きなのですが、9年間で129作品を担当させていただいています。
「むらさきmusicラボ」のホームページ
YouTubeチャンネル 楽器づくりのほか リトミック、パンデイロウェブレッスンなど
楽器をつくるのも、打楽器を演奏するのも大好きで、小学館 図鑑NEO 音楽では、打楽器類21種類の所蔵楽器の撮影、演奏録音などの協力をさせていただきました。
小学生の皆さんなら、学校の図書館で閲覧できるかもしれません。QRコードで私の打楽器演奏も試聴することができます。録音は小学館本社で行ったのですが、めちゃくちゃ緊張しました〜。
シンセサイザー、打楽器、民族楽器、手作り楽器
無声映画の伴奏で一番多いのは、ピアノ伴奏だと思うのですが、私は無声映画の伴奏ではデビュー時よりデジタルシンセサイザーRoland JUNO-DS 61(民族楽器音色を追加してカスタマイズしたもの)に、必要に応じて、打楽器類を追加して演奏しています。
余談になりますが、夏休みですし、小学生の皆さんの自由研究のテーマになるかもしれないので、電気の鍵盤楽器についてまとめておきますね。図鑑ネオ音楽では、電気をつかわないピアノと電気を使うシンセサイザーは、まったく別のカテゴリーに分類されています。恐竜が好きな人なら、ぐっとくる分類です。
私は同じシンセを2台持っていて、1台は自宅。もう1台は、仕事場の「むらさきmusicラボ」に置いています。自宅では、モチーフを決めたり、音色を組み入れる作業をしています。実は、右手と左手でそれぞれ別の音色を割り当てることができて、しかもその境目も自由に設定できるのです。今回の「幌馬車」でも、9本の指では、ピアノ音、左手の小指だけで銃声が操作できるようなプログラムも作っています。
「話術研究会」リハーサルなど、少しラフな現場では、初見で即興演奏もしますが、私は「音楽理論」「音楽史」なども教える先生でもあるので、できるだけ映画の背景の音楽風景も忠実にできたらと思って、つい、いろいろ調べて「モチーフ」や「リズムパターン」を再現しつつの即興演奏をしています。
楽譜がないのでわかりやすいと思うのですが、「幌馬車」上映時も、即興演奏なので、実は、私は同じ演奏は二度とできないし、過去の自分の演奏もあまり覚えていないので、モチーフやタイミングなどは、安定できるようにできるだけの準備をして全て記憶できまでの稽古を積んで本番に挑みます。
『幌馬車』
西部劇というより大移動劇?壮大なスペクタクル作品!
本作のオファーをもらった時には「西部劇」なのかなぁと、これまでの「西部劇」のノウハウが役立つか?と思いきや、スペクタル(視覚的に壮大なインパクトがあるもの)馬や牛など家畜たちの川渡りシーン、アメリカバイソンを狩るシーンなどがたわわにあり、これは西部劇というよりも、むしろ、以前「国立映画アーカイブ」で担当させていただいた「テンビ」(アフリカの野生動物がたくさん登場する紀行記録映画)の音楽制作作業を思い起こすものでした。
アメリカの無声映画では、時代的にカントリー音楽の世界観か?というのをまず最初に地図で調べます。アパラチア山脈より東だと、ヨーロッパ移民の音楽世界。西だとフロンティア精神のカントリーミュージックの世界観になると先輩ミュージシャンにアドバイスをもらいました。これは、現代でも車でアメリカ各地のFMラジオ局巡りなどをすると、そんな感じらしいです。
本作では、あまり都会的な部分がないのですが、この時代の代表的なリズムとしては、「ラグタイム」「チャールストン」があります。ちょっと前だと「フォックストロット」、ちょっと後に「スウィング」がでてきます。リズムをシンコペーションで揺らす感じを「スウィング」というのですが、映画の公開年、設定年によってこのアクセントの位置に留意をしています。
アメリカらしいリズムの使用箇所。本作でいうと、ラスト近くのビルが発展した街(たぶんロサンジェルス)にW・Bを訪ねる前にカフェの女給とシルクハットの紳士がでてくるシーン。ジョー・ダンスタンを迎えたジムの拠点のバーコーナーで「スターウォーズ」エピソードIVにでてくる酒場のシーンのリズムパターンと速度を完コピしました。「異世界、異人種の酒場」的な表現の元ネタは、案外コチラの方なのかもしれませんね。
多様な人物像と各人物のテーマ音楽
アメリカ映画あるある 名前の困った?
