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【試し読み原稿初公開】「#やさしいビジネス解説本」出版プロジェクト

「キャリア」「生き方」「働き方」をどういう目線で選んでいますか?

この書籍は、「ビジネスモデル」について、ビジネスや商学と呼ばれるものを今まで勉強したことがない人に、人生に訪れるさまざまな選択の場面で活かしてほしいと、「ビジネス興味ないや~」という人でもすっと読める表現で解説することを一番大切にして、この本を作りました。

一見関係がないようにも見える、「自分」と「ビジネス」
それを知ると、一体どんな変化があなたの身に起こるのでしょうか。

一部の人にだけ関係する「専門知識」ではなく、この世界で生きるすべての人にとって関係のある知識として「ビジネスモデル」を解説する本書『就職活動から卒業する方法〜ビジネスモデルを知って人生の地図を手に入れよう〜』の試し読み原稿を公開いたします。

2021/05/28追記
5/30(日)Kindle版が出版されます!予約注文はすでに受付中です。こちら、「たくさんの方に読んでほしい」という思いからKindle Unlimitedでも読めるようにしています。

2021/4/28(水)まで実施中のクラウドファンディングでは118名様にご支援いただき終了いたしました。この書籍が世に出る後押しをしてくださった支援者のみなさま、ありがとうございました!

出版にかける思いは、こちらもご覧ください▼

出版:NPO法人学生ネットワークWAN
監修:スタートアップ成長請負人・山口豪志

第1章 学び始める前に

みなさんはどうしてビジネスを学ぶのか、学んで何に活かしたいのかという明確なイメージを持っていますか?ある方もいるかもしれませんが、「就職に向けて知っておいた方がよさそう」「何か新しいこと知ることができそう」など、なんとなくはあるけれど明確なイメージまではない、という方が多いのではないでしょうか。

「絵を描くためにIllustratorを学ぼう」や「弁護士になるために法律を勉強しよう」といったような、明確なゴールがある勉強は続けやすいですが、そうでない勉強は途中で嫌になったり、なんのために勉強しているのかが分からなくなったりしてしまいますよね。

そのため、「どうして学ぶのか」という理由やゴールは、新しいことを学ぶうえで一番大切なものだと考えています。そこでまずは、その理由やゴールをイメージできるようなことからお話しします。

第一章では、この本を作った学生が学び始めたとき実際に持っていた疑問と、どのように学んできたかをもとに、山口さんから実際にお話を聞いているように書いています。ですから、何もわからない状態で大丈夫です。一緒に始めの一歩を踏み出しましょう!

そもそも「ビジネス」とは?

Q.「ビジネス」とはどういう意味ですか?
《学生》
ここまで当たり前のように登場している「ビジネス」という言葉ですが、
そもそもどういう意味なのでしょうか?何を表すのかもよく分かりません。
「ビジネス」自体がよく分からないので何を学んでいくのかもイメージできず、不安です。
《山口さん》
これから「ビジネス」を学んでいくうえで、言葉の意味が分からないまま、あるいは何をすることなのかをイメージできないままで進んでしまうと、
結局よく分からないし、大変ですよね。ですから、まず最初に「ビジネス」とはどういう意味で何をすることなのか、一緒にひも解いていきましょう。

「ビジネス」という言葉自体は、日常生活やニュースなどで見聞きすることがあるのではないでしょうか。しかし、どういう意味か聞かれると、うまく説明できない言葉なのではないかと思います。また、「ビジネス」という言葉そのものになじみがなく、自分とは遠い存在のもののように感じるかもしれませんね。

実は、そもそも「ビジネス」という言葉の意味は、はっきり一つに定められておらず、使う人や、使われる場面、文章のつながりなどでニュアンスが変わります。

例えば新聞やニュースを見ていると、「ビジネス」の話題がたくさん登場します。今日の株の値段や、とある会社の売上の情報、新しい商品の広告、就活や働き方改革に関する話題などです。しかし、株と就活の話題は「ビジネスの話題」とひとことで言っても、種類の違う話題に聞こえますよね。

それぞれ簡単に分けると、株は「商売」に関する話、就活は「仕事」に関する話です。ビジネスの話題はこの二つに大きく分けることができます。前に挙げた例で言うと、売上や商品の広告は「商売」、就活や働き方改革は「仕事」に関するものです。「ビジネス」はこの二つのニュアンスを含んでいるため、使う場面などによって表すものが変わるのです。

