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データ分析・活用の事例を分析する:DM販促物のパーソナライズ

分析屋の下滝です。

本記事のシリーズでは、データ分析・活用だと思われる事例を分析しながら、我々はどのような活動をデータ分析やデータの活用だと呼んでいるのかを考察していきます。

なお、データ分析の各種の枠組みを分析していくという別観点のシリーズは以下を御覧ください。

過去の事例記事の一覧はこちら。

過去の事例分析を整理してまとめた記事はこちら。




事例

今回は、DMの販促物自体にデータを活用した事例を紹介します。

具体的には以下の北海道産地直送センターの事例を参考にします。

販促企画
購入回数の引き上げと顧客とのコミュニケーションを促進する方法として「ビンゴゲーム」に着目。対象顧客の2年分の購入履歴を4つの傾向に分類し、導き出した傾向にそって、ビンゴカードの縦・横・斜めに商品を配置した。顧客がビンゴを揃えやすい購入ラインを作り、1列揃えるごとに同社商品をプレゼントすることで、最低でも年4回以上の購入促進を図った。

ターゲティング/リスティング
年3回以上購入履歴があり、ECよりもコールセンターに接点がある、主に60歳以上の顧客層

『事例で学ぶ成功するDMの極意 2024』

上記と同様の内容ですが、ネット上でも関連記事があるので紹介します。

ビンゴカードは元来、5マス×5マスの設計で、真ん中のマスは初めから開けて良いというルールです。今回のDMではその特性に着目し、対象顧客の過去2年分の購入履歴を基にした商品群を、縦・横・斜めの4列のマス目に配置することで、4回目の購入を後押しできるよう設計しました。また、1列揃えるごとに北海道産地直送センターの商品をプレゼントするという独自ルールも設定し、ビンゴへの参加意欲を高めることにも成功しました。

https://markezine.jp/article/detail/45042?p=2

上記のMarkezineの記事に実際のビンゴの画像がありますので、みてみてください。

本事例の内容としては、DMの販促物として、ビンゴのDMを送付したものとなります。以下の点に着目しました。
対象顧客の2年分の購入履歴を4つの傾向に分類したビンゴである。
顧客がビンゴを揃えやすい購入ラインを作り、1列揃えるごとに同社商品をプレゼントすることで、最低でも年4回以上の購入促進を図った。

恐らくですが、4つの種類のビンゴがあり、顧客には、この4種類のうちのどれかを送付したものだと思われます。

この事例のポイントは、単に4種類のビンゴがあるというわけではなくて、対象顧客の2年分の購入履歴というデータを使って、顧客がビンゴを揃えやすい購入ラインとなるようなものを作成したという点です。

ポイントとなる理由は、後に考察しますが、この事例でのデータの活用が、過去の記事でも議論してきたデータの役割となる以下の分類には当てはまらないためです(最も近いのは「意思決定のため」になります)。
・仮説を確認するため
・仮説をつくるため
・課題を発見・抽出するため(問題点を発見するため)
・施策の検証のため(実験結果の分析のため)
・意思決定のため

プロセスパターンによる表現

分析にあたっては、この事例がどのようなプロセスで構成されているのかに着目します。具体的には、いくつかのプロセスのパターンで構成されると考えます。

プロセスのパターンとしては、現時点は、以下を特定しています。
・集計の動機を生み出すプロセス
集計のプロセス
・調査の動機を生み出すプロセス
・調査のプロセス
・解釈の動機を生み出すプロセス
・解釈のプロセス
・知識を生み出すプロセス
 ・比較のプロセス
  ・非課題抽出プロセス
  ・課題抽出プロセス
・非課題抽出の動機を生み出すプロセス
・機会を探す動機を生み出すプロセス
・機会となる仮説を生み出すプロセス
・機会となる仮説を検証するプロセス
・想定を生み出すプロセス
・仮説を生み出すプロセス
 ・存在を期待する仮説を生み出すプロセス
 ・施策の実行結果を期待する仮説を生み出すプロセス
・仮説を検証するプロセス
 ・存在を期待する仮説を検証するプロセス
 ・施策の実行結果を期待する仮説を検証するプロセス
・疑問を生み出すプロセス
・疑問に対する仮説を生み出すプロセス
・疑問に対する検証方法を生み出すプロセス
・疑問に対する仮説を検証するプロセス
・施策案を生み出すプロセス
・施策を生み出すプロセス
・施策案を施策に具体化するプロセス
・施策の仮説を生み出すプロセス
・施策を実行するプロセス
・施策の仮説を検証するプロセス

これらのプロセスパターンの特徴の一つは、「分析」という言葉を使っていない点です。これらプロセスパターンの部分的な組み合わせのいくつかをデータ分析と我々は呼んでいるのではないか、という仮説です。

今回の事例でもこれらのプロセスで表現できるのかを確認していきます。表現できなければ、表現できるプロセスを特定し修正していきます。

事例の表現

分析する事例を再掲します。

販促企画
購入回数の引き上げと顧客とのコミュニケーションを促進する方法として「ビンゴゲーム」に着目。対象顧客の2年分の購入履歴を4つの傾向に分類し、導き出した傾向にそって、ビンゴカードの縦・横・斜めに商品を配置した。顧客がビンゴを揃えやすい購入ラインを作り、1列揃えるごとに同社商品をプレゼントすることで、最低でも年4回以上の購入促進を図った。

