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アンジー。tríocha a seacht

食事の片付けをしてから、サーランに分けてもらったアップルパイを食べた。残りはルーが全部食べちゃってた。ちゃんと頬にパイ生地のかけらを付けてるし。ルーはさっきよりゆったりした顔になってるみたいだ。
明日の夜の便で帰るから、明日はここを昼前には出るよ。
そっか、忙しいんだもんね、ゆっくり休んでね。朝早く起こしたほうがいいの?
そこまで急がなくても大丈夫だと思う。ありがとう。
部屋に引き上げてテラスの椅子に座って庭を眺めた。すぐには眠れそうにない。
サーランと二人で戻った時、ルーはテレビの前の床に座っていた。それを見て初めて会った頃のアンジーを思い出した。
サーランがあれだけに育つだけの時間がたったんだな。そうなんだよな。もう戻れないんだろうか。でもここには僕が見ないようにしていた本当に必要なものがあるような気がする。ねえ、ルー、ルーは僕に会いたいと思ったことはなかったの?
バラの香りのする風が肌寒く感じた。
寝よう。明日は明日。
大きな大きなベッド。これなら娘たち二人と一緒でも大丈夫たろう。そうだ、今度は二人も連れてこよう。たぶん、バラの庭を気にいる。飛行機初めてになるな。長時間の飛行機でのご機嫌の取り方。二人分の荷物の量。ますます頭が冴えてきた。衝動的にアイルランド来ちゃったけど、僕、親なんだよなあ。
上着を羽織ってもう一度テラスに出た。
母さんから送られてきた写真を見るといつもどおりで安心した。スカートとリボンの色が合わないって朝から戦争だったって。二人して半べその顔してる。
サーランの話は、ちょっと変わってる父親との二人の生活でたまったちいさな不満ばかりだった。気のすむまで話した最後には、アイルランドに来てよかったってさ。
よかったね、ルー。

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