「商売」の方は、実際に社会人として働いてみないとなかなかイメージしづらいかもしれません。ですが、この「商売」としてのビジネスこそ、学生のうちに知っておいてほしいものなのです。ですからこの本では、「商売」としての「ビジネス」についてお話しします。

《学生》
「ビジネス」っていう言葉ひとつで、こんなにたくさんの意味を持っているんだね。
《学生》
よく耳にする割に、なんだか得体の知れない感じがしていたのは、
いろんなシチュエーションで使われる言葉だからなのかもね!
《山口さん》
先ほどお話ししたように、「ビジネス」という言葉の意味は
一つに定められていません。そのため、インターネット等で調べてみると様々な説明が出てきます。それぞれ似たようなことを言っていても、
言い回しやニュアンスが若干違っており、
「結局『ビジネス』ってなんなの?!」と混乱してきてしまうかもしれません。そこで、ビジネスとはつまるところなんなのか、というところから
まずはおさえていきましょう!
そのあと、より具体的に掘り下げていきます。


言ってしまえば「ビジネス」とは「経済」なのです。「経済」という言葉は、ニュースや学校の授業などで耳にするかと思いますが、ここで改めて意味を確認しておきます。大辞泉によると「経済」とは、「人間の生活に必要な財貨(=品物)・サービスを生産・分配・消費する活動」のことです。簡単に言うと、商品を生み出し、運び、欲しい人が購入するまでの活動を全てひっくるめて「経済」といいます。

その「商品を生み出し、運び、欲しい人が購入するまでの活動」とはなんでしょうか?コンビニのおにぎりを例に想像してみます。

まず「コンビニのおにぎり」という商品を”生み出す”のにはどんなことをするでしょうか?そもそも、おにぎりを作るために材料となるお米や海苔、中に入れる具材などを作らなければなりませんね。完成したおにぎりを包むビニールの包装も必要です。
そして、できたおにぎりを箱に入れて、お店にトラックで”運び”ます。さらに、おにぎりをお店の棚に並べたり、レジを通してお金をもらうやりとりをしたりしてお客さんが”購入”しますね。

・お米を生産する
・のりを生産する
・中の具材を生産する
・材料を工場へ運ぶ
・包装用のビニールやシールを作る
・おにぎりを作る
・工場から販売するお店に運ぶ
・スーパーでお客さんに売る

こうした活動を全てひっくるめたものが「経済」です。
そして、これらの活動一つ一つが「ビジネス=商売」と呼ばれるものです。お米を作る活動、のりを作る活動、おにぎりを運ぶ活動…、これらの一つ一つが「商売としてのビジネス」なのです。

これら一つ一つの活動とはつまり、相手が欲しいものを提供してお金を受け取ることです。

おにぎりを作る会社が、自分たちで一から稲を栽培してお米を作ったり、具材にするための鮭を捕ってきて加工したりするのは大変ですよね。そのためおにぎりを作る会社は、炊けば使える状態に処理されているお米や、フレーク状になって味がついている鮭が欲しいのです。そうした欲しいものがある、おにぎりを作る会社と、それを提供する米農家や漁師との間で行われるものが「ビジネス」なのです。

欲しいものは人や会社などによって様々ありますね。機械を作るための部品(=モノ)が欲しい人がいれば、引っ越しをするために家具を運んでくれる人手(=サービス)が欲しい人もいます。このように誰かが欲しいと思うモノやサービスを提供して、お金をもらうことはどれも「ビジネス」です。

《学生》
「ビジネス」って、「仕事」を英語でいっただけの言葉だと思っていたけど、もっとスケールの大ーーーきな話なんだね!
《学生》
わたしは、「ビジネス」ってTwitterでDM送ってくる人が使う
怪しい言葉だと思ってた笑 
だけど、さっきまでより少し自分に関係ある話に思えてきたよ!

