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在日韓国人の僕が、本気で日本を良くするためにマイクロソフトをやめて起業した話

2024年3月、僕は日本マイクロソフトを辞めました。

そして、大手企業向けに、マイクロソフト製品の定着化支援をする事業を立ち上げました。

「マイクロソフトにいたから儲かる領域でIT事業をはじめたんでしょ」と思われがちですが、実は違います。

独立した理由は、儲けるためではなく、本気で日本をより良くしたいと思ったからです。

これまで働いてきた中で、なにか新しいツールが不足しているという場面よりも、「いまあるツールの使い方がわからない」「どこまで使えるかがわからない」とういう場面のほうが多くありました。

それならば、新しいサービスをゼロから立ち上げるよりも、日本企業で最も導入率が高いマイクロソフト製品を活用する手助けをすることが日本をより良くすると信じ、今のビジネスをはじめました。

世間で話題になるようなサービスじゃなくても、独自性はなくても、マイクロソフトを活用させることは、日本を変えるくらいの大きな価値があると本気で思っています。

そして、ITツールを通じて日本企業のポテンシャルを引き出したいと思った根底には、じぶんが在日韓国人として生まれたことが関係しています。

このnoteは在日韓国人の僕が、超人生安泰のマイクロソフトを辞めて、確実に日本のためになる事業に挑戦するまでの話です。

じぶんがマイノリティだと自覚した幼少期

僕は在日韓国人3世として日本に生まれました。父も母も、祖父も祖母も韓国人。日本に生まれていますが国籍も血筋も生粋の韓国人というわけです。

小学校からは朝鮮学校に通っていました。朝鮮学校とは在日韓国人が通う学校のことで、校内で話す言語は朝鮮語。歴史や文化、思想も朝鮮の視点で教育されます。

ここで、じぶんがマイノリティであることを自覚する出来事がいくつかありました。

そのひとつが僕が通う朝鮮学校と隣の日本の小学校とで行われた交流会でのこと。

どんなことをするんだろうとワクワクして隣の小学校に行くと、相手の小学校のスタンスは「他文化を知ろう」というものでした。

日本学校の各クラスに、朝鮮学校の生徒が2人ずつ配置され、朝鮮人がどういう考え方でどういう文化なのかを朝鮮代表として話します。

相手の小学校はひとクラス40人もいて、僕たちは2人。在日コミュニティの中では当たり前だった環境も、それが少数になれば当たり前ではなくなります。

その時に、僕は改めてじぶんは“他”であることを知りました。

ほかにも、当時は日韓関係が悪化してメディアで取り上げられたりと、韓国人として日本で生活していくことは肩身が狭いことだと少しずつ自覚するようになります。

異なる文化間で揺れるアイデンティティ

中学生までは朝鮮学校の友人と仲良く楽しく過ごしていました。

しかし、高校進学では、このまま在日コミュニティに居続けると人生の選択肢が限られてしまうと思い、日本の公立学校に進学。この選択が僕のアイデンティティの喪失を加速させます。

高校生活では、じぶんのことを知らない人に「俺、韓国人やねん」とポップな自己紹介をかまし、在日韓国人だと自己開示しなければ自己が保てないような気がしました。 

僕が在日韓国人と知った友達からは「韓国人って日本人のこと嫌いなん?笑」などと揶揄されることも。

一方、朝鮮学校の友達との関係にも変化がありました。ほとんどの人と関係が希薄になり、「お前は日本人側だもんな」などと冗談を言われてショックを受けます。

それまで仲間だと思っていた人たちからも、コミュニティの一歩外に出れば部外者のように扱われてしまう。人間関係って儚いんだなと子どもながらに思いました。

韓国人とも日本人とも言いづらいじぶんは一体何人(なにじん)で、誰のために生きて何をがんばればいいのだろう。

異なる文化をいったりきたりする中でじぶんがいかにニュートラルな存在なのかと悩みました。

「日本が好きだ」と思えた世界一周

大学では農学部に進学。じぶんは何者なのか。その問いは大学に入ってからも続きます。

学生時代は多様な価値観に触れるため様々な学生団体に所属しました。中でも、広い世界のことを知っている旅好きな人が多いコミュニティに惹かれていきます。

大学3年生のとき、漠然と社会課題を解決したいという思いから、「世界の社会課題をじぶんの目で見る」「じぶんのアイデンティティの発掘」の2つのテーマで世界一周の旅へ。

