文徒インフォメーション Vol.50

Index------------------------------------------------------
1)【Book】三島賞・山本賞候補作、新田次郎文学賞、日本推理作家協会賞、決まる
2)【Publisher】KADOKAWA「ニコニコ超会議2022」はリアル会場開催
3)【Advertising】吉野家〝生娘〟発言遠因に広告業界の体育会系気質?
4)【Digital】イーロン・マスク、Twitter買収ほぼ確実に
5)【Magazine】日本最大・最強雑誌「JAFメイト」も季刊に
6)【Marketing】コカ・コーラ「ジョージア」が講談社「モーニング」とコラボ
7)【Comic】手塚治虫文化賞大賞は「チ。」
8)【TV, Radio, Movie, Music & More】蓮實重彦「ショットとは何か」(講談社)と「殺し屋ネルソン」
9)【Journalism】信田さよ子の指摘「一度点いた火は消せない」
10)【Person】元「サンデー毎日」編集長山田道子「おたくには書かない」の壁
11)【Bookstore】三省堂書店神保町本店の壁に巨大なしおり
----------------------------------------2022.4.25-4.28 Shuppanjin

1)【Book】三島賞・山本賞候補作、新田次郎文学賞、日本推理作家協会賞、決まる

◎徳間書店は、第1回「次世代作家文芸賞」(カルチュア・コンビニエンス・クラブ、indent 共催)一般向けエンターテイメント小説部門で大賞を受賞した鹿ノ倉いるかの「もうこれ以上、君が消えてしまわないために」を5月13日に徳間文庫より発売する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000423.000016935.html

◎三島由紀夫賞と山本周五郎賞の候補作が決まった。
三島賞は次の通りだ。
金子薫「道化むさぼる揚羽の夢の」(新潮社)、川本直「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」(河出書房新社)、九段理江「Schoolgirl」(文芸春秋)、岡田利規「ブロッコリー・レボリューション」(「新潮」2月号)、永井みみ「ミシンと金魚」(集英社)
山本周五郎賞は次の通りだ。
吉川トリコ「余命一年、男をかう」(講談社)、葉真中顕「灼熱」(新潮社)、砂原浩太朗「黛家の兄弟」(講談社)、一穂ミチ「砂嵐に星屑」(幻冬舎)、一條次郎「チェレンコフの眠り」(新潮社)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ4P5DKBQ4PUCVL01K.html
三島賞は「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」◎、「ミシンと金魚」〇、「道化むさぼる揚羽の夢の」▲。「道化・・・」が◎なのかなあ。
山本賞は「黛家の兄弟」◎、「灼熱」〇、▲は「チェレンコフの眠り」。

◎銀座の高級クラブ「ル・ジャルダン」でナンバー1ホステスになったことのある甲賀香織の「日本水商売協会――コロナ禍の『夜の街』を支えて」を書評しているのは、集英社新書「性風俗シングルマザー」やイースト新書「セックスと障害者」の坂爪真吾である。
《著者たちは、決して突飛な主張や過激な要求をしたわけではない。声を荒げず、偏狭なイデオロギーを振りかざすことなく、ただ淡々と「納税義務を果たしている企業や人に権利を与えてほしい」という、ごく真っ当な主張をしただけだ。
風俗業がさまざまな助成から除外されていた合理的な理由は、特にない。だとすれば、必要なのは「#職業差別を許さない」とSNSで怒ることではなく、「論理的に間違っているから正せ」と、淡々と、だが確実に効果的な方法=社会と政権与党に響く方法で提言を行うことだ。》
https://www.webchikuma.jp/articles/-/2772