「ビジネス」と私

Q.まだ社会に出ていない学生である私たちには
どのように関係しているのでしょうか?
《学生》
私たち学生は、お金を払う側になることは沢山あります。
でも、誰かが欲しがっているものを生み出してお金をもらう立場になることはなかなかありません。私はアルバイトもしていないですし、
「ビジネス」は自分にはあまり関係ないように感じます。
《山口さん》
ビジネスとは「相手が欲しいものを提供してお金を受け取ること」だと
お話ししましたね。ですがこの活動は、ただ”ものとお金とのやり取り”
というだけではありません。

実はビジネスは「生活そのもの」なのです。私たちの生活のいたるところで、何らかのビジネスが関わっていて、そのおかげで自分が生活できています。そのため、この社会で生きている以上は必ず何らかのビジネスに支えられているという点で、学生でも、たとえ赤ちゃんであっても「ビジネス」に関わっています。

例えば一人で無人島で生活すると想像してみましょう。そこでは食べるものや火など、身の周りの全てのものを自分で一から用意しなければいけませんね。お腹がすいたら、動物や魚を獲ってきて捌いて、のどが乾いたら水をろ過したり、寝床はやわらかい草を探してきて作ったり…。とても大変ですね。

実際わたしたちが日本で暮らしている生活はどうでしょうか。朝、温かい布団の中で目が覚めて、蛇口を回せばきれいな水が出て、お腹がすいたら冷蔵庫で保存しておいたものを食べて・・・。多くの方には当たり前の日常かもしれませんが、それらの背景にはたくさんのビジネスの存在があります。快適な毛布や布団を作るビジネスや、水を飲める状態にするビジネス、冷蔵庫を作るビジネスなど、それぞれが行っている「ビジネス」によって私たちの生活が成り立っているのです。
さらには、おにぎりを作ることと、その材料となる米を作ることのように、「ビジネスをするためのビジネス」もあります。例えば美容室で髪を切るときを考えてみます。髪を切ってくれる”美容師”という人だけではサービスは成り立ちません。ハサミやシャンプーを作るビジネスや、それを運ぶビジネス、さらには髪を洗うための水を管理するビジネスや、お店の電気を生産・管理するビジネスなど、様々な「ビジネス」があって初めて”髪を切る”というビジネスが成り立つのです。誰の力も借りずに「ビジネス」できることはほぼ存在しません。あるとすれば、原始時代のように全て自然のもので一から作って自分で売る、というビジネスでしょう。

「ビジネス」は鎖のように繋がっていて、その間にあるいかなる人物が欠けてもうまくいきません。どのビジネスも一つ一つ何らかの役割を担っていて、それぞれが繋がって今の生活がつくりあげられています。そのため、日々生活することにおいて沢山のビジネスに関わり、支えられているのです。

《学生》
この本ができるまでの過程にも、すごくたくさんの人が関わっているんだって!
《学生》
聞いた!聞いた!
文章を書く人や絵を書く人、この本の監修の山口さんはもちろん、
印刷する人、配送する人、クラウドファンディングの運営会社の方などなど
1人の力や1つの組織の力では絶対にできなかったことが、色んな人がやっているビジネスが組み合わさって、形になっていくんだね!
《学生》
こうやって考えてみると、連想ゲームみたいにどんどんつながっていって
面白いね!

ビジネスは地図、夢は住所

Q.会社をつくるわけでもなく、社会人でもない学生のわたしにも、
ビジネスを”学ぶ”といいことがあるのですか?
《学生》
「ビジネス」は生きるうえで自分たちと切っても切り離せないものなんですね。ビジネスの存在が重要なものであることは分かってきたのですが、
その重要さに”気づく”だけでなく、”学ぶ”とどんないいことがあるのでしょうか?
《山口さん》
就活の時にいわゆる”企業研究”で参考になったり、
就職してから仕事をするうえで役に立ったりと、ビジネスの知識があると”いいこと”はもちろんあります。

しかし、ビジネスの知識はそういう”知っていると直接的ないいことがあるもの”というより、国語や算数のように”基礎的で、広く活用できるもの”なのです。例えば国語を学ぶことは、「ひらがなを書けるようになる」などというものではなく、その先にある日常生活での文字の読み書きによる他者とのコミュニケーションにおいて話したり聞いたりすることの基礎となりますよね。「知っているから○○で役に立つ」というものではなく、「知っていることを様々な場面で活用できる」というものです。ビジネスの知識もそれと同じように、様々なことにつながる基礎的なものなのです。

