子供の頃の些細な憧れ〜すりおろしりんご編〜

ちょっと「子供の頃の憧れ」について語らせてください。子供の頃の憧れといっても「パイロットになりたい!」とか「アイドルになりたい!」とか全然壮大なもんじゃないんです。大人になったらなんてことないのに子供の頃に何故か無性にキラキラして見えた物ってありますよね。帽子がついたどんぐりってなんであんなにテンション上がるんでしょうね。


・すりおろしりんごのお酒

両親がそこそこ酒好きだったので、幼少期にたまにリカーショップに連れられて行った。リカーショップなんて行ってもビールとか焼酎のコーナーなんか面白くない。だいたい私も食べられそうなおつまみ売り場とか、ジュース売り場をぶらぶらしていた記憶がある。

そこにひときわ目を引く飲み物が一つ。「すりおろしりんご」。

赤々と実ったりんごの絵。筆字を変形させたような独特のフォント。どう見てもジュースなのに、パッケージには「お酒」の2文字。子供の心にこんなにも訴えてくるのに、こんなにも美味しそうなのに、手が届かない。

酒屋に連れて行かれる度に、「すりおろしりんご飲みたいなぁ、でも子供だから飲めないんだもんなぁ」と売り場を横目で見ながら恨めしそうに店を出たことが思い出される。

すりおろしりんごは当時テレビでCMも放映されていた。外国人のおじさんが「リンゴ?スッター!」と言わされている。今思えばおそらくあれは説明するまでもなく元・ビートルズのリンゴ・スターだったと思うんだけど、すごい時代があったんだな。世界的なドラマーになんてしょうもないことをさせてたんだろう。だってリンゴ・スターだよ?ジャン・レノとかブルース・ウィリスがドラえもんをやらされるのも十分しょうもないけどさぁ、「りんご擦った」っていうダジャレをひたすら言わされるんだけなんだよ?!

そうこうして私は大人になった。お酒が飲める。ついでに言うとビートルズも好きになったのですりおろしりんごのCMに出ていた外国人のおじさんの偉大さがわかった。

リカーショップとか、イオンとかの片隅にある酒屋コーナーに行ったらついすりおろしりんごを探してしまう。もう私は大人になったんだぞ。手が届くんだぞ。美味しそうに誘惑されたってそれに乗れるんだぞ、さあかかってこいすりおろしりんご。酔ってやるぞ!

でも残念なことに、すりおろしりんごにお目にかかったことはない。缶チューハイのコーナーや、ジュースっぽいお酒のコーナーを探してみる。あの頃だいたいすりおろしりんごは冷蔵コーナーに並んでいたはずだ。でも、ない。どこにもいない。私の幼少期にあれほど鮮烈な憧れを残しておいていなくなってしまうなんてずるいじゃないか、すりおろしりんご。

一応Google検索してみると、2013年頃に再販された形跡がある。でも店頭に並んでいるのを見たことがないのだ、すりおろしりんご。悔しい。2013年だったら私は成人してる。飲めた。なんで。

ひょっとしたらストゼロブームの波に呑まれて、子供じみたお酒は姿を消してしまったのかもしれない。お酒の度数じゃなくて、幼少期の憧憬で酔わせて欲しかったな、そういう淡い思い出も相まって絶対美味い酒だっただろうなとしみじみ思う。宝酒造さん、もし果実感を楽しむお酒ブームみたいなのがまた来たら、是非再再販してください。お願いします。

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