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アンジー。tríocha a haon

アイルランドのでのことは今となってはすべてただの思い出になってしまった。
ビーノは正式にルアン・オレアリーとしてダニエルの養子になってアイルランドに根を下ろした形だ。
僕は兵役を終え結婚もして、今、双子の娘たちが犬と遊んでるのをビールを飲みながら眺めている。この僕が犬を飼うなんて、もしかして離婚も犬のせいかも。ま、もうなんだっていいんだけど。
ルアンと約束したんだ。約束を守ってもルアンに会えるわけでもないのに僕はよくやった。
ただ、夜中に目覚めた時、この暗闇がいつまでも続くかと思うとつらくなる。
最後にルアンに会った時、泣いていたのは僕で泣き虫のはずのルアンは微笑んでいた。 
泣かないで、セジュ。さ、もう一度言ってみて。
何度も何度も、僕に言わせた。
仕事を頑張って結婚して子供を作って家族を安心させる。
娘たちはかわいいし、両親も祖父母たちもすごく喜んでる。奥さんは出ていったけど。
なんか違う、だって。
そうだよね、なんか違う。僕もそう思う。
だって、なんの意味があるんだよう。
まわりのすべてが匂いのしない料理みたいでなんか違うんだ。
アイルランドに行こうと頑張ってた時は、ビーノに会うって目的があったけど、今はもう会いたいという気持ちも思い出せないよ。
ルアン、ね、ルーって呼んでもいいかな?誰かと一緒かな。一人で泣いたりしてないよね。僕は家族はいるけど一人だよ。ルーがいないと僕はからっぽなんだ。
ねえ、助けてよ。

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