世界を見てまわる中で「じぶんのアイデンティティは日本にある」と思える瞬間がいくつもありました。例えば「どこから来たの?」「出身国の好きなところは?」と聞かれたとき、パスポートの国籍は韓国ですが自然と日本のことばかり話していました。

特に印象に残っているのは、日系ブラジル人が住む村での滞在期間。

その村では、じぶんと同じように、祖父母の代からブラジルで暮らす日系の方たちと生活をともにさせてもらいました。

彼らはいつも陽気に話をしていて、お正月には豚の丸焼きを食べるしサンバを踊る。日本の風習を大切にしつつも、文化や礼儀、仕事の仕方、考え方、流暢にブラジル語を話す姿を見ていると、彼らは“ブラジル人”だと思いました。

この経験をじぶんに置き換えてみると、彼らが生まれ育った国のことが好きであるように、国籍に関わらずじぶんも日本のことを好きといっていいんだと素直に思えたのです。

世界一周で20年ほどふわふわとしていたアイデンティティに迷いがなくなり、「じぶんは日本が好きで、せっかく仕事をして価値を出すんだったらその対象は日本がいい」と考えるようになりました。

予想外の配属でITツールの面白さを知る

日本のために何かしたい。漠然とした思いはあったものの、それを叶える手段は決まっていません。

そこで、人の意識や組織の文化を変えることに興味を持ち、新卒では人材系のコンサル会社に入社します。

人材系コンサルを学びたいと思って入社したのに、ひょんなことからIT部門に配属。予想外で配属された部署での経験が本当にじぶんを成長させてくれました。

ツールを変えるだけで働き方ってこんなに変わるんだと、ITツールに面白さを見出していったのもこの会社のときです。

顧客管理システムを変えたり、ペーパーレス化の対応をしたりと、コロナ禍も相まってありがたいことにいろんなチャレンジをさせてもらいました。

働き方が変われば、人の気持ちや考え方も前向きに変わっていく。ITツールは多くの人の働き方をより良くできるといった原体験を得ました。

色えんぴつを持て余す大手企業の課題

ITツールは日本をより良くする手段として有効かもしれないと考え、さらに専門性を高めるため、世界トップレベルのITツールを展開している日本マイクロソフトに転職します。

結論、マイクロソフトは凄まじかった。生成AIをはじめ、ローコード・ノーコードツールを使ってだれでも簡単にアプリを作ったり、業務の自動化ができる。そんな世界があることに衝撃を受けました。

ローコード・ノーコードツールを使えば、会議の日程をカレンダーに入力したら自動でメールが届く自動化フローを作れたり、じぶんたちで出退勤の管理アプリが作れたりと、いまや企業は数百万円で外注していた開発費をかけなくても社内で業務効率が上げられる時代なのです。

一方で、現場では自動化できるアプリの素晴らしさが知られていない課題にも直面しました。

営業先の多くの大手企業では、IT部門がなんとか獅子奮迅で社内DXを進めようとしているのですが、現場ユーザーのほとんどは、ローコード・ノーコードツールの存在を知らない。あるいは主体的に利用しようとしていません。

マイクロソフト製品を導入している大手企業は、有償ライセンスを追加購入しなくても自動化ツールが使えます。これを使わないのは、12色の色えんぴつを持っているのに青・橙・緑だけで絵を描いているようなものです。

大手企業は12色を自由自在に組み合わせてカラフルな絵を描ける力があるのに、その可能性を持て余している。これは本当にもったいないし、日本の生産性が大きく阻害されていると感じました。

ITツールは働く人を豊かにすると信じて

そして社会人7年目に突入したとき、色々挑戦したい領域はありましたが、マイクロソフト製品の定着化支援サービスで起業を決意します。

理由は、マイクロソフト時代に感じた日本の大きな課題が、新しいサービスやプロダクトの不足ではなく、すでに導入済みのプロダクトが最大限使われていないことだったからです。