シニアの耳を持つまり先生(わたし)としては、「ウィル」「ビル」「ウィリアム」は、同じように聞こえます。でも、そもそもの名付けの由来が、キリスト教の聖書の登場人物を様々な言語で表すものも多いので、由来がわかればストンと理解できそうな気もしてきました。
でも、時々英語のセリフで「Well(まぁ〜)」という単語もでてきて、英語のアルファベットってつくづく文字数が足りないなぁ〜って感じました。
主人公 ウィル・バニアン(以下WB)
そんなわけで、ウィル・バニオンは、ウィルと書く「ビル」と紛らわしいのでWBと記述しています。テーマ音楽は、軽クラシックの某曲からモチーフを少し借りました。軽快なスキップのリズムは、馬の鎧を蹴ったり、馬ごと方向転換で踵を返すような様子から読み取りました。
ウィリアム(ビル)・ジャクソン
ビルがキーパーソンなんだとつくづく思います。一見粗野に見えて、知識も教養も高い。ワイルドな風貌だけれども実はおぼっちゃまなんじゃないかな〜と、想像を膨らまします。以前、担当した「肉体と悪魔」の主人公のために自分でつくったモチーフを転用しました。ドイツの貴族、お金持ち、容姿端麗な王子さまのイメージです。ビルは、人情に厚く、そして、正義を貫きます。魂の崇高さを表すドイツ民謡のような力強いモチーフが登場ごとに出現します。
ヒロイン「モーリー」
「モーリー」は、言葉足らずなんじゃないのかな?と思うのです。もっと早く、あまり好きではない婚約書との関係をどうにかしておけばよかったのに。つい、そう思ってしまいます。自分自身の性格が「言葉足らず」というよりも、「言いたくても言えない事情」も抱えていたのかもしれません。そんな「モーリー」には、音楽理論を当てはめた「主音、属音」などがないたった三音のモチーフを当てました。「みそれ〜」だけ。私がいつも教えている言葉を話しはじめたばかりの乳児の皆さんは、「はい」という言い方のニュアンスだけで、日常会話を成り立たせる人もいます。言葉が少ない方が、伝わるということもいっぱい経験しているまり先生(わたし)です。
WBとモーリーの愛のテーマは別に設けています。ラブラブな感じというよりは、「もう二度と会えないかもしれない」という悲壮感が醸し出されるのが、この時代の命懸けの恋愛なのですね。
サム・ウッドハル
(モリーの婚約者 卑怯者)
サムのテーマは、私の映画音楽制作時にヘビーローテーションする『プロコフィエフ ロメオとジュリエット』からモンタギュー家とキャピュレット家(第2組曲の第1曲)「騎士たちの踊り」を使っています。何かと何かが対峙するときに、「モンタギュー家」と「キャピュレット家」の音像は本当にぴったりします。携帯会社のCMにも使われた曲なので、お馴染みかもしれません。
状況、シーンの映し出す音楽、トリビアたち
丸いギター?バンジョー
少年ジェドはバンジョーを弾いています。バンジョーは、ギターとは別の楽器で、バンジョーのボディが丸いのは、元々はアフリカ由来のひょうたん楽器から進化して、持ち運びがしやすい形になっていったそう。ディズニーランドの「カントリーベア・シアター」をご覧になった方がいたら、だいたい同じ時代と思われます。そして、かつてギターは、ガット弦(動物の腸)しかなかったけれど、バンジョーがスチール弦だったので、影響をうけて、大きな音量を得るために次第にスチール弦が主流になっていったということです。
日本では、ギターの方がメジャーなので、バンジョーがギターから進化したと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、音楽性も異なる別楽器です。
私は、コードを抑えるというよりは、バンジョーの音色自体が「歌う」と感じています。なので、演奏時は、シンセサイザーでモノマネをする感じで、バンジョーらしさを表現するように工夫をしました。音数ですが、映像から判断して、4弦楽器として、がんばって4本の指だけを使うように留意をしています。
「おおスザンナ」は、楽譜付きででてきますね。さて、当日、尾田弁士はどう歌うのか??お楽しみに!