◎加藤茶の妻でタレントの加藤綾菜がツイートしている。
《「加トちゃんといっしょ」が。。。/重版決まりました/本当に感謝でいっぱいです。
大号泣しました。などのメッセージ/嬉しいレビューコメントなど。/ありがとうございます/胸がいっぱいです。》
https://twitter.com/katoayana0412/status/1517362792092737536
井上順がツイートで話題にしている。
《グッモー 加藤綾菜さん(加トちゃんの奥様)が結婚10周年を記念して、マンガ+エッセイ本“加トちゃんといっしょ“を出版。マンガも話も上手なんだっぺ。加トちゃんと長い付き合いだが私の知らない話も“続々“登場、次の話が待ち遠しくて“続々“した。ははは。温かく、微笑ましい時間だった。是非一読》
https://twitter.com/JunInoue20/status/1510398768176594947

◎スコット・フィッツジェラルドの未完の遺作「最後の大君」が村上春樹の翻訳で中央公論新社から刊行された。
https://www.chuko.co.jp/tanko/2022/04/005502.html
毎日新聞は4月22日付で「村上春樹さん単独インタビュー(前編)『希求する心』掘り起こしたい」(大井浩一、関雄輔)を掲載している。
《不況時代のアメリカで流行したものは三つあって、(作家の)アーネスト・ヘミングウェーと(ダンサー・歌手の)フレッド・アステアとコミュニズムです。フレッド・アステアの場合、人々が彼の踊りを見ている間は生活の惨めさを忘れていられた。アーネスト・ヘミングウェーは、好景気だった20年代の華やかなものを取り払って、短い簡潔な文章で物語を作っていく力強さで文学をリードしていった。そしてコミュニズムが力を持っていきます。その30年代はフィッツジェラルドにとっては不遇な時代だった。書くものはあまり評価されなくなるし、経済的にも行き詰まっていくし。でも、「最後の大君」を書き上げることによって、もし元気であれば彼はまた復活できたと思うんですよ。》
https://mainichi.jp/articles/20220422/k00/00m/040/159000c
同紙4月23日付「村上春樹さんインタビュー(後編)『戦争をやめさせる』音楽に心託す」を掲載している。村上春樹はロシアのウクライナ侵攻後、ラジオ「村上RADIO」(TOKYO FMなど全国38局)で特別番組「戦争をやめさせるための音楽」を放送した。村上は次のように語っている。
《僕が思ったのはこういうことです。テレビのコメンテーターもそうだけど、みんな意見を言いますよね、これがいい、これが悪い、これが正しい、これが正しくないと。僕はそういうのは言いたくなかった。だから音楽に託して、こういう音楽です、と内容を紹介して、音楽をかけて、僕自身の意見は言わなかったけど、それがかえって良かったんじゃないかなと思うんです。
僕はコメンテーターとか評論家じゃないから、直接的なことはなるべく言いたくない。何かに託することが大事だと思っています。何か意見を言うからには責任を取らないといけない。責任を取るというのはすごく時間と労力を要することです。もちろん、時間と労力を要してもいいと思えばやるんだろうけど、僕は小説も書かないといけないし、なかなかそこまではできないから、何かに心を託するという形でやるしかないんですね。》
https://mainichi.jp/articles/20220422/k00/00m/040/228000c

◎4月23日付毎日新聞の書評面「今週の本棚」は井上荒野の「生皮 あるセクシャルハラスメントの光景」を取り上げている。評者の角田光代は、次のように書いている。
《読みながら私がもっともおそれおののいたのは、ここに描かれるだれの声も想念も、私に理解できたことだ。なぜ告発までに七年を要したのかということも、同時に何が悪いのかわからない月島の気持ちすらも。共感というのではなく、それぞれの事実のありように納得させられてしまう。それこそがこの小説の企みなのかもしれない。なぜならこれらのどの声も想念も、理解できないことのほうがおそろしいように思えてくるからだ。月島を闇雲に糾弾するだけでは、世のなかは変わらないと思うからだ。》
https://mainichi.jp/articles/20220423/ddm/015/070/024000c
「小説トリッパー&朝日新聞出版文芸」がこの書評を絶賛している。
《本日4月23日付の毎日新聞「今週の本棚」で、角田光代さんに『生皮』(井上荒野著)について書評いただきました。担当者であることは措くとして、角田さんの鮮やかな「読み」に、久しぶりに書評を読んで泣きました。ぜひご一読を!》
https://twitter.com/tripper_asahi/status/1517686611684651008

