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ケーススタディから学ぶNFTの取り扱い②

こんにちは。事業計画研究所です。

本日も「NFTの教科書」天羽健介/増田雅史(朝日新聞出版)の所感をレポートしていきます。

前回は、「アートNFTに関するケーススタディ①」というテーマについて話してきました。

今回も、「アートNFTに関するケーススタディ」ということで、第2弾になります。

ケース2. 同一アート作品を複数プラットフォームにてNFT化した場合

まずは、状況説明です。

  1. アーティストAが、自らの著作物であるアート作品をNFTプラットフォームXでNFT化し、購入者Bに販売

  2. Aはその後、同一のアート作品をXではない別のプラットフォームYでもNFT化し、購入者Cに販売

  3. このときのBとCの関係はどうなるか?

図にしてみると、こんな感じになります。

事例解説

今回の事例は、見落とされがちですが、ひとつのアート作品について複数のNFTを発行することの物理的制約がないことをとりあげています。

同一のプラットフォームにて、同じ作品から複数のNFTを作成することは、できない、あるいは禁止されていると思われますが、他のプラットフォームの利用は十分に考えられます。

このような場合、購入者BはプラットフォームXにおける利用規約違反、または販売時における個別の合意事項への違反を主張するなどして、損害賠償を求めることが考えられます。

購入者Cにも、Bが購入したNFTの存在を知らずに購入した場合、同様の主張ができる可能性もあります。

著作権との関係で問題になりそうなのは、Bに対して付与されたライセンスの内容とCに対して付与されたライセンスの内容が競合する場合です。

たとえば、BとCに対してそれぞれ独占的な利用権を付与した場合、お互いの主張が競合する形になってしまいます。

もっとも、著作権法はそのような独占的許諾については、定めをおいておらず、BとCのいずれが優先されるかは決まることはないと思われます。

したがって、問題としては利用規約や個別合意への違反という形の契約上の問題に帰着すると考えられます。

最初のNFTの価値変化

ここで少し視点を変えて、そもそも「2つ目以降のNFTが発行されることによって、1つ目に発行されたNFTの価値は消失するのか」ということについて考えてみたいと思います。

この問いはケースバイケースともいえるかもしれませんが、必ずしも価値が消失するものではないと考えられるかもしれません。

なぜなら、1番目に発行されたNFTが「最初に発行されたNFT」であることには変わりがないからです。

そもそも複数のオリジナルが存在しうることは、NFT固有の問題ではありません。

伝統的なファインアートの長い歴史の中でも、何度も繰り返されてい来たことでもあるからです。

たとえば、ロダンの彫刻作品考える人」には、オリジナルがいくつも存在しており、版画作品であれば、より状態が近いものが複数制作されることもあります。

このような場合であっても、2つ目以降のオリジナルを作成することによって、ただちに当初のオリジナルの価値が消失するとは考えられていません。

すなわち、複数のオリジナルが存在することがは可能であり、そのオリジナルが誰によってどのような背景で制作され流通したのか、といった固有のストーリーがそれぞれのオリジナルに付与されていると考えられることもできるかもしれません。

アートNFTにおいても同様に、あるアートNFTが販売されるにいたったエピソードやコンテクストが重要なのだとすれば、そうした面を考えずに複数個のアートNFTが作れることを問題視することは、かえってこれまでのアート取引の実態を反映しない議論となる可能性すらもありえます。

まとめ

いかがでしたか?

先週と同じようで少し違う、という今回のケーススタディでしたが、考察の内容はまったく違う内容になりました。

今回取り上げたケーススタディでは、主に同一のアート作品のNFTが複数になったことに焦点が当てられました。

この話を読んで、自分の感覚と近しいものは、子どものころに遊んだトレーディングカードでした。

同じカードではあるものの、年代や販売パックの違いなどによって絵柄や装飾が異なり、セカンドショップでは高い価値がついたりすることが、今回の話に多少なりとも関連しているように感じます。

次回もNFTの取り扱いを学べるケーススタディを話していきます。

次回作をお待ちください!

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