ネイティブな人たち
むらさきmusicラボ(私の経営している音楽教室)には、ピアノの先生など、音楽を教えている大人の方も、「音楽指導法」の研究レッスンに通ってくださっています。そこでの話題で、
「そういえば、ピアノの本には『10人のインディアン』「インディアンの踊り』、いっぱいインディアンとでてくるけれど、令和ではどうなんだろう?」
ちょうどタイムリーに今、やっている「幌馬車」にも出てくるけれど、ストーリーの中では、インディアンではなく、具体的な部族名ででてきますね。服装や装束からみて、いくつか複数の部族が描かれていると私は理解しています。なので、「インディアン」と西洋人からみた「自分やちと違う」と大きくくくることはやめて、できるだけ「ネイティブ発信」の資料を探して「イーグルダンス」の動画からリズムを採取しました。
ドラムは、ネイティブアメリカンドラムに近い毛皮が少し残るくらいの厚みのある皮を紐で調節したフレームドラムの音を探しました。インディアンフルートの音色はなかったので、近い音として、瓶に空気を送る音をサンプリングした音色を使いました。
ブルージー
音楽は時代ごとに、終止形が異なるところが面白い!欧米人社会では、このちょっと前まで(19世紀)交響曲としてじゃじゃ〜んと派手に終わったりしていたと思ったら、音楽が貴族から庶民にも身近になるといろんな終わり方、ルールもでてきます。アメリカでは、黒人文化の影響もあって、「ラグタイム」では、いろんな約束があるので、曲を終わろうと思う場合、けっこう前から終わらないとその様式を盛り込むことができません。
今作では、私は可能な限り「ラグタイム」は使っておらず、ラストちょっと前にでてくるちょっと未来の街の風景で軽快なリズムを出すくらいで抑えています。
そう。抑えているのです。
ジャズが弾きたい。スウィングさせたい欲求を抑えているのです。
大好きな「チャールストン」は、9月の第794回無声映画鑑賞会[ロイド!ロイド!! ロイド!!! ]までお預け。
そんな私の妥協ポイントが、ガーシュインのオペラ「ポーギーとベス」にも使われた黒人音楽の影響を受けた「ブルーノート」を使用した「ブルージー」な終止方法です。
Catsと書いてありますが、それは私なりのメモで、そこからモチーフを取ったのではなく、和音進行がそう書くと自分で思い出しやすいってことです。
フォスター 夢路より/ビューティフルドリーマー
フォスターは、パブリックドメイン(没後年数で著作権フリーとなっている)なので、安心してご紹介できます。この時代らしいアメリカ音楽を入れたかったので、閃いた時は嬉しかった。「夢路より」という邦題もありますが、私の中では「ビューティフルドリーマー」の方がしっくりきます。
サン=サーンス 動物の謝肉祭
家畜たちは、サン=サーンス 『動物の謝肉祭』の各曲から、ちょこっとずつツギハギして使わせてもらっています。バラバラに使いすぎて気持ちの悪い人がいたらごめんなさい。いろんな調にも転調しています。
ことばを持たない生き物たちが、突然、川を渡ることになった!
