文徒ジャーナル Vol.48

Index------------------------------------------------------
1)日経に掲載された比村奇石「月曜日のたわわ」講談社全面広告が炎上!
2)藤子不二雄Aが88歳で逝去
3)装丁家・菊地信義が3月28日に亡くなっていた
4)朝日新聞・峯村健司が退職寸前に現わした本性に新聞業界は唖然騒然
5)「雑貨と本gururi」立ち読み騒動!何が問題なのか?
6)見田宗介=真木悠介が亡くなった
7)冒険小説作家のジャック・ヒギンズ死去
8)それぞれの「表現の自由」 赤松健と「表現の不自由展」
9)映画業界の性暴力・性加害に出版も立ち上がった
10)渡部直己の「子規的病牀批評序説」とハラスメント事件
----------------------------------------2022.4.11-4.15 Shuppanjin

1)日経に掲載された比村奇石「月曜日のたわわ」講談社全面広告が炎上!

「コミックナタリー」は4月4日付で「『月曜日のたわわ』全面広告が日本経済新聞に『不安を吹き飛ばし、元気になってもらうため』』」を公開している。
《ヤングマガジン(講談社)で連載中の「月曜日のたわわ」は、月曜日が憂欝な社会人に向け、豊満な体型をした女子を中心に描かれるショート作品。本日4月4日に単行本4巻が発売された。今回の新聞広告について、ヤングマガジン編集部は「4月4日は今年の新入社員が最初に迎える月曜日です。不安を吹き飛ばし、元気になってもらうために全面広告を出しました」と語っている。》
https://natalie.mu/comic/news/472548
「リアルライブ」が4月6日付で「日経新聞に掲載の広告に『時代錯誤すぎる』『大手新聞にこの広告はない』の声 “胸の大きい女子高生”漫画が物議」を発表している。
《日本経済新聞に4日に掲載された漫画『月曜日のたわわ』の全面広告が、ネット上で物議を醸している。》
《日経新聞に掲載されたのは、制服姿の主人公の女子高生が振り返った瞬間を描いたイラストの全面広告。「今週も、素敵な一週間になりますように」などと記されていた。
しかし、広告掲載後、ネット上からは「時代錯誤すぎる」「日経新聞なのに男にだけ元気になってもらいたいの?」「ターゲット層じゃない人が普段触れない情報が、公共的媒体により拒む人にまで届いてしまうことは十分問題」「多くの人が目にする大手新聞にこの広告はないでしょ…」「女子高生を性的に見てる漫画広告が日経新聞に出るのはどうなの?」といった批判の声が噴出する事態に。》
https://npn.co.jp/article/detail/200020617
「ハフポスト日本版」は4月8日付で「『月曜日のたわわ』全面広告を日経新聞が掲載。専門家が指摘する3つの問題点とは?」(金春喜)を公開している。東京工業大准教授の治部れんげがこの広告における3つの問題点を指摘している。
《1つ目は、あらゆる属性の人が読む最大手の経済新聞に掲載されたことで、「見たくない人」にも情報が届いたことだ。
「読みたい人がヤングマガジンを手に取って読むことは、今回の問題ではありません。それよりも、女性や性的な描写のある漫画を好まない男性が『見たくない表現に触れない権利』をメディアが守れなかったことが問題です」》
《2つ目の問題は、広告掲載によって「異性愛者の男性が未成年の少女を性的な対象として搾取する」という「ステレオタイプ」(世間的固定概念)を肯定し、新聞社が「社会的なお墨付きを与えた」と見られることにある。
「広告は女子高生のイラストをあえて用いることで、作品が発信しているメッセージを確信犯的に、大々的に伝えています。作品で起きているのは、女子高生への性的な虐待。男性による未成年の少女への性暴力や性加害そのものを日経新聞が肯定する構図です」》
《3つ目の問題点は、これまで「メディアと広告によってジェンダー平等を推進し有害なステレオタイプを撤廃するための世界的な取り組み」を国際機関とともに展開してきた日経新聞が、自ら「ジェンダーのステレオタイプを強化する」という矛盾に陥ってしまったことだ。》
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_624f8d37e4b066ecde03f5b7
こんなツイートが投稿されている。
《日経の全面広告を巡るハフポストの記事を書いた金春喜記者、つい先月まで日経の記者だったのか。新しい職場で書いた2つ目の記事が前の職場をぶっ叩く記事というのはなかなか痛快だ》
https://twitter.com/thesaurus1230/status/1512477982631555076
「つりがねむし」がツイートしている。
《月曜のたわわ全面広告の最大の問題は絵でも作品自体でもなく、そこから伝わってくる「月曜日は不安だけど、電車の中で胸の大きな女子高生を観賞したら元気になるよ」というメッセージだよ
こうした意識が広告などを通じて定着するほど、女子高生達は電車の中で性的な視線を警戒しなければならなくなる》
https://twitter.com/Tsurigane_mushi/status/1511868824953319428
弁護士の太田啓子も次のような連ツイを発表している。
《高校時代、毎日痴漢に遭い、友達に付添ってもらって犯人の顔を見たら気持悪くてその場で泣いてしまったと教室でも泣いてる友達がいた。体育終わって教室に戻ったら、スカートが何枚か盗まれていたこともあった。子どもを性的対象にすることはフィクションじゃなくて現実に起きてる許し難い暴力なんだよ》
《目線だけでも、見られてる方はわかるんですよじろじろ胸を見られてるとか。
大人が子どもを性的欲望の対象にすることがどれだけ子どもの尊厳を傷つけることか、社会全体の認識が甘すぎる。
ああいう広告出した出版社も載せた新聞社も社内で真剣に今後もこういうこと続けるのか考えるべきです》
《今だって、10代の痴漢被害ものすごく多くて、周りに大勢大人がいるのに誰も気づこうとも助けようともしないなかで性被害に遭っている子ども達の絶望感を他人事のように思える人達がああいうことをできるんだろうか。子どものときは声を上げられないから、子どものときに傷ついたことを忘れられない、》
《大人になった「元女の子たち」が怒るのは当然のこと。私たちは、子ども時代にどれだけ傷ついてきたことかと思う。今の子ども達も守りきれていなくて忸怩たる思いになる。》
https://twitter.com/katepanda2/status/1512591119762472964