◎新田次郎文学賞は玉岡かおる「帆神 北前船を馳せた男・工楽松右衛門」(新潮社)に決まった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000537.000047877.html
玉岡は能の原作・台本にも挑戦している。神戸新聞NEXTは4月17日付で「玉岡かおるさん初の能作品 コロナ禍重ね、疫病流行の時代を舞台に 海の女神テーマに希望表現」を掲載している。
《兵庫県三木市出身の作家・玉岡かおるさん=同県加古川市=が初めて能の原作・台本を手掛けた新作「媽祖(まそ)」が完成し、お披露目された。海の女神をテーマにし、片山九郎右衛門、野村萬斎といった日本を代表する能楽師と狂言師らが神々の役などで出演。コロナ禍と重ね、疫病が流行していた天平時代に舞台を設定した。》
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202204/0015226803.shtml

◎長野日報は4月26日付で「新成人の節目に一冊 諏訪市が本贈る新事業」を掲載している。
《諏訪市は民法改正で4月から成人年齢が18歳に引き下げられたことを受け、同市ゆかりの岩波書店(東京)が発行する岩波新書か岩波ジュニア新書から1冊を新成人に贈るブックプレゼント事業「種まくブック」を始める。岩波書店の協力を得て、読書を通じて知識や知恵の「種」をまき、未来を開く力を育んでもらう新規事業。初年度は18歳と19歳、20歳の計約1300人を対象とし、今月末にも案内通知を発送する。》
http://www.nagano-np.co.jp/articles/92789

◎日本推理作家協会賞が決まった。
長編および連作短編集部門は芦辺拓の「大鞠家殺人事件」(東京創元社)、短編部門は逸木裕の「スケーターズ・ワルツ」(「小説 野性時代」2021年2月号)と大山誠一郎の「時計屋探偵と二律背反のアリバイ」(「Webジェイ・ノベル」21年10月配信)、評論・研究部門は小森収の「短編ミステリの二百年1~6」(東京創元社)。
https://twitter.com/mwjsince1947/status/1518515159173517314
https://twitter.com/mwjsince1947/status/1518515161845276672
https://twitter.com/mwjsince1947/status/1518515164403802112
https://twitter.com/mwjsince1947/status/1518515166945505280

◎「冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間」がアリス館牧新社から刊行されて50年が経つ。現在の版元は岩波書店。朝日新聞デジタルは4月27日付で「脇役だったガンバが主人公になったわけ 『冒険者たち』50周年」(聞き手・石川春菜)を掲載している。著者の斎藤惇夫は福音館書店の編集者で取締役までつとめた。斎藤は「冒険者たち」について次のように語っている。
《ガンバは、「俺やっちゃうぜ」なんてかっこよく言いながらも、本当はやりたくなかったり、かっこわるかったり。でも、何かをせずにはいられない。
背景には、20歳の時の60年安保闘争の経験もあります。何度立ち向かってもかなわない敵に対して戦い、敗れた経験です。物語の冒頭、ガンバが今の生活に満足していると自分に言い聞かせているのも、共に戦った仲間たちが「企業戦士」となっていくことにやりきれない思いがありながら、編集者として働いていた当時の自分に重なります。》
https://digital.asahi.com/articles/ASQ4T6QZ7Q4MUTFL016.html

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デイリー・メールマガジン「文徒」はマスコミ・広告業界の契約法人にクローズドで配信されている。2013年より月〜金のデイリーで発行し続けており、2021年6月で通巻2000号を数えた。出版業界人の間ではスピーチのネタとして用いられることが多く、あまりにも多くの出版人が本誌を引用するせいで「業界全体が〝イマイ社長〟になっちゃったね」などと噂されることも。

マスコミ・広告業界の契約法人に配信されているクローズドなデイリーメールマガジン「文徒」をオープン化する試み。配信されるメールのうち、出版・…

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