【美脇クリエイター美咲】 #逆噴射小説大賞2020
顧客が蒼白な顔でやってきた。
「み、美咲さん、た…すけて…」
そう言ってベッドに倒れ込み、すかさず美咲はその脇をチェックした。
「こ、これは!闇脇団の仕業!ああ、ナナさん、共に懸命にケアしてきましたのに。さぞかし無念でしょう!」
「フォッフォッフォッ」
天井の裏から闇脇団と思われる男たちが降ってきた。
「照射!美咲プラズマ!」
これまで幾多の頑固な脇毛を焼き切ってきた特製の脱毛器である。だが今回はかなり手練れの者たちであったようだ。あっという間に機械は破壊され、美咲はナナの上へ覆い被さるように倒れた。
気がつくと美咲とナナは滝のそばにいた。
「気がついたかね。」
「わ、脇仙人様!?」
「こっぴどくやられたようじゃな。」
「不覚を取りました。はっ、ナナさんは?」
「安心せい、まだ寝ておる。毛止の処置はしておいた。それにしても奴らだいぶ勢力を増してきているようじゃな。」
「はい。しかしこのままでは太刀打ちできません。」
ぶしゅるるるる
「この声は、ナナさん!」
「しもた!」
仙人が飛び跳ねた。
「ワシとしたことが!しもたぁぁ!」
ナナが蒼く光り出す。
「しもたぁ!読み違えた!しもたぁぁぁ!」
「仙人様、落ち着いて!一体何が?」
「しもたぁぁぁ!」
「仙人!はっ、ナナさん!」
ナナが巨大化し宙に浮いた。
「我が名は剛毛貴族。美脇に囚われし者たちよ、終焉の時だ。自然と調和せよ。あるがままを愛されよ。」
「しもたぁぁ!」
「闇脇団…まさか剛毛貴族と結託していたなんて…」
美咲さん、聞こえますか?ナナです。
「ナナさん!」
私の右脇に扉があります。そこから剛毛貴族のいる世界へ向かえます。
「しもたぁぁ!」
美咲さん!あなたなら必ず再び私の脇を!
「しもたぁぁぁ!」
「仙人!黙って!」
私の脇に再びすべすべ感を取り戻してくれるって信じてます!
「ナナさん!はっ、この翼は一体?」
滝のマイナスイオンが美咲を包む。
天使の羽を広げ美咲はナナの右脇へ向かって舞った。
続く
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