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ダダダイアリー、主に映画。2023/5/16ー5/31

5月16日
大森一樹監督「ユー・ガッタ・チャンス」日本映画専門チャンネル録画鑑賞。
「いま何時?今ユウジ」の民川裕司シリーズ第2作。吉川晃司が実際に成功したからこそ実現した企画なので、内容よりも現実が遥かに優っていてフィクションが吉川に全然追いついていない。劇場公開時以来の再見だったけどこんなにグダグダだったのか。

引き続き「テイク・イット・イージー」日本映画専門チャンネル録画鑑賞。
民川裕司3部作完結編。これも劇場公開時以来の再見だけど、結局大森=吉川コンビは最後まで噛み合わなかった印象。寺尾聰の警官役とか笑えるが特に必要とは思えない。無駄に豪華なキャストの中で本作がデビュー作となったつみきみほの存在感だけで成立してる作品。それだけに観る価値は有る。

銀座へ。
シネスイッチ銀座にて、ミア・ハンセン=ラブ監督「それでも私は生きていく」鑑賞。2回目。
35㎜の柔らかい光の中で生きるレア・セドゥの笑顔。哀しみも可笑しみも慈しみも愛で繋がる。全てのエピソードの繊細さと俳優たちが作り出し差し出す当たり前な佇まい。人生を肯定するミアの眼差しを感じるラストの素晴らしさに今回も泣く。邦題が凡庸だがホントに非凡な作品。

続いて国立映画アーカイブに移動。
没後10何大島渚監督特集にて「儀式」鑑賞。
冠婚葬祭や家父長制を通じて日本の戦後民主主義を渚なりに総括した25年目のオレなりの戦後史。主人公の何も出来ない屈折が生み出す捻れたエナジー。生き埋めにされた心の歪み。佐藤慶の老害ぶり、小山明子の妖しさ、中村敦夫の冷静な狂気を戸田重昌の美術に閉じ込めた、モノローグが鬱陶しいコミカルで不気味な作品。ダイナミックな歌合戦シーンには笑う。 

5月17日
109シネマズ二子玉川にて、ジェームズ・ガン監督「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3」鑑賞。
2回目。
愛すべき落ちこぼれたちのファミリーとしての絆。その成長と旅立ちの季節。シリーズ最高の選曲で贈る鮮やかなフィナーレ。泣き所と笑い所と聴かせ所が満載でホントに何度でも観れる作品。

自宅にて、富野善幸、滝沢敏文監督「伝説巨神イデオン接触篇/発動篇」レンタル鑑賞。
長年見逃してたシリーズ。多過ぎる登場人物たちのしっかりとしたキャラ付けと振り分け、争いの愚かさと残酷さの描写の容赦無さとか見どころ満載だけど、あの乱暴な終わり方は雑だった。神話的なスケールはあるけどもうちょっと違うアプローチが出来たような気もする。

国立代々木競技場第1体育館にて開催「ももいろクローバーZ十五周年記念ライブ代々木無限大記念日」
ライブ配信鑑賞。 
練りに練られた凄いセトリと会場の凄い熱気。iPhoneで観てたが携帯が燃えるかもと心配する熱さが伝わってきて涙を禁じ得なかった。ももクロとモモノフの熱さだけで作られた様なシンプルで素晴らしいステージだった。

5月19日
アグニェシュカ・スモチンスカ監督「ゆれる人魚」レンタル鑑賞
シルバーとゴールデン、2人の人魚姉妹が丘に上がって巻き起こす禁断のファンタジー。キュートさとグロさの按配が絶妙なミュージカル風ホラー。主演の2人は「私、オルガ・ヘプナロヴァー」にも一緒に出てたな。ポップで面白かった。

国立映画アーカイブ7F展示室にて開催中の展覧会「没後10年映画監督大島渚」へ。
映画監督としての大島の半生を貴重な資料や写真やポスターで綴る展覧会。クランクイン直前まで行きながら頓挫した「ハリウッド・ゼン」の資料とか、戸田重昌のセットデザイン図など興味深かった。

続いて地下1階ホールにて大島渚監督「絞死刑」鑑賞。
死刑執行がもしも失敗したらという、あり得ない過程から出発する想像の飛躍。忠実に再現された死刑場から屋外へ、具現から観念へと連なる映画的運動の中で、在日朝鮮人問題、死刑制度の原理的問題を炙り出して観客に直接問う。しかもそれをコミカルに描く。大胆で挑発的でユニークなシビれる展開だった。

