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苦い思い出は、メイプルの味 

消費期限を迎えた、自宅にストックしていたパンの缶詰を開封しました。

トマト缶大の容器の中に、個包装された手のひらサイズのメイプル味デニッシュ2つ入り。
市販の袋入りの物と味も食感も全く遜色なく、形もふっくらとして美味しく頂くことが出来ました。
災害時にこのほのかな甘さを口に出来たら、さぞかし体も心も救われるだろうな、と想像しながら。

3年前にプレゼントとして貰ったこの缶詰。
毎年3月のあの日が近づくたび引き出しから手に取り、消費期限を確認した後再び引き出しの中へ仕舞うということを繰り返していました。

本来の機能を果たすことなく期限を迎え、防災食ながら普通の日に開けることが出来た、という算段なのですが今までお守り代わりにもなっていたのでありがとうという気持ちです。


思えばあの災害から、贈り物の選択肢に防災用品を入れるという風潮がより強くなった気がします。
私も昔、懐中電灯や応急処置用具一式入りの防災セットを、ビンゴの景品の一つとして選んだ記憶がありますし。

チョコレートとメイプル味をセットで頂戴したのですが、この缶どちらも動物の可愛いイラスト付きです。
私は引き出しに入れっぱなしでしたが、部屋に飾ったりして、生活の一部に防災が溶け込むことも出来るかなと思いました。

ここ数年は例の新感染症により、自宅での長期生活を想定して、防災を兼ねた非常食の備蓄を強化していたつもりでした。

が、感染症としての位置づけが5類に下がったことにより、我が家の備蓄意識も徐々に低下している今日この頃。
未開封のパスタ袋が一つ残っていたはずだと、保存缶を先日開けてみたら見事に空っぽで、冷凍食品も暫く購入していなかったなということにも気が付きました。

喉元すぎれば熱さを忘れるではありませんが、ローリングストックという概念から遠のいているな、と。

実は私、12年前の大震災の被災者の一人でした。
記憶を遡ると、当日は週末だったということもあり、自宅の冷蔵庫は調味料とお酒以外見事に何のストックもありませんでした。

しかし偶然にもその日の午前中、友達から1本の手作りパウンドケーキを頂いており、再び買い物に行けるまでそのケーキを夫と共にちょびちょび頂いたという過去があります。
その時の味もやはりメイプル。
苦い思い出の中にも、舌と日々疲労する身にそのケーキだけは優しく甘く癒してくれた、という記憶が残っています。

震災翌日、停電が続いている中早速開店してくれたお店もあったのですが、長蛇の列に並ぶ元気もなく自宅のもので何とかやり繰りというか辛抱をして過ごすこと約3日。

日曜夜に電気が復旧するまで照明も暖房も使用できず、以前結婚式会場から頂いたハート形の大きな蝋燭を引っ張り出して明かりを取り、毛布にくるまって暖を取ることで初春のまだ寒さが残る夜を過ごしました。


夫婦二人なので出来たことなのですが、子どもや高齢者がいる家庭ではそうはいきませんよね。


本当に防災意識が低い時代だったなとパンを口にした時思いだしたのですが、たまにはこうやって辛いことでも記憶から引き出し、反省する日も必要だなと振り返りました。


パンの缶詰が美味しいということも発見できたし、防災食のストックを又、少しづつでも買い揃えますか。

以上、個人的に防災意識を再確認した日、という話でした。

我が家の白文鳥おもちとの避難訓練についての記事も書いています。


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