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NFTの税務的な取り扱いは?

こんにちは。事業計画研究所です。

本日も「NFTの教科書」天羽健介/増田雅史(朝日新聞出版)の所感をレポートしていきます。

前回までは、NFTが法律上どんな分類とみなされるのかについて話してきました。

今回はNFTの「税務の取り扱い」について話していきます。

NFTをめぐる税務の概要

2021年9月時点では、NFTについて税法上に定義は存在していません

また、NFTに係る課税関係のみを規定するような税法や通達も存在していません

したがって、NFTが有価証券、暗号資産、前払式支払手段など、今までに解説してきたものの中から、該当するものに応じて課税関係を検討する必要があると考えられています。

個人所得税の取り扱い

1.NFT取得時の取り扱い

個人がNFTを購入した場合には、その購入時に支払った金額または暗号資産の価額等を取得価額として、資産として認識することになります。

ただし、NFTをその取得時の時価よりも低い金額で取得した場合には、その個人がほかの個人から購入したのか、法人ら購入したのかなどの条件によって課税のされ方が変化します。

たとえば、個人がほかの個人方NFTをその購入時の時価よりも低い金額で購入した場合には、そのNFTの時価とその購入価額との差を贈与みなされることがあります。

この場合、この取引には、贈与税が課される可能性があります。

一方、個人が法人からNFTを同様に購入した場合には、その個人が法人に勤務しているかによって、差額が給与所得として取り扱われたり、一時所得として取り扱われたりします。

2.NFT売却時の取り扱い

個人がNFTを売却した場合の譲渡益は、譲渡所得に区分されるものと考えられ、譲渡益から必要経費などを引いた譲渡所得に、所得税がかけられます。

通常、個人がNFTをその所得の日から5年以内に譲渡した場合の譲渡所得は、短期譲渡所得に区分され、その所得の日から5年超の期間後に譲渡した場合の譲渡所得は長期譲渡所得に区分されます。

長期譲渡所得の場合には、その課税所得金額が2分の1相当額になります。

ただし、譲渡するNFTが自己の著作による係る著作物に該当する場合には、その所有期間にかかわらず、その譲渡所得は長期譲渡所得に区分されます。

法人税の取り扱い

1.NFT取得時の取り扱い

法人がNFTを購入した場合には、その購入時に支払った金額を取得価額とする資産として認識することとなります。

ただし、NFTをその取得時の時価よりも低い金額で取得した場合には、その法人がそのNFTの購入時の時価と購入価額との差額相当額を受贈益として、法人税の課税所得金額の計算上、益金の額に算入する必要があります。

なお、法人がNFTを制作した場合、その制作に係る原価相当額を資産として認識することになります。

2.NFT売却時の取り扱い

法人がNFTを売却した場合、その譲渡益または譲渡損失は、法人税の課税所得金額の計算上、益金の額または損金の額に算入されます。

ただし、法人がNFTをその譲渡時の時価よりも低い価額で譲渡した場合には、個人の場合と同様に譲渡相手によって課税関係が異なります

たとえば、法人が従業員や役員以外のいわゆる第三者である個人、または他の法人に対して譲渡した場合には、その差額相当額がその法人が譲渡の相手方に支出した寄附金の額または交際費の額であるとみなされます。

消費税の取り扱い

消費税の課税関係

消費税の課税対象となる取引は複雑ですが、簡単にいうと、国内において事業者が事業として行った資産の譲渡または貸付、およびサービスの提供が消費税の課税対象となります。

個人事業者や法人が日本国内でNFTを譲渡する場合には、原則としてその譲渡対価には消費税が課税されるものと考えます。

一方、事業を営んでいない個人が趣味で作成したNFTを譲渡するような場合には、その譲渡については消費税が課税されないものと考えられます。

消費税の納税義務

課税事業者に該当する個人事業者または法人は、その年または事業年度において行った課税取引に係る消費税を申告し、納税する義務があります。

したがって、消費税の課税事業者である個人事業者や法人が国内でNFTを譲渡した場合には、納税を行う必要があります

一方、個人事業者または法人のその年または事業年度の基準期間における課税売上高が1000万円以下である場合には、その個人事業者または法人は、消費税の免税事業者となるため、NFTの譲渡にかかる消費税につき申告や納税の必要はありません。

個人事業者以外の個人も、課税事業者に該当しないため、NFTの譲渡を行ったとしても、消費税の申告や納税の必要はないものと考えられます。

まとめ

いかがでしたか?

NFTの譲渡時における税務の話をしてきましたが、個人や法人、お互いの関係性によって、さまざまな取り扱われ方があり、税務関係の複雑さを改めて感じさせられました。

NFTに係る課税関係のみを規定する税法や通達ができるまでは、現行のものに従いながら、早く整備が進むことを待ち望みましょう。

次回作をお待ちください!

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