その時の動物の気持ちは「やらねば」というタスクで、「やめときます」とはできないですよね。でも、決して「喜んで!」ではありません。
「まぁ、動物なんで 本能でがんばります!」
っていう努力の要素がある曲の断片を集めました。
今回は使用していませんが、同曲集には、「ピアニスト」という人間の曲もあるんですよ。その曲は、あまりに動物的な人間なので、ちょっと今回はやめて、「タンスを捨てるかボレロ」という新しい曲モチーフを自分で考えました。「ピアニスト」という曲には、ドレミのスケールを使っているのですが、「タンス捨てるか?」場面では、ルール、理論とかじゃなくて「感情」が大きいので、スケールをやめたというワケです。
アメイジング・グレイス
お葬式のシーン バイオリン独奏 特にアメリカ合衆国で最も慕われ愛唱されている曲の一つであり、『第二の国歌』とまで言われるそうです。私のまわりでも誰かの追悼時には、必ず心をあわせて演奏されている曲です。
フィドラースケール
バッファローの狩りのシーンでは、西部劇の中でもウェスタン色の強い「フィドラー」の音階(スケール)を使って表現をしてみました。フィドルは、バイオリンなのですが、弾き方がアイリッシュなど、民族、大衆的なことを指すようです。フィドルは、楽器。演奏する人を「フィドラー」といいます。無印良品のBGMがアイリッシュ音楽っぽいので、それをカントリー音楽に寄せた感じです。私は、1984年のロサンゼルスオリンピックのエキシビジョンを血眼で観察をしていたので、そのイメージで弾いています。アメリカの歴史の音楽劇のようなエキシビジョンで、とても感銘を受けました。今の楽士の仕事にとても役立っています。
マカロニ・ウェスタン西部劇的なメロディ
本作は、あまり西部劇っぽくないと感じているのは、私自身が、逆に「西部劇」というと「マカロニ・ウェスタン」という少し後の時代のイタリア製の西部劇の一ジャンルの印象が強いからなんだと感じています。
本作全体として、ここであえて「マカロニ」を出すことはないのですが、ジムとジョーの二人の絡みは、この先の時代の「マカロニ・ウェスタン」に大きな影響を与えるような気もしています。ちょっぴり「スターウォーズ」の異星人の酒場のような雰囲気も、この名作映画「幌馬車」が後に影響を与えたに違いありません。著作権にひっかからない程度のリズムを拝借しています。大人の方でわかる人にはわかるかなぁ〜。
クラシック名曲の数々
クラシックな無声映画を親子で鑑賞するのなら、できるだけクラシックな名曲も散りばめて、後で親子でいろんな名曲を発掘したり浸ってほしいという願いをこめて、いろいろちら聴きできるようにしています。知っている名曲のモチーフ、かけらを是非探してみてくださいね。メロディだけ覚えている場合でも、スマホで「鼻歌検索」すれば、曲名はわかるのがイマドキですね!
以下のクラシック曲のラインナップは、私の無声映画担当作品では、いろんな作品で登場しています。即興演奏で楽譜を用いずに演奏するのと、曲の当てどころに正確性を持たせているのでご紹介しますね。これまで一番、多くクラシック曲を用いた無声映画作品は「戦艦ポチョムキン」。一番幅広い年代のクラシック作品を用いたのは「イントレランス」で、中世フランスの古楽など歴史的な作品でわかるひとにはわかる!という曲をたくさん耳コピをしました。〜以下は、だいたいの用途についてです。本作どんぴしゃりではない概要で記述してあるもののあります。
リスト:パガニーニによる大練習曲 第6番「主題と変奏」
〜お金に関するトラブル、困った感など 金勘定、エコノミック
リスト:「ラ・カンパネラ」
〜あがえない運命 どうしようもない岐路にたたされるとき
プロコフィエフ:「ロミオとジュリエットより騎士たちの踊り」
〜何かと何かが対峙するとき 本作ではサムの前半(嫉妬)のテーマ
チャイコフスキー:「弦楽セレナーデOP48」
〜時代が変わったとき ストーリーテーラー 鳥の眼からみた地上の世界
オルフ: 「カルミナ・ブラーナよりおお運命の女神よ」
〜戦闘 戦場 巻き込まれる民衆 悲惨さ
ハチャトリアン:「スパルタクス」
〜追い風のある勝ち組の戦闘風景 進撃
コダーイ:「ハーリ・ヤーノシュより間奏曲」
〜本編、ストーリーとは関係のない余談部分 チャップリンなどの風刺シーン
ショパン:「前奏曲15番<雨だれ>」
〜雨、積雪などで外出や移動な困難なとき
ロッシー二:「セヴィリアの理髪師 私は町のなんでも屋」
〜お調子ものの吹聴シーン もう大丈夫だ!感
こどもに伝えたい「幌馬車」あれこれ
キャラバン生活について
「お風呂に毎日は入れないキャラバン生活」のことを考えてみましょう。
日本・江戸時代の「東海道膝栗毛 弥次喜多道中」などの旅物語では、1日中歩いて、宿町につき、お風呂で疲れを落とすという旅なので、昔の旅でもお風呂はあると思いそうですが、インフラが整っている街から街への「旅」と、「移住」そして、「開拓」は全然異なるということを、まず知っておいてから本作はみてほしいと思っています。
本作には、動物がいっぱいでてくるのですが、演奏練習のたびに感じるのは、「牛」と「馬」って違うんだなぁ〜ということです。
映像からみるだけだけれども、「馬車」もあれば、「牛車」もあるみたい。
想像だけれども、牛はやっぱり重いものをゆっくり運ぶ役目なのかなぁ。そして、いざという時の食料でもあるのか?
