ケーススタディから学ぶNFTの取り扱い③
こんにちは。事業計画研究所です。
本日も「NFTの教科書」天羽健介/増田雅史(朝日新聞出版)の所感をレポートしていきます。
前回は、「アートNFTに関するケーススタディ②」というテーマについて話してきました。
今回も、「アートNFTに関するケーススタディ」ということで、第3弾になります。
ケース3.他人の著作物のNFTアート化
まずは、状況説明です。
Pは、アーティストAが著作権を有するアート作品を、Aの許諾なく、NFTプラットフォームX上でNFT化し、購入者Bに販売
アート作品のデータ自体は、NFTにメタデータとして含まれておらず、公衆がアクセス可能なウェブ上にある
Pにはどのような責任が負わされるだろうか?
図にしてみると、こんな感じになります。
PはアーティストAに無断でAの作品をNFT化しています。
このときまず思いつくPの責任は、著作権侵害でしょうか。
しかし、他人の作品を勝手にNFT化する行為だけで、著作権侵害に該当する可能性は小さいと考えられます。
なぜなら、NFT化といっても、アート作品自体を複製したり、送信したりするわけではないからです。
極端に言うと、アーティストなどのNFT化した本人が「この作品のNFTだ」と宣言しているに留まるからです。
この行為は、著作権侵害に該当する禁止行為に当てはまるとは考えにくく、著作権者以外がこのような宣言行為をしても、著作権侵害とはならないというわけです。
もちろん、Pがその販売にあたって、アート作品の画像をプラットフォーム上で使用したり、作品のデジタルデータ自体をアップロードしていたりすると、Aが該当作品に対して有する複製権や公衆送信権の侵害となります。
また、その販売にあたって、Aの氏名や作品の名称を示すことが、Aの商標権やパブリシティ権を侵害する可能性もあります。
実際のところ、作品の内容が分かるような画像等の情報を一切出さずにアートNFTを販売できるとは考えにくいため、AとしてはPに対して何らかの主張をし得る場合が多いとは考えられます。
しかし、前述のとおり、NFT化自体に関しては著作権侵害にあたるわけではなく、他に主張できそうな明確な権利がないことに注意が必要です。
プラットフォームの事業者の立場としては、こうした第三者によるNFT化が発生してしまうと、利用者からの信頼を損なったり、場合によっては損害賠償責任を問われたりする可能性があります。
この対策としては、利用規約において、自己が著作権を有しておらず、NFT化することについて正当な権限を得ていない場合のNFT化を禁止することが考えられ、多くのNFTプラットフォームがそのような対応をしています。
それでも、いわゆる無権限者による出品事例は多く見られるところであり、なかなか実効的な対策をとれていないのが実情です。
購入者BとPとの間では、Pとの間の購入契約を詐欺を理由に取り消し、代金返還請求等を通じてB・P間での解決を図ることが基本となりそうです。
しかし、プラットフォームXのNFT発行・販売への関与度合いによっては、Xの責任が追及されることも考えられます。
無権限者による発行であると判明するまでの間に、NFTが転々としてしまっている場合には、状況が煩雑になってしまいますが、それらも同様に契約の取り消しの対象になると考えられます。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、著作権をもたない第三者による勝手なNFT化という事例でした。
勝手にNFT化されたことを、現行の法律では明確な理由を掲げて追及することができないというのは驚きでした。
NFTはいろんな人が利用できるからこそ、ルールの整備がとても必要であり、現行の形ではなかなか実効的な対策が打てていないことが理解できました。
次回のケーススタディはサービスが停止してしまったときの事例を取り上げます。
次回作をお待ちください!
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