文徒ジャーナル Vol.32

Index------------------------------------------------------
1)豊崎由美が「けんご」をツイッターで批判し大炎上!謝罪する破目に!
2)なかにし礼の、あの特攻帰りの兄の娘が……これ「サンデー毎日」の大スクープ!
3)「BARレモン・ハート」古谷三敏が亡くなる
4)「Dappi」裁判が始まる!被告は出廷せず!
5)そこのけ!そこのけ!百田無双のお通りだ!!
6)豊崎由美の延焼がつづいている!
7)淀川美代子の訃報に驚く!女性誌の歴史に終止符が打たれた?
8)講談社「なかよし」連載作家が強制わいせつで連載終了!
9)講談社「なかよし」作者わいせつ事件、なぜ発覚しても連載は続いたのか?
10)講談社「別冊フレンド」急激品薄は人災ではないのか?
11)日販によるけんご大賞が発表された
----------------------------------------2021.12.13-12.17 Shuppanjin

1)豊崎由美が「けんご」をツイッターで批判し大炎上!謝罪する破目に!

「文学賞メッタ斬り!」(パルコ)で文学業界の外部から文学に殴り込みをかけた豊崎由美だが、その豊崎がこういうツイートをする時代になったということだろう。12月9日のことであった。豊崎由美はツイッターのアカウントにわざわざ「≒とよ婆」と記している。
《正直な気持ちを書きます。わたしはTikTokみたいなもんで本を紹介して、そんな杜撰な紹介で本が売れたからって、だからどうしたとしか思いませんね。そんなのは一時の嵐。一時の嵐に翻弄されるのは馬鹿馬鹿しくないですか?
あの人、書評書けるんですか?》
https://twitter.com/toyozakishatyou/status/1468943010885152773
そして、豊崎は、こうつづけた。
《ま、同じようなことは「本屋大賞」にも思ったりするんですが。》
https://twitter.com/toyozakishatyou/status/1468947545041031170
豊崎由美が最近、話題になっている「けんご」を念頭にツイートしていることは間違いあるまい。12月1日付毎日新聞で「動画クリエーター・けんごさん 小説紹介30秒、中高生が注目 古い作品も続々重版」と紹介された「けんご」である。「けんご」はこの段階で豊崎由美のツイートを知っていたのかどうか、12月10日、TikTokの投稿を休むとツイートした。恐らく、豊崎のツイートを踏まえての投稿である。
《TikTokの投稿をお休みさせていただきます。各方面で様々な企画等控えているのに、本当に申し訳ないです。
僕はTikTokを仕事にしてません。PR動画を1本も上げたことないです。純粋に楽しかったのですが、これからは楽しめそうにありません。
動画も含めて、Instagramでの小説紹介は続けていきます。》
《ちなみに、夏頃から活動に対しての批判的なDMが数多く寄せられてました。どうでもいいと黙っていたのですが、もうめんどくさいです。
執筆活動とInstagramでの紹介活動は今まで通り、楽しんでいきます。
メンタルは鬼強い自信あるので、精神面は気にしないでください。》
https://twitter.com/kengo_book/status/1469273147627421697
https://twitter.com/kengo_book/status/1469273212009971721
その後、「けんご」は翌12月11日付で豊崎をリツイートし、豊崎に正面から応答している。
《書けません。僕はただの読書好きです。
書けないですが、多くの方にこの素敵な一冊を知ってもらいたいという気持ちは誰にも負けないくらい強いです。
読書をしたことない方が僕の紹介を観て「この作品、最高でした」「小説って面白いですね」と言ってくれることがどれだけ幸せなことか知ってますか?》
https://twitter.com/kengo_book/status/1469340811511087112
ミステリ作家の太田忠司が豊崎をリツイートしている。
《豊崎さんの書評家としての経歴と技量には敬意を抱いてますが、どうして本の紹介をするのに媒体とか手法とかに優劣をつけるの理解できないし、書評できない人に本を薦める資格がないかのような物言いにも疑問を感じます。》
https://twitter.com/tadashi_ohta/status/1469296579840720896
医師で、小説家の知念実希人もリツイートしている。
《読書というのは最高の娯楽の一つです。
本にどのような関わるかに貴賤はなどありません。
Tiktokでの小説紹介は決して『杜撰』などではありません。
様々な試行錯誤をして動画編集し、多くの層に小説の楽しさを伝えて下さっています。 
出版業界の末席にいる者として、心から感謝しています。》
https://twitter.com/MIKITO_777/status/1469264085191897089
