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アンジー。tríocha a hocht

写真を見始めると止まらなくなった。予定より少し早く小さく生まれてしまったふたり。こんなに小さかったのに最近はおしゃべりが本当に上手になった。不思議と母親を恋しがって泣くようなことはほとんどないんだけど、それはそれで物わかりが良すぎて心配。
僕の奥さん、だった人は、月に一度娘たちに会いに来る。それでいいんだって私、お母さんには向いてないみたいって寂しそうな顔して言ってた。そんこと言ったら僕だって親には向いてない。やっと取れた休みなのに子供を置いて、こんな遠くまで忘れられない人の顔を見に来てるし。
子どもたちが生まれるまでの二人だけのの写真はまだ消してない。写真の中で僕たちはすごく幸せそうに見える。
セジュ。
昔のアンジーのМVみたいな青い闇の中に、ルーが立っていた。
アンジー。
僕は腰を浮かしかけた。
セジュ?どうしたの?
あ、うん。
お茶でも入れよっか。
首をかしげてそう言ったルーは昔のアンジーそのままだった。
月を見に行ってたの、海にお月さまのひかりが映ってすごくきれいだったから。
誘ってよ。
寝てると思ったもん。
眠れないよ、ルーがいなきゃ。
じゃあ、お茶はよくないね。ホットミルクにしようか。
聞いてた?
聞こえてる、でもそんな事言われても無理なんだもん。
無理って。
ね、暗いとこで何してたの?
ん、母さんが送ってきた子どもの写真見てた。見て、半べそになってるのがかわいいんだ。毎朝リボンの色やらスカートと靴下がどうとかで戦争なんだ。
ふふふ。女の子ってすごいよね。ちっちゃい時からちゃんと自分のかわいいを目指すんだもん。
そういえば、四歳と六歳はどうしてるの。
都会とか海外に行っちゃう若い人も多いんだけどね、家に残って、牛の牧場を手伝いながらチーズの工房を始めるんだって。結構おいしいの作るんだよ、うちでも使わせてもらうとになってる。セジュ、おむこさんに行けばいいよ。ふたりともすごい美人さんになったんだから。
なんで、ルーは僕を他の誰かのものにしたがるんだよ。
つい、大きな声がでた。
ま、中でミルク飲もうよ。

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