https://twitter.com/katepanda2/status/1512593001662803969
予想されたとはいえ、三つの問題点を指摘した治部れんげも炎上している。ここでは物理学者・菊池誠のツイートを紹介しておこうか。
《治部れんげ先生は「見たくない人に情報が届いた」ことを問題の第一点にあげてるんですが、そんなのありですか?例えば僕は新聞に近藤誠や武田邦彦の本の広告が載るのなんか見たくないですよ。そういうのを各自が言って通るの?治部先生の考えはおかしいと思う》
https://twitter.com/kikumaco/status/1512798417281449984
大月隆寛も呟く。
《キ●ガイなのか?》
https://twitter.com/kingbiscuitSIU/status/1512985126371999747
「週刊女性PRIME」は4月8日付で「日経新聞の全面広告に“胸の大きな女子高生”が物議! 漫画『月曜日のたわわ』炎上も版元の一人勝ちか」を発表している。
《女子高生の胸を強調したイラストが悪い、広告を出した新聞社が悪い、フェミニストが騒ぎすぎだ、作品は悪くない……さまざまな意見が飛び交い燃え広がっていく。広告代理店関係者はこう話す。
「漫画の版元はお堅い日経新聞であえてこのような全面広告を出すんですから、“炎上”狙いもあったと思います。でもここまでいろんな視点の意見が出て、盛り上がるとは予想していなかったはず」
元気になったのは、漫画の版元である出版社ということなのかもしれない。》
https://www.jprime.jp/articles/-/23691
今回の炎上を通じて「月曜日のたわわ」の作者である比村奇石が2012年1月8日に投稿した差別ツイートが発掘された。
《中国人が韓国で日本大使館に火炎瓶を投げた。ははっわけわかめ。祖母が日本軍向けの戦地売春婦だったからだそうです。それはそれは、お国の為にご苦労様でしたとお伝え下さい。ネッシーツチノコセイドレイ!ネッシー、ツチノコ、セイドレイ!!ヒャッハー!!!》
https://twitter.com/Strangestone/status/155856044122312705
「ふぎさやか」の引用ツイートで私はその存在を知った。
《『月曜日のたわわ』の作者である比村奇石氏は明確に、日本軍による性奴隷扱いを受けた人々を馬鹿にしています。このような人間が描いた作品が、女子高生を性搾取する内容であったのは必然と言っていいかもしれません。》
https://twitter.com/maomaoshitai/status/1511637989751148545

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