私はビジネスやビジネスモデルの知識は「地図」のようなものだと考えています。地図は、高いところから広く全体像を見ることのできるものですね。そしてそれがあって初めて、何町の何丁目、何番地という具体的な住所までの道が分かります。また、周辺に何があるかも見えたり、近道や迂回路も見えたりします。逆に、住所だけ知っていて地図がないと、手がかりのない状態から目的地までの道のりを自分で探さなければなりません。そうなると最早何から手を付ければいいのかもわからなくなってしまいますよね。

ビジネスの知識も、このような全体像を知って具体的に何かをするときに応用できる「地図」のようなものなのです。この「地図」における「住所」とは、自分のしたいことや目標にあたります。つまり、ビジネスという全体像を見るためのものを持っているから、したいことや目標といった目的地へのルートが見えるのです。また、その目的地の周りにどのような産業や業界があるか、どういう人が関わっているか、といった周辺の情報も見えてきます。

このようにビジネスという「地図」は、具体的にしたいことや目標があるときに、道しるべやヒントを指し示すものとなります。一方でそうでなくても、将来どうしようかと漠然と考えているときこそ、ビジネスや社会の仕組みという基礎的な知識を蓄えることは、具体的にしたいことができたときのための土台作りになります。「これをしたい」や「新しい何かをしてみたいな」と思ったときにいつでもそこまでの道のりやヒントを探せるような土台を準備しておくのです。

また、この「地図」は就職して企業で【働く】うえでも重要な土台となります。
今は「企業に入社できれば安泰」の時代ではなくなりました。技術や社会の目まぐるしい変化に伴って、それぞれの会社における事業のつくり方、進め方やり方などがどんどん変わってきています。さらに、会社が合併したり、解散したりと、会社の寿命が短くなってもいます。このような時代において企業に入社して働いていく上で、上司に言われたことだけをするのではなく、自分の所属する会社や事業を一度客観的に考察してみたり、自分なりにどういう貢献ができるのかを考えたりする視点が重要なのではないかと思います。

「地図」を応用して、自身の周りの状況や社会の仕組み、また客観的に自分が働く会社の状況などを一度冷静に見てみるのです。すると、「この事業のビジネスモデルは長く続けていけるのだろうか」「生き残っていくためにはどこを改善するべきなのか」といったことが見えてきたり、トレンドやアイデアを取り入れた新しい事業を考えたりする際のヒントになったりもするでしょう。

このように、自分の現在地や将来を考えるための一つの切り口として「ビジネス」という土台を持っておくことは良いことなのではないかと思います。

また、これは余談ですが、ビジネスを知って活用できる人は身の回りの人に対して、より優しくなれたり、喜ばれる機会を増やせたりもするのではないかと思います。

先ほど、ビジネスによって日常生活が成り立っているのだとお話ししましたね。その背景には、ビジネスをしている沢山の人たちの存在があります。直接私たちの生活を支えるビジネスをする人、さらにそのビジネスを支えるビジネスをしている人など、様々な人が関わっているのです。そのように、自分の日常がどう成り立っているのか、そこにどんな人が関わっているかを想像できると、”当たり前の毎日”が多くの人たちに支えられて実現しているのだということが分かります。そして、「誰かがいるおかげで日々の営みがあるんだ」ということに、ありがたいと思う機会が増えることで、身の回りにいるその”誰か”により優しくなることができるかもしれませんね。

《学生》
僕は起業とかには興味がないから、ビジネスって自分には一生関係のない
話だと思ってたんだけど、就職して働く人でも、知ってたほうが
お得な気がしてきた!
《山口さん》
わたしはいつかフリーランスになりたいな、と思ってるんだけど、
なんだか近道を見つけられた気分!

第3章 ビジネスモデル

(3章から一部抜粋)

コラム ビジネスパーソンにとってのビジネスモデルの重要さ

もしあなたが会社から独立して自らの力で商売をはじめようとしたとき、そこに何かしらプラスアルファとなる要素を付け加えないと、お客さんを呼び込むことはできないでしょう。そのプラスアルファの要素とは例えば、価格の安さや品質の高さ、サービス提供の速さ、あるいは顧客のニーズを満たす新しい商品の形などです。いずれにしても、既にある商売と同じことをやってもビジネスは成功しません。つまり、ビジネスを成功させるためには、「どうやって儲けるか」の仕組みであるビジネスモデルをあらかじめ設計しておくことが重要です。