実は今のサービスをはじめる前にも、OB・OGを再雇用できるサービスや、屋上をチルスポットとして活用できるサービス、Saas的なサービスやキャッチーなプロダクトなど、日本をより良くするための様々なアイデアを思いつきました。

が、どれもしっくりきませんでした。

そんな中、大手企業のほとんどで導入されているマイクロソフト製品を最大限活用させることができれば、日本の生産性が劇的に変わるのではないか。そしたら少ない人数で多くの成果を出せるようになり、少子高齢化や人口減が進む日本からも世界で評価される技術やイノベーションが生まれ、日本のグローバルポジションが上がっていくのではないか。そんな思いが募っていきました。

人材系コンサル時代には現場ユーザー側を経験し、マイクロソフト時代には優れたツールが使われていない課題を感じていたからこそ、定着化支援はじぶんがやるべき意義あるサービスだと思えたのです。

「手堅くてもじぶんが大きな意義を感じられる手段で勝負をしたい」と、年収も福利厚生も充実したマイクロソフトから独立し、挑戦の道を選びました。

大手企業にいま求められているサービスを

みなさんは業務中に新しいツールを使おうとしたとき、何時間も、何日もかけてその使い方を調べている。そんな経験ありませんか?

「使い方がわからない」「調べる」「わからない」「調べる」……この無駄を少なくするのが僕たちのサービスです。

株式会社Low Codeでは、大手企業向けに、社員が自立的に学び、マイクロソフト製品を活用できるようサポートしています。

特徴は、現場の人たちがツールを使えるようになるまで現場に寄り添う伴走型なところ。

全員に向けた単発の研修やeラーニングではなく、まずはモチベーションが高い少人数の社員に向けて研修を行い、使える人を少しずつ増やしていきます。

学びをアウトプットするハッカソンを実施したり、悩みや困りごとを社内で気軽に質問しあえるコミュニティづくりをしたりと、会社の状況にあわせた支援を行っています。

ちなみに、以前研修を受けてくれた55歳の女性社員が、自動化アプリを使いこなせるスキルを身に付けて「ITスキルが身についたおかげで老後も安泰だわ」と言っていたのがすごくうれしかったです(笑)

僕はマイクロソフトツールが使われていない状況を知ったとき、「今のITツールの活用状況でここまで結果を出している大手企業のサービスってすごい」と感じた一方で、「これだけのポテンシャルを秘めているのに発揮できていないのは本当にもったいない。日本企業はもっと世界で評価されるチャンスがある」とも思いました。

ITツールには、ずっと紙にスタンプを押しているような人たちが、単純作業を自動化し、生産性のある時間を増やせる可能性があります。

1人でも多くの現場ユーザーに自動化や生成AIの活用が浸透すれば、組織が変わり、会社が変わり、日本が変わる。そう信じて大手企業の方々へサービスを提供しています。

最後に:7月から新しいオフィスに移ります

おわかりいただけたでしょうか。儲けるために今のビジネスを始めたわけではないということを(笑)

まだ僕たちの挑戦は始まったばかりです。少しずつですが、現場ユーザーから「こんなことできるんだ」「こんなに便利になるんだ」と良いリアクションをいただき、「じぶんたちのサービスなら日本をより良くできるかも」という手応えを感じています。

現場ユーザーに向けたサービスで日本を変えていくためには、じぶんたちのサービスもスピード感を持って大きくしていく必要があると考えています。

7月からは、これからメンバーが増えることを想定して五反田の広いオフィスに移転します。会社としても一段とレベルアップしているこのタイミングで、一緒に働いてくれる社員を募集中です!

ITツールに興味がある人、ITスキルを身につけたい人、僕の思いに共感してくれる人など、少しでも弊社に興味がある方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。ぜひ気軽にお話ししましょう!

そして、オフィス移転に伴い、ウィッシュリストを公開しています。
色々な人が気軽に遊びにこれる楽しいオフィスにしたいので、応援の気持ちで送っていただけると社員一同よろこびます。

何卒!!!!!!(笑)


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