馬は、女性やこどもを運ぶ、生活の幌馬車を引く。
その他、WBなどリーダー的な男たちは、単身で騎馬している。
先回りしたり、別行動をしたりしている場面もよくでてきますね。
無声映画にでてくる動物たち
そういえば、キートンやロイドの映画のレギュラーである犬はあまり登場しないな。ゼロじゃないけれど、あまり注目されていない。狼がでるような土地では、犬はそんなに役に立たないのかなぁ?
動物では、上記のような家畜だけではなく、野生の「バッファロー」を狩って食料にする場面がありますね。ほとんどの隊員たちはライフル銃を使用していますが、ビルは弓と矢、ジムは、ナイフでバッファローを丁寧に解体しているシーンが映っています。ネイティブ・アメリカンたちは、バッファローの体をあますところなく使うということで、腸はよじって強い糸にして「サンキャッチャー」にするとか!尊いなぁ。
無声映画は、今から100年くらい前の動物が出演しているので、絶滅している動物も残っているものがあるとか!
そして、現在では動物たちにストレスを与える調教が禁止されているので、今ではCGに置き換えられているような演技をする動物たち、スター動物も無声映画では会えることが多いのですよ。
まり先生のおすすめは、「ライオン」で、現在、⚪︎⚪︎サーカスなどでお見かけするライオンよりもサイズが大きい「バーバリアンライオン」「ヨーロッパライオン」の血を汲むと想像されるような「もののけ姫サイズ」のライオンがでてくる作品もみたことがあります。
最後に
嵐を呼べ!活動写真弁士!
無声映画を活気づける「活動写真弁士」の口上(各登場人物セリフとナレーター部分、情景などなにもかもぜんぶひとり)の台本は、実は、ぜんぶ自分ひとりで書いているそうです。そして、資料なども、主催元から提供されるものもありますが、レトロな資料を自分で探して、一生懸命歴史の勉強をしているなぁ〜と、いつも感心しています。
私はいろんな弁士さんと共演をさせていただいています。
声色を登場人物ごとに変えるのが得意な人、現代の目線と登場人物の視点をうまく交差させるのに長けている人、歴史学者のような人、落語家さんと一緒の寄席でイロモノ(手品、活動写真など落語以外のおたのしみ)としても出演する人、アニメ声優として活動している人などそのほか紙芝居師、役者、ナレーターで活躍中など、全国で10数名とも言われています。本作を説明する尾田直彪弁士は、最年少24歳の活動写真弁士です。
無声映画のさまざまな形
音がない無声映画にはさまざまな形があると思います。弁士説明がある時には、演奏者がいる場合は弁士に対して「楽士」と呼ばれています。
弁士なしで音楽だけで無声映画を彩る「無声映画の演奏家」として、ソロ演奏をする人もいれば、オーケストラで豪華に無声映画にあわせて演奏をされる場合もあります。
生演奏だけではなく、「サウンド盤」との同時上映で、音楽をコンサートのようにスピーカーから楽しみつつ映画をみたり、弁士がサウンド盤にあわせることもあります。
私は、生のピアノによる伴奏は年に1回くらいで、ほとんどはデジタルシンセサイザーを使用しているので、音楽制作時には、シンセサイザーをオーディオインターフェースという機材をPCにつないで「デジタル録音」をしたものを弁士さんに台本執筆の前に提出させていただいています。
イマドキの弁士さんたちは、PC作業に強い方も多いので、それをご自身で映像とドッキングさせて普通の映画のようにしてから台本執筆にかかる方もいます。
そんなわけで、無声映画の当日の本番前には、弁士も楽士もそれぞれ長い期間の準備をして臨んでいます。本ブログの投稿時点では、まだ本番前まで時間があるので、これからどれだけ映像とぴったりシンクロできるのか?稽古に励みたいと思っています。
これから「こども映画館」に足を運んでくださる皆さんや、鑑賞し終わった後に、「夏休み自由研究」として、本作に使用した楽曲さがしや、感想レポートを書く方たちの参考になればと思って記しました。最後までお読みいただきありがとうございました。 楽士 坂本真理
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