そして、自社や他社のビジネスモデルを理解できると結果的に自社の強みが理解できて、それをお客さんに明確に示せたり、また自社の製品の進むべき道も見えてきたり、それによってチーム個々人のベクトルが一致してチーム内での結束が高まったりもします。
逆に、自社のビジネスモデルについてしっかり理解できていないと、競合の優れた(ように見える)機能や、お客さんの要望を全て鵜呑みにして、本当は必要のない機能をつけてしまいがちです。結果、その製品の本来優れていたポイントが薄れ、魅力のない製品になってしまいます。

このように、挙げればキリがないほど、ビジネスモデルを知っておくことが重要になる場面はたくさんあります。それほど、ビジネスモデルは根本となる概念であるということなのです。そのためビジネスモデルの知識は、商売をはじめる起業家や経営者だけでなく、商品開発や営業、マーケティングなど、消費者に新しい価値を提供するあらゆるビジネスの場面で必要なのです。

ビジネスモデルが違えば戦い方も変わる

ビジネスモデルは働き方や収益性などの様々な要素を定める、とお話ししましたが、実はほかにもビジネスモデルによって定まる要素があります。それは「戦い方」です。

少し前まで「タピオカブーム」がありましたね。いたるところにタピオカドリンク屋さんがあって、ときに数メートルしか離れていないような距離の近さでお店が並んでいることもありました。タピオカのように「これが売れる!」と分かればそれをマネする会社が出てきます。そのライバル会社を競合(競合他社)といいます。このような競合が現れたときにビジネスを継続させていくためには、勝つための工夫が必要です。それがここで言う「戦い方」です。

《山口さん》
起業してから10年後までその企業が生存する確率は6%とも言われています。近年では、これまで成長の一途を辿ってきた大企業が、ものすごいスピードでその基盤を失っていくケースも増えています。

競合が現れたときに必要なのは、ビジネスを継続させていくために、競合と何か違う動きをして利益を確保できるようにする。つまり差別化を行って、他とは違う強みを持つことです。そしてその強みは、一時的なものではすぐに真似されてしまうので、簡単にはマネできないものでなくてはなりません。しかし、その強みも、マネが難しいことも、消費者の嗜好の変化や、社会インフラの変化等によって一瞬にして崩れ去ることもあります。そのため、その強みを維持して競合に負けないようにするためには、常に変化に対応し続けなければなりません。

そして前の章ではお話していませんでしたが、この簡単にはマネできない強みを持っていることは、競合に対して優位に立つビジネスモデルには欠かすことのできない重要な要素なのです。つまり、その強みを持っているビジネスモデルは、競合と戦うための仕組みでもあるため、それが違えば戦い方も全く変わってくるということなのです。その例としてコンビニ業界を見てみましょう。

《山口さん》
誰もマネ出来ないような強みをもち、それを維持するために変化に
対応し続ける。これを聞くと、ビジネスのハードルが上がってきませんか?
しかし、これを求められ続けられるのがビジネスなのです。

販促は市場を創るほどのインパクトを持つこともある

販促活動が与える影響はますます大きくなっているとお話ししましたが、販促活動はときに新たな市場を作ってしまうこともあります。

例えば、1900年頃に世界で初めて自動車の大量生産を実現し、大衆にモータリゼーションを広めたヘンリー・フォード。彼の名言に、『もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう。』というものがあります。

当時は馬での移動が一般的で自動車は一般の人たちになじみのあるもではありませんでした。消費者たちは「目的地まで馬より早く移動したい」という隠れたニーズを持っているものの、それを可能にする手段を持っていなかったのです。そのため「自動車がほしい」と思うこともありませんでした。

フォードは、その隠れたニーズに気がつき、誰もが買える価格になるよう生産コストを抑え自動車の大量生産を実現しました。そして、販促活動の中で自動車そのものではなく、「目的地まで馬より速く移動できる」という点を消費者に訴えかけたのでしょう。その販促により消費者は「車」という真に欲しいものに気がついたのです。それにより、一般の人が車を購入するようになり、大衆向けの自動車市場ができました。

このように販促活動は、消費者自身も気づいていないニーズに気づかせて購入を促すことで、新しい市場を産み出すことがあるのです。

《学生》
今では身の周りのほとんどの人が使っているLINEが、
2011年の東日本大震災をきっかけに「気軽にメッセージのやりとりができて、災害時でも使えるアプリが欲しい」という隠れたニーズを汲み取って開発されたのと同じですね!