次々にリツイートが投稿され、豊崎由美が炎上した。
SF作家・藤井太洋のリツイート。
《豊崎さんはじめ、書評で本に関わってくださる方々の活動は尊敬していますが、それと同時にYouTubeやTikTokで書籍を紹介してくださる方々の活動も私はありがたく思っています。
著者としては良い評も気軽に触れられる紹介も、少数でも出せることも、大いに売れることも、それぞれ違う嬉しさがあります。》
https://twitter.com/t_trace/status/1469517456826077184
どうも豊崎由美には分の悪いツイートが多数を占めている。
最近、この名前を見ることが多くなった飯田一史のツイート。
《書評って何かの特集記事以外だとほとんど新刊しか扱えないというクソみたいな慣例があるけどTikTokの本紹介動画はPRを除けば新刊に限らず準新作、旧作を取り上げても受け手は気にしない。既刊本が動くきっかけをつくった点ではすでに実績ベースで書評よりも出版業界に貢献してると思いますけどね》
https://twitter.com/cattower/status/1469418462347145216
いつの間にか文学の内部に居場所を見つけた豊崎由美は、それゆえに「新刊しか扱えないというクソみたいな慣例」から自由になれないでいるともいえるのかもしれない。
飯田一史は「YAHOO!ニュース」に12月11日付で寄稿している「書評家が本紹介TikTokerけんごをくさし、けんごが活動休止を決めた件は出版業界にとって大損害」で、こう書いている。
《かつて、一部の文芸評論家は書評家に対して「長い批評も書けないくせに」と揶揄的に見ていたが(今もいるのかもしれない)、そうやって下に見られた書評家が今度はTikTokerを下に見るという不毛の再生産は嘆かわしい。それぞれ役割が違うし、それぞれに求める人がいる。自分の仕事に自負を持つのは当然のことだが、それをもってほかの人間をバカにするのはどうかと思う。
けんごをはじめとする本紹介TikToker、あるいはYouTuberには、批判や無理解を気にせず動画視聴者のほうを向いて引き続き取り組んでもらえればと切に願う。》
https://news.yahoo.co.jp/byline/iidaichishi/20211211-00272115
児童文学作家・村山早紀のツイート。
《ところで、いま書評関係でゴタゴタしてる件ですが、私はもちろん、どんな場所で本を紹介するひとがいても、それは素敵な喜ばしいことだし、紹介されるのが自分の本でなくても、それをきっかけに本の話題で盛り上がるなら楽しくて良いよね、というスタンスです。ましてや時代の最先端の場所ならば。》
https://twitter.com/nekoko24/status/1469406623756328960
「文学賞メッタ斬り!」シリーズで豊崎由美のパートナーをつとめつづけた大森望もリツイートしている。
《TikTokで本を紹介するのだって書評でしょう。文字で書く書評より、リーチする潜在的読者の数がはるかに多いので、TikTokで影響力のある書評ができる人のことはたいへんうらやましく思います。才能と努力の賜物。自分でもやってみたいと思って検討したけど、とても無理だと思ってあきらめました。》
《高2の長女も字で書いた書評は全然読まないけどTikTokは毎日見てる。数カ月前、
「本の紹介とかも見るの?」
「見る見る。そうだ、TikTokで見て、読みたい本があるんだよ」
「なんて本?」
「タイトル忘れた。字が減ってく話」
……『残像に口紅を』はこうやって売れてるんだなと実感したことでした。》
《新聞や雑誌の書評欄に載ってる書評をチェックするのはふだん本を読む人がほとんどなので、著者サイド、版元サイドにとっては、「アメトーーク」とかTikTokとかで書評されるほうがありがたいのでは。活字の書評に影響力がないと言いたいわけではなく、役割も効果も違うという話です。》
https://twitter.com/nzm/status/1469293064850374663
https://twitter.com/nzm/status/1469296029476745223
https://twitter.com/nzm/status/1469297493477588993
井上リサのツイート。
《いつか見た《古参趣味人問題》とも共通する。こういう前時代的な権威主義は出版界を衰退に導く事はあっても、出版界はもとより書店(特に地方書店)を救済する事はないだろう。おまけに、「ノリ」でもいいから本を手に取ってみようとする貴重なビギナーまで本から遠ざける。》
https://twitter.com/JPN_LISA/status/1469482118078398464
「ディストピア・フィクション論」(作品社)の円堂都司昭が鋭い。
《「あの人、書評書けるんですか?」という豊崎由美氏は、ゼロ年代には「あの人、“批評”書けるんですか?」みたいないわれ方してたわけで。2010年代にTwitter文学賞やってた人が今はTikTokくさす、と。時は流れましたね……。》
