文徒インフォメーション Vol.40

Index------------------------------------------------------
1)【Book】新書大賞2022は小島庸平「サラ金の歴史」(中公新書)
2)【Publisher】東京創元社「重版の舞」って見てみたいと思わないか?
3)【Advertising】電通グループ、前年の過去最大赤字から最高益
4)【Digital】「TechCrunch Japan」と「エンガジェット日本版」が終了、消滅する
5)【Magazine】「週刊朝日」が創刊100周年を迎えた
6)【Marketing】サイゼリヤは広告宣伝費を一切使っていないのに、みんなが知っている
7)【Comic】紀伊國屋書店ベストセラー大賞は「呪術廻戦」
8)【TV, Radio, Movie, Music & More】新聞社のデジタル部門は、記者職の給与カット?
9)【Journalism】Qアノンが誰かわかっても、陰謀洗脳は解けないだろう
10)【Person】クィア・アイのKan(寛)がロンドン市長から祝福された
11)【Bookstore】コロナ禍、オフィス街の書店は苦戦、住宅街の書店は好調
----------------------------------------2022.2.14-2.18 Shuppanjin

1)【Book】新書大賞2022は小島庸平「サラ金の歴史」(中公新書)

◎「新書大賞2022」(中央公論新社主催)は小島庸平の「サラ金の歴史」(中公新書)に決まった。これは大いに納得できる。これに続くのは、第2位「生物はなぜ死ぬのか」小林武彦(講談社現代新書)、第3位「荘園」伊藤俊一(中公新書)、第4位「デジタル・ファシズム」堤未果(NHK出版新書)、第5位「ゲンロン戦記」東浩紀(中公新書ラクレ)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000065430.html
小山俊樹のツイート。
《今年の新書大賞が発表になりました。小島庸平『サラ金の歴史』(中公新書)が第1位!おめでとうございます  拙著『五・一五事件』が第6位を頂いてから、はや1年が経ったのですね。詳細は本日発売の中央公論3月号に掲載です。》
https://twitter.com/tkoyama3/status/1491575860717305856
「中央公論.jp」は2月10日付で「歴史的な事実と、その先にあるもの <新書大賞2022>大賞受賞『サラ金の歴史』小島庸平氏インタビュー」を発表している。
《個人的には、落語家の三遊亭白鳥さんに書評していただいたのが印象に残っています。落語家さんは、お金をめぐる悲喜こもごもを、笑いや芸に変える力を持っています。白鳥さんに取り上げていただいて、大げさかもしれませんが、救われたような思いがしました。》
《それから、実証史学というわけではありませんが、鶴見良行『バナナと日本人』(岩波新書)。バナナというごく身近な食べ物から、多国籍企業の巨大な影響力や、過去の日本人と世界との深い関わりが説き起こされていて、南北問題のような地球規模の問題を自分事として考えさせられました。私に農学部で農業史を専攻することを決意させた本でもあります。》
https://chuokoron.jp/shinsho-award/119211.html
「文春オンライン」は2021年4月26日付で「『多重債務者は匂いでわかる』異様な取り立て、過払い金問題…『サラ金』のリアル 三遊亭白鳥が『サラ金の歴史』(小島庸平 著)を読む」を発表している。
《コロナ禍で仕事が激減した落語家が読むには辛い本であった。しかしこんな時代を生きていくためには必要な本なのであろう。金貸しの話は落語にも沢山ある。
サラ金の歴史でまず面白いのは、19世紀末貧民窟で行われた金貸しが男の義侠心から来ているという点であろう。落語によく出てくる登場人物の兄貴分である。「大工調べ」の棟梁だ。困った弟分与太郎の面倒を見る男らしさ。そのかっこよさに憧れて金貸しになるものが大勢いた。》
https://bunshun.jp/articles/-/44980

◎「ORICON」は2月10日付で「『余命10年』原作者の小坂流加さん、自費出版の持ち込みから小説家デビュー&映画化」を公開している。
《小坂さんは静岡県三島市の出身で四姉妹の末っ子として生まれ、子どもの頃から小説を書くのが好きだったそう。第3回講談社ティーンズハート大賞では期待賞を受賞した。大学卒業後、難病を発症するが、執筆活動を続け、「余命10年」を文芸社に自費出版として持ち込んだところ、書籍化が決定。念願の小説家デビューを果たした、という経緯だ。
小説「余命10年」の初版の編集者は「重いお涙頂戴モノにはしない」という方向性で小坂さんと書籍化を進めていたという。その後、文庫化にあたり、当初本人が避けていた闘病シーンが、闘病中に加筆された。その文庫版の発売を待たずして小坂さんは旅立たれたが、彼女が物語として残そうとした思いは、本を通して多くの人に伝わり、次は映画なりの伝え方で広がっていくに違いない。》
https://www.oricon.co.jp/news/2224236/full/
現在、「余命10年」は21刷67万部。「生きてさえいれば」が10刷23万部。
https://twitter.com/BungeishaNEO/status/1490885797264117760
小坂流加が亡くなったのは自費出版してから10年後の2017年2月27日。文庫が刊行されたのは死後のことである。