第4章 ビジネスモデルの24の型

(4章から、具体的なビジネスモデルの型の解説部分から一部抜粋)

①SPA型 (商品₋販路 / 有形₋オフライン) 

例:ユニクロ、H&M

一般的には、どういった商品を作るか考えたり、実際にそれを作ったり、お客さんに販売したりといった、生産から販売までのさまざまな工程はそれぞれ違う業者が担当します。しかし、この「※SPAモデル」の場合はそれらの工程をすべて自社で行います。簡単に言えば、商品を自分で作って自分で売るということです。
※Specialty store retailer of Private label Apparel

◆解説と特徴
お客さんの好みやトレンドの変化との時差を最小限にすることができる(最大の強み)
 →売れゆきなどの商品に関する情報を、販売している各店舗から直接すぐに聞くことができるため。(ほか  の業者を介するとその分時間がかかってしまう)
  それによりお客さんの反応やトレンドの変化を素早く読み取り、既に販売している商品の改善や新しい商品  づくりに生かすことができます。そのためアパレル業界でよく見られるモデルなのです。
商品を低い価格で販売できる
 →生産から販売に至る間の他業者に支払うお金を削減することができ、商品自体の原価を安く抑えることができるため。
デザイン性や素材などを変えずに同じコンセプトにこだわった商品づくりができる
 →すべての工程を一つの企業が担当するため。
・新しくこのモデルの事業を始める際にはハードルが高い/難易度が高い
 →あらゆる工程をまかなえるだけの知識や経験、設備や人材などの仕組みが必要なため。
在庫を抱えるリスクがある
 →自社の店舗でしか商品を売れないため別の小売店で販売したり、メーカーや製造業者へ返品した  りすることもできないため。

◆ファーストリテイリング「ユニクロ」

ファーストリテイリング社は日本を代表するSPA企業の一つです。
事業の一つである「ユニクロ」では、商品の企画や計画から、素材の開発や調達、生産、物流といった、販売までの工程を一貫して行っています。
また、スマートフォンのアプリなども活用して消費者の声をダイレクトに受け取り、商品の開発や改善に生かしています。
そしてそれらの更新された商品は「UNIQLO UPDATE」のWebサイトで、
それぞれの進化のポイントとともに紹介しています。

⑦ 教室型(商品₋販促 / 無形₋オフライン)

例:RIZAP、バレエ教室、学習塾

対面で人が人に教えるビジネスモデルで、学習塾やスポーツ教室、フィットネスクラブなどがこれにあたります。
このモデルにおいて利益を生み出すもととなるのが「従業員の働き」です。例えば一人の従業員を時給2,000円で雇っている場合、その働きに対してお客さんが10,000円払ってくれれば8,000円儲かります。しかし3.000円しか払ってもらえなければ1,000円しか儲かりません。このように従業員の働きに対してお客さんが払ってくれる金額が高いほど、利益も増えます。

支払ってもらえる金額を高めるためには「従業員にどう付加価値をつけてお客さんの満足度を高めるか」ということがカギになります。その付加価値がほかのサービスとの差異付けの要素となるからです。その付加価値とはたとえば、サービスの質やそれによって得られる効果の高さや、それらが保証されているなどです。そのため、教える側である従業員の教育をして、商品であるサービスの質を保つ仕組みづくりが重要なのです。

◆特徴
場所代や人件費は固定されており、顧客が増えるほど、あるいは長く利用してもらえるほ ど収益も増える
場所の制約がある場合がある
 →設備の必要なプールやバレエ教室などはオンラインでは難しい

◆RIZAP株式会社「RIZAP」

RIZAPはダイエットやボディメイクをサポートするパーソナルプライベートジムです。トレーナーの多くは未経験から始め、ライザップ独自の厳しい研修システムによる、徹底した教育によって”RIZAPメソッド”を持った一流のトレーナーとなっています。

その教育制度では、入社後147時間にわたるカリキュラムでライザップのメソッドを学びます。それによりトレーニングや食事の知識だけでなく、人体の仕組みから救急救命の方法、メンタルケアの知識などのあらゆる知識を持った、専門的なトレーナーとなるのです。