5月21日
ヤンヨンヒ「カメラを止めて書きます」読了。
「ディアピョンヤン」「愛しきソナ」「スープとイデオロギー」の家族を見つめ続けたドキュメンタリー3部作のメイキング的な要素もある紙のドキュメンタリー。作品の背景が知れてより理解が深まり全部見直したくなるが読み物としてだけでも素晴らしく惹きつけられる一冊。

東京日仏学院にて開催中のシャンタル・アケルマン監督特集にて、「アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学」鑑賞。
ユダヤ系ニューヨーカーたちが画面に向かって語る食事と家族と哲学、そしてホロコーストの思い出。演劇的手法でコミカルに描かれたアケルマンの野外劇場。これライブ感あったので爆音上映とか野外上映でまた観たい。

日仏学院から賑やかな神楽坂上をトコトコ歩いて抜けて江戸川橋の「コ本や」へ。ここに来ないと見れないハリネズミたるぴの本「talbook3」目当て。ワンオペで奮闘してた青柳さんとも少し話してから、せっかくなので本2冊購入して帰宅。

5月23日
晴れたら空に豆まいてにて開催のJUN MIYAKE 1st&2nd Album 『June Night Love』 『Especially Sexy』Reissue LP Release Party!!へ。[出演] 三宅純 ・寺門孝之・勝沼恭子
今年2月のイベントに続き今回は2ndアルバム「Especially Sexy」のアナログ盤試聴と制作裏話を中心とした展開。
そして第二部は昨年から振り返り続けてたパリ生活完結編。無事に現在まで追いつき今後の展開に期待するだけとなった。次はどこを拠点にするのか。未来への期待値が上がったところでお開き。
今回もレア音源とレア映像とレアトーク大放出で大満足。CM音楽を多く手がけてる時期の映像集が圧巻だった。あれもこれも三宅純って感じで、特に松田龍平出演の缶コーヒーのCMは三宅演奏による「my way」が絶品で大好きだったので久々に観れて聴けて感動した。

三宅純さん、勝沼恭子さん、寺門孝之さん
三宅純さんと

5月24日
渋谷の街の全部を活用して至る所にポスターを展示した「ももクロミュージアム」に挑戦。
4時間くらいかけて何とか回り切ったと思い、帰りがけにTwitterで他の方の投稿見たら、見落とし箇所多数ありもう一度ウロウロし始めたけど足が限界で途中断念。何度も来てる渋谷分かってるつもりだったけど甘かった。もう一回探しに行かないと。果たしてコンプできるのか?

自宅にてクリスティアン・ペッツォルト監督「水を抱く女」録画鑑賞。
水の精霊ウンディーネの伝説を現代のベルリンにアップデート。建築ガイドをして地道に働きモーレツに恋して潜水夫の人形を大事にするウンディーネの健気さや可愛さとバッハの旋律に導かれる哀しい宿命。久々に観たけどやっぱり良いな。

5月26日
ヒュートラ渋谷にてシャーロット・ウェルズ監督「after sun/アフターサン」鑑賞。
かつて父親の誕生日を祝った夏休みの日々。その父と同じ年齢になった娘が記憶のカメラを再生する。映画史上最も繊細で美しくて切ないヴァカンス。A24配給だから一応押さえておくか位の気分で観たら良い意味で食らった。油断してたら大名作だった。しかも長編第1作ってこれはシャーロット要チェックだな。

そして前回見落としていた「ももクロミュージアム」のポスターを無事に発見。これで全て網羅出来たと思う。しかし展示期間終了後に剥がし忘れが有るのじゃないかと心配になる大規模なマニアックぶりだった。

ホワイトシネクイントにて、トッド・フィールド監督「TAR/ター」鑑賞。
誰も知ってる女性マエストロのターがいよいよマーラーの交響曲第5番に挑む。てっきり音楽映画かと思ったら「地獄の黙示録」だった。現代社会が孕むものをそのまま顕在化させる事の恐ろしさ。狂気の向こう側へと突き進むブランシェットの臨界点。次は是非とも爆音上映で味わってみたい。

5月27日
「ドキュメント72時間」録画鑑賞。
大阪の郵便局やってたけど、刑務所にいる友人や家族へ手紙を出す人、年金が安過ぎて暮らせないから移住手続きする人、オークション商品を発送する人とか、とにかく今の日本の悲惨さが顕在化しており辛くなった。この前の100均とかプリクラとか見ても思ったけど、ホント貧乏でしみったれた国になったよな。