◎昨年、テレビ東京を退職してフリーとなった佐久間宣行がダイヤモンド社から「佐久間宣行のずるい仕事術 僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた」を刊行することになった。発売は4月6日。お宝写真と没になった幻の企画書がNFTデジタル特典として付く特装版も限定数で発売される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000045710.html

◎読売文学賞で随筆・紀行賞を受賞した平松洋子の「父のビスコ」(小学館)を2月13日付東京新聞が書評面で取り上げた。評者の小松成美は、こう書く。
《ページをめくりながら感じたのは、著者が百年の時を生きた一家の歴史を文字にしながら重ねたであろう、自身の心の深い層を書き留める「覚悟」だった。家族を書くということ、その死と、残された者の思いを詳らかにすること、青春を振り返ること、それぞれの時代の食べ物に心を寄せた記憶をたどること。そうしたエッセーの連なりは、激情とは対極にある筆致でありながら、心の叫びだった。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/159787
「かぞくのくに」などで知られる映画監督のヤンソンヒは平松洋子の大ファンであるという。
《平松洋子 <父のビスコ> (小学館)。昔から大ファンの平松洋子さんだが、本当に素敵なエッセイで読み惚れながら癒されてる。ビスコはあの、赤い箱のビスケットのビスコ。》
https://twitter.com/yangyonghi/status/1492007080311414784
筑摩書房出身の浪曲師・玉川奈々福は泣きながら読んだそうだ。
《平松洋子著『父のビスコ』。私個人のいまの思いとあまりにシンクロして、泣かずに読めなかった。読書というより、平松さんの言葉を深く吸い込むような気持ちだった。》
https://twitter.com/nanafuku55/status/1485473766004121601
Titleの辻山良雄による紹介がステキだ。
《平松洋子さんの文章が好きなのだが、手にした瞬間、この本のテンションがいつもとは少し異なって感じられるのは、やはりご自身の「家」に関して触れているからだろうか。父の死、故郷の倉敷、食べものにまつわる記憶のこと……。少しずつ味わって読みたいエッセイ集。平松洋子『父のビスコ』(小学館)》
https://twitter.com/Title_books/status/1452924204651741188
毎日新聞も昨年12月25日付の書評面で取り上げていた。評者は日本近代文学研究者の持田叙子であった。
《食をつづる著者の文体は勢いがいい。(中略)今回はちょっと違う。多彩な料理より金平糖、コッペパン、「十円噴水ジュース」など昭和レトロな食物が主役となる。父と行ったご近所中華や母の作る祭りずし、買い物かごの蒲焼(かばやき)の匂いから親の戦争体験、ふるさと倉敷の川の流れがよみがえる。誠実な和の手仕事に魅せられるのは民藝運動の聖地に育ったゆえと気づく。》
https://mainichi.jp/articles/20211225/ddm/015/070/008000c

◎スポーツ報知は2月14日付で「米澤穂信さん、直木賞受賞しても『小説の腕磨くのに終わりはない』…『黒牢城』著者に聞く」を掲載している。
《好きな本の話をするときは饒舌だが、自身の本の話になると声が小さくなる。そこに、本と向き合う実直な心がにじむ。小説を書く合間には書店に行くという米澤さん。それは「森羅万象あらゆるものが書かれている。そして、それぞれに必要としている読者がある」と実感するためでもある。「小説は本という広い広い海の中でほんの小さな島にしか過ぎないっていうのを痛感します。それはなんというか…思い上がりを戒めることだなあと思いますね」》
https://hochi.news/articles/20220213-OHT1T51176.html?page=1

ここから先は

23,330字
デイリー・メールマガジン「文徒」はマスコミ・広告業界の契約法人にクローズドで配信されている。2013年より月〜金のデイリーで発行し続けており、2021年6月で通巻2000号を数えた。出版業界人の間ではスピーチのネタとして用いられることが多く、あまりにも多くの出版人が本誌を引用するせいで「業界全体が〝イマイ社長〟になっちゃったね」などと噂されることも。

マスコミ・広告業界の契約法人に配信されているクローズドなデイリーメールマガジン「文徒」をオープン化する試み。配信されるメールのうち、出版・…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?