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アンジー。daichead a ceathair

運命も粉々に割れてしまうくらいの大きなノックの音が響いた。
ショーンだ。
ルーは僕の顎に頭をぶつけてから勢いよく入り口まで走った。
痛いです。
ああー、すまん、今日は大事な弟くんがいるんだったー。
ショーンの酔っ払ったダミ声が聞こえた。ルーに支えられてやっと立ってる。お酒は強いはずのショーンがぐてんぐてんというかでろんでろんというか、こんなになるまで呑むなんてどういう。
ルーが潰れそうになって慌ててかけ寄った。
悪いな。あんたがいるならこんなに呑む必要なかったなあ。すまんすまん。
ショーンはどーんとベッドに転がった。
なんつーか、とにかくオレは馬鹿だってことだあー。
あとはごにょごにょとなにか言いながら寝てしまったみたい。
しっかりと泣きべそな顔になったルーとソファーに座り込んだ。
いつもこんなふう?
うん。どうしたらいいの、僕のせい?
うーんきっと、仕事でイヤなことでもあったんだよ。そういうこともあるよ。
久しぶりの泣き虫モードなルーが腕の中にいることの方が重大案件だった。このまま、とやましい考えがよぎった瞬間、腹がなった。
セジュ、お腹へってるの?
この街に着いてからビールしか口にしていない。
あ、うん、この近くに今からでも食べ物買えるようなとこある?
下の店、明け方までやってるから頼めば何か出してくれると思うけど。
そう、じゃあ、行ってこようっと。ルーは何か食べる?
僕も一緒に行く。ショーンはたぶんこのままずっと寝たまんまだもん。
そうだね、遅いけど二人で食事しよっか。顔洗えるところある?さっぱりしておいでよ。
あの泣き顔を僕以外には見せたくない。
それにしても、初めてアンジーに会ってから十年は経つっていうのに泣き顔が変わってないって、まいったな。







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