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カスタマーサポートの「ありたい姿」とは?要望の意図を汲み取るS社の取り組み

ソフトウェア開発会社のS社には、システムの導入や納品後のサポートを行う「カスタマーサポート」の担当者がいます。納品後の要望に対しては細やかなヒアリングを行い、社内で内容を共有し、顧客の困りごとの「本質はなにか?」を掘り下げることを大切にしています。この記事では、S社のカスタマーサポートの取り組み事例を紹介します。

顧客の要望へのよくある対応

カスタマーサポートは社内外に対して「顧客に言われた通りに…」「営業やシステム開発チームの言った通りに…」と、比較的受け身になりやすいポジションです。
しかし、顧客の要望の裏には、業務効率化や利益アップなどの狙いがあるはず。ただ単に「技術的にできる・できない」のみを判断して対応するだけでは、顧客の狙い通りの効果を生まない可能性があります。

サポートが社内に顧客の要望を伝えても、営業や開発からは「技術的に難しいため、可能な範囲でのみ対応する」という回答があることもしばしば。しかし、これでは顧客の要望の狙いを理解せず表面的に対応しただけになってしまいます。顧客は効果の不十分なものにお金を払うことになるのです。

顧客の代弁者としての「カスタマーサポート」

S社では、顧客の要望の背景にある本当の理由やねらいは何なのか?という、顧客目線でとらえることが、真の解決につながると考えています。そのため、顧客と開発チームとの橋渡しとして有効に機能する「カスタマーサポート」のポジションを設け、以下の取り組みを行っています。

①ヒアリングで課題の本質や顧客の意向をつかむ
②営業・開発・カスタマーサポートの3者で話し合う

①ヒアリングで課題の本質や顧客の意向をつかむ

まずは顧客が抱えている課題の本質をつかむことが大切です。
顧客から要望があった場合には、カスタマーサポートは「なぜそうして欲しいのか?」までヒアリングします。

<例>

顧客

「申し込み者の一覧に検索条件を追加してほしい」
 ※検索機能はあるが、絞り込みの条件を追加してほしいという要望

S社サポート
「検索機能を追加した後にどのような業務を行う予定ですか?」
 ※顧客が本当に必要な機能を提供するために要望を深堀をします。

顧客
「申し込み者を集計し、本部に送る月次報告に使いたい」
「申し込み者の所属や年齢で分類したい」

というように、本来何をしたくて「検索機能を追加したい」と問い合わせしたのかヒアリングで知ることができました。

このように、顧客の要望の裏には「本来やりたいこと」が隠れています。カスタマーサポートが本質を聞き出す意識を持ち、顧客の代弁者として社内に伝えることで最適な提案ができるとS社は考えているからです。

②営業・開発・カスタマーサポートの3者で話し合う

カスタマーサポートは営業・開発との話し合いの場を設けます。ヒアリング内容を3者で共有し、それぞれの立場から顧客の課題を本質的に解決する方法を探ります。

【開発:技術面からの意見】
・要望に応えられる/応えられない
・こんなこともできるけどどう?

【営業:事業課題や利益アップの視点】
・そのシステムや機能の本来のねらいから、ぶれていないか?
・それが本当に顧客の利益につながるかどうか?

それぞれの立場で意見を出し合います。

<例>
前述の例で、顧客が検索機能を追加したい理由は「集計して月次報告に使いたい」とシステム会社に伝えました。

サポートは社内のエンジニアや営業に顧客の要望を伝えました。
結果、分析ができるようにダッシュボードに推移や分類が分かるグラフを追加することに決まりました。

カスタマーサポートはこうした意見に対して受け身にならず、ヒアリングでつかんだ顧客の考えやスタンスをもとに意見を出したり、開発や営業の意見を顧客の視点で検討したりします。つまり、顧客の代弁者という独立した立場で話し合います。

まとめ

顧客の要望に対して、会社の立場だけでなく顧客の立場でも考えることは、当たり前のようですが難しいものです。ビジネスデザイン研究所は、常に顧客に寄り添い、顧客目線に立つサポートが社内にいることが大切だと考えています。