「キャロル・キング/ホーム・アゲイン ライヴ・フロム・セントラルパーク1973」DVD鑑賞。
73年にセントラルパークで行われた10万人規模の伝説のフリーライブが遂に映像化。前半のピアノ弾き語り、ホーンセクションをフューチャーしたバンドサウンドによるアルバム「Fantasy」再現の2部構成。キャロルの楽曲のクオリティの高さと全盛期を捉えた貴重な映像。名曲だらけの感泣必至のライヴだった。

神奈川県民ホールにて、キッドピボット「リヴァイザー」観劇。
世界一のコリオグラファー、クリスタル・パイト率いるKIDD PIVOT待望の初来日公演。
ゴーゴリ「検察官」をベースにしたコンテ。リップシンクがコミカルな笑劇パート、それをオルタナティブに脱構築する2ndパートでツインピークス的ワンダーに導き、最終パートでゴーゴリのテキストを見事に改訂する素晴らしい展開。
気合い入れてS席で観たら字幕が近過ぎて集中出来なかった。明日は字幕無視で挑もう。

5月28日
伊丹十三監督「スーパーの女」日本映画専門チャンネル録画鑑賞。
パッとしない落ち目のスーパーを店の専務の幼馴染が救おうと奮闘するコメディ。縦社会の旧態依然とした世界を突き破る過程は現在性と汎用性があり楽しめたが、カーチェイス必要だったか。娯楽作品のルールとして伊丹はカーアクションを自分に課してたのかもしれないな。

引き続き「マルタイの女」日本映画専門チャンネル鑑賞。
殺人事件の目撃者となり警護対象となった大物女優と刑事達の奮闘の物語。いつものカーチェイスも満載だが、能天気なコメディの表層に不穏な空気が通底してる。バイオレンスのリアルさとかカルト集団による追い込みとか。結果的に伊丹の遺作となった事を考えると実に暗示的な作品。

昨日に続いて神奈川県民ホールへ。
キッドピボット「リヴァイザー」 
2回目。
本日は2階席の最前列から全体のムーブが良く見えて良かった。
なぜ今ゴーゴリの「検察官」を踊るのか。その答えではなく問いかけそのものを動きにした様な、独創的でキレのあるクリスタル・パイトの華麗なるコリオグラフィー。
全部見どころだらけの90分だが、特にあの四つ足(モンスター)が登場する場面は「来た、来た、パイト!」って感じで、クリスタルファンには堪らない名シーンだった。
念願の初KIDDPIVOT。暫くは余韻に浸るな。是非また来てほしい。

5月29日
健康診断を済ませてから、ケイズシネマにて東海林毅監督「老ナルキソス」鑑賞。
絵本作家の老人と売り専の若者との交流。ナルシスティックな嫌なジジイの先細って行く救いのない寂しい人生が、一冊の絵本で反転してしまう見事な展開。映画やアートの不要であるが故の思わぬ力の発揮具合をあらためて発見させてくれる良作だったな。

5月31日
六本木ヒルズ東京シティビューにて開催中のヘザウィック・スタジオ展「共感する建築」へ。
神谷町付近に妙な建物が建設中なのが気になってたら彼らだったという事でさっそく展覧会へ。
トーマス・ヘザウィック率いるデザイン集団のプロジェクトの数々を網羅。
曲線のフォルムと緑と建物の再利用と有機的なヴォリュームで、機能性だけでなく、そこに入ってみたいという感情を動線に配した楽しい建築と、遊びたくなる椅子や引っ張りたくなるテーブルなどファニチャーも素晴らしい仕事ぶりですっかり魅了されてしまった。

帰宅後、映像の世紀バタフライエフェクト「マクナマラの誤謬」録画鑑賞。
データ重視で本質を見誤り続けケネディの死により撤退の機会を逃し、ジョンソン大統領により泥沼化したベトナム戦争で嘘をつき続けるハメになったマクナマラ国防長官の誤謬ぶり。それがエルズバーグによるペンタゴンペーパーズのリークに繋がるバタフライ的展開。今も蔓延るマクナマラ的誤謬への警鐘に唸る。

川島雄三監督「特急にっぽん」DVD鑑賞。 
獅子文六「七時間半」の映画化。東京ー大阪間の車内で繰り広げられるてんやわんやの大騒ぎ。食堂車を配した特急の車内は全てセット撮影。その美術の素晴らしさと情報量多い展開を原作同様にサクッとテンポ良く仕上げた川島の手腕が光るコメディだった。


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