その専門性により、確実に結果が出せるサービスとして人気が高まりました。トレーナーとなった後も、定期的に研修が行われており、サービスの質を保っています。さらに、独特な音楽とともにダイエット前と後の姿を見せる印象的なテレビCMで販促に成功し、一気に認知度を高めました。

⑧コンテンツメーカー型(商品₋販促 / 無形₋オンライン)

例:Pokemon GO、Newspicks

独自のオンラインのコンテンツを生み出すビジネスモデルです。スマートフォンアプリなどがこれにあたります。
こうしたオンラインのコンテンツは、パソコン一台あれば作ることが可能で初期投資が少なく済みます。そのために似たようなものが沢山存在します。さらに、誰でも利用開始と、利用終了(アンインストール)が簡単にできるため、そのコンテンツの目新しさや、魅力を高めることが重要となります。

またオンラインゲームの場合、利用者の多さがそのサービス自体の魅力や、利用を継続する要因となる場合があります。例えば100人のプレイヤーが集って戦い、最後の一人を目指すバトルロイヤルゲームの「PUBG」や、4人チーム同士でインクを使って戦う「スプラトゥーン」などです。利用者が少ないと、人数が集まらずゲームを開始できなかったり、大人数の中で1番になるという醍醐味を味わえなかったり、あるいは深夜は人がほぼいないためにゲームをプレイできなかったり、といった事態になってしまいます。そうすると利用者としては、プレイしようというモチベーションが下がってしまいます。
そのため、販促によって知名度を高め、利用者を増やすことが重要となるのです。

◆特徴
・コンテンツへの課金や企業からの広告費等で利益を得ている

◆株式会社ポケモン✖Niantic「ポケモンGO」

2016年夏にリリースされたゲームアプリです。
GPS機能を活用して現実世界を舞台に、スマートフォンで「ポケモン」を捕まえたりバトルさせたりすることができます。
ゲームの中ではない、現実世界の自分自身が主人公となって遊べるゲームは
当時革新的で、世界的なブームを巻き起こしました。
コンテンツそのものの目新しさや魅力がユーザーに評価されたのです。
またその話題性からSNSなどで情報がどんどん広がり、販促にコストを大量にかけなくとも認知度が高まりました。

⑰一点商材突破型 (販促-商品 / 有形-オフライン)

例:「Apple」のiPhone、「ダイソン」の掃除機

ある特定の商品の販促に力を入れて「この商品といえばこの企業」と広く認知してもらうことで、購入者やファンを増やし、安定した需要と利益を得るモデルです。
たとえば、掃除機を買いたいと思ったとき何を思い浮かべるでしょうか?「吸引力の落ちないただ一つの掃除機」というフレーズや、掃除機の中身を分解してどういう仕組みになっているか見えるテレビのCMなど、真っ先にダイソンの掃除機が思い浮かんだ方がいるのではないでしょうか。このように「掃除機といえばダイソン」と広く認知してもらえれば、掃除機を買いたい人に「有名だし間違いなさそう」「掃除機は良く知らないからとりあえず有名なもの買ってみようか」などと思ってもらうことができ、安定して需要を得ることができます。
ただし、他社がすぐにはマネできない商品がある場合に使える手段のため、実現するハードルは高いです。

◆そのほかの特徴
特定の商品のため伝えやすく、話題が広まりやすく、企業もマーケティングもしやすい
 →例:「iPhoneの新作出るって!」
特定の商品を売ることに資源を集中させて効率よく事業を行うことができる
商品自体がユニークで似た商品がなく、他では買えないため、販路が充実していなくても 売ることができる

◆企業例:Apple「iPhone」

2007年にスティーブ・ジョブズ氏により発表されたスマートフォンです。
それ以来、毎年バージョンアップされた機種が開発・販売されており、
2021年現在ではiPhone12シリーズが新機種として販売されています。
シンプルなデザインや、直感的な操作、カメラの質の高さといったの使い勝手の良さで「iPhone」のブランドを確立しました。そして熱狂的なファンが全世界におり、新機種の発表イベントがライブ中継されたり、発売時には店の前に徹夜で人が並んだり、「新型のiPhoneを持っている」ということがステータスにまでなったりと、スマートフォン市場において圧倒的な人気や知名度を誇るブランドとなりました。
Appleはこのビジネスモデルが大成功した企業です。

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