https://twitter.com/endingendless/status/1469484449239015424
それでも古書店「ブックストア ウディ本舗」が豊崎由美を擁護している。
《豊崎由美氏がTikTokの書評を批判した件で、豊崎氏に理解を示す小説家が見当たらない(同じ批評家の町山智浩氏は同情していたが)ことに衝撃を受けた。
今の作家には、批評に価値を見出しその専門性に敬意を払う者がいないのか。
これは出版業界が、経済的な衰退に伴って知的にも衰退したということだ。》
https://twitter.com/woody_honpo/status/1469817894351831042
知念実希人は古書店「ブックストア ウディ本舗」の擁護をこう切って捨てている。
《我々、小説家は書評をもらう為ではなく、読者に楽しんでもらうために小説を書いています。
今回、被害にあった方は、心から小説が好きで、その魅力を広げようと頑張っていた、まさに小説家にとって『物語を届けるべき相手』でした。
その方が、謂れなき批難を浴びたことを遺憾に思うのは当然です。》
https://twitter.com/MIKITO_777/status/1469878528619728896
町山智浩は次のような連ツイを発表している。
《豊崎由美さんのTikTok書評批判は、50年くらい前に映画評論界隈で起こったことに似ている。「映画史や技術、社会や歴史の知識に基づく評論文が書けないのに雑誌に単なる感想を書き散らしテレビやラジオで感想をしゃべるだけの映画感想屋が増えた」と批判されるようになった。》
《豊崎由美さんのいらだちは50年前に「映画感想屋」をクサした映画評論家たちと同じ、職業的プライドに根ざしていると思う。「批評や評論は、作品解読に必要な研究と、それをまとめる創造的な文章力を必要とする、ひとつの作品である」という誇りだ。でも、それを意識してない人達には、まるで通じない。》
《ただ、「職業として」映画や本について書いたり話したりする人達に言っておきたいのは、断片的にいくらいいことを言い続けても「残らない」ということです。やはりそれを評論という「作品」にしないと残らない。ベンヤミンが「言ったこと」は残らないけど、彼が書いた「評論」は読まれ続けています。》
https://twitter.com/TomoMachi/status/1469724963229765635
https://twitter.com/TomoMachi/status/1469728810023088128
https://twitter.com/TomoMachi/status/1469730178855100416
こんなツイートも発見。中川淳一郎だ。「同氏」というのは知念実希人のことだが、私も中川と同じく豊崎は日本有数の書評家だと認識しているし、今回の炎上で、その評価が変わることはない。
《オレもそうです。この騒動がなかったら同氏のことは知らなかったです。そして豊崎由美さんのことは当然知ってます。日本有数の書評家としてワシは尊敬しています。そして、ワシも書評の連載はあるのですが、この人の小説は選ぶことはないです。なんで彼、ワク打たないヤツをここまで見下すんですかね》
https://twitter.com/unkotaberuno/status/1469556041478447104
それだけに次のようにツイートせざるを得なかった豊崎由美が悲しい。やはり、時代は変わったのだ。
《TikTokで感想を発している人のおかげで本がたくさん売れ、版元も著者も書店も大喜びという素敵滅法界に水をさすツイートをして、申し訳ありませんでした。
大変貴重なご意見の数々、ありがとうございます。今後の書評活動の参考にさせていただきます。》
https://twitter.com/toyozakishatyou/status/1469498032769343488
それでも豊崎は次のようにツイートすることを忘れてはいない。
《いろんな方から励まし&心配のDMをいただいており、大変ありがたいです。でも、わたしは大丈夫です。普段書評を読まない、書評が何だかわからないというタイプのお門違いの悪意をぶつけてくる輩のツイートは歯牙にもかけていませんので。》
《「TikTokの人がこれでやめたらどう責任を取る」と言われても、いろんなことを乗り越えて書評を書き続けてきた身からすると、こんなことで本の紹介をやめるなら、その程度の気持ちでやっていたんだなと思うだけのことです。》
https://twitter.com/toyozakishatyou/status/1469855654437601284
https://twitter.com/toyozakishatyou/status/1469856415661817856

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