ターゲティング/リスティング
年3回以上購入履歴があり、ECよりもコールセンターに接点がある、主に60歳以上の顧客層

『事例で学ぶ成功するDMの極意 2024』

以下では、プロセスパターンで表現できるかどうか考えていきます。なお、実際のプロセスはもう少し複雑な過程であった可能性があります。たとえば4つの傾向ではなく、当初は6つ傾向を考えていたなどの検討があったかもしれません。

過去の記事での事例のようにプロセスパターンで表現する前に、本事例のデータ処理の過程を想定しておきます。

実際の処理過程は不明ですが、上記のような過程だと想定しました。なお、以下に関しての詳細はわかりません。
・購入履歴からどのように4つ傾向に分類したのか
・分類された各傾向からどのようにビンゴの配置を決定したのか

さて、どのようにプロセスパターンで表現するのか考えましたが、これまでの事例と違い、プロセスパターンで表現するのが難しいように思えます。

難しい理由はどこにあるのでしょうか。

「購入履歴」の要素をアウトプットするための集計のプロセスは存在します。たとえば、Aさんが年何回購入したのかは、集計しないとわかりません。

しかし、今回の事例では、その集計結果から何か知識(示唆)を得ようとしているわけではありません。

結局、答えが見つからなかったため、表現が難しいということで残念したいと思います。

考察

以下の点に関して考察します。
・データの役割

データの役割

今回の事例はデータ分析なのでしょうか。データ分析の定義自体を模索しているのが本記事の内容ですので、定義自体は扱いませんが、データの役割に関しては、過去の記事では以下のものを挙げていました。
・仮説を確認するため
・仮説をつくるため
・課題を発見・抽出するため(問題点を発見するため)
・施策の検証のため(実験結果の分析のため)
・意思決定のため

これら各項目自体の定義にも曖昧さがありますが、今回の事例がこれらの役割のどれに当てはまりそうなのかを練習として考えてみます。

仮説を確認するため
当てはまりません。データをみて、仮説を確認したわけではありません。

仮説をつくるため
当てはまりません。データをみて、仮説を作ったわけではありません。

課題を発見・抽出するため(問題点を発見するため)
当てはまりません。データから課題や問題を発見したわけではありません。

施策の検証のため(実験結果の分析のため)
当てはまりません。施策を行った結果のデータを見たわけではありません。

意思決定のため
当てはまらないように思えます。意思決定のため、というのは非常に汎用的な言葉であるため、この言葉の意味を明確にする必要があります。ここでは意思決定は、「選択肢からの選択である」と定義しておきます。今回の事例では、何かを選択したわけではありません。

では何のためにデータを使ったのか
この問いには、データを使わないとしたらなら何が困るか、という視点から考えるのが良いかもしれません。

購入履歴のデータ無く、ビンゴは作れるでしょうか? 1種類のビンゴの種類であれば作れます。4種類のビンゴはどうでしょうか? 作れます。ただし、どの顧客にどのビンゴが適しているのかはわかりません。単にランダムにビンゴが割り振られるだけになります。

そのように考えるとランダムではない何かの概念が要求されそうです。ここでは、それはパーソナライズと言えるかもしれません。

ここでのパーソナライズは、個々の顧客に適した何かを作る、と表現できるかもしれません。適しているかどうかは、何らかの基準で行われます。

パーソナライズの構成要素として以下を考えました。
・顧客
・顧客に関するデータ
・パーソナライズされる何か

何らかの基準の要素も必要だと思いますが、うまく表現できませんでした。

このパーソナライズのモデルに基づく例は次のようなものです。
・顧客:任意
・顧客に関するデータ:体格のデータ
・パーソナライズされる何か:オーダーメイドのスーツ

この例は、カスタマイズの側面もあるかもしれません。

続いての例です。
・顧客:任意
・顧客に関するデータ:過去の視聴履歴
・パーソナライズされる何か:オススメの映画を表示する

今回の事例への当てはめです。
・顧客:任意
・顧客に関するデータ:過去の購入履歴
・パーソナライズされる何か:顧客がビンゴを揃えやすい購入ラインとなっているビンゴ

では、パーソナライズするため、というのがデータの役割としてよさそうでしょうか。少し抽象度が低いように思えました。抽象度を高めて考えてみましょう。

各要素を一般化しました。「何らかの対象」から得られる「何らかの対象のデータ」をもとに「何か」を作るという関係になりそうです。一般化しすぎでしょうか。

このモデルをもとに、パーソナライズ以外のいくつか例を考えてみましょう。

・何らかの対象:システム
・何らかの対象のデータ:システムの稼働状況がわかるデータ
・何らかのもの:システムの異常を検知するモデル

対象は人である必要はなく、システムでもありえるとしました。

また、データから作られたものが、そのシステムにとってなにか望ましいものというニュアンスがなくなっていると言えそうです。

・何らかの対象:受験者
・何らかの対象のデータ:試験の点数
・何らかのもの:合格・不合格通知書

この例はどうでしょう。パーソナライズではないと思いますが、説明がうまくできません。

モデルとのあてはまり具合をどのように評価すればいいでしょうか。この点に関しては今後の課題にしたいと思います。

また、この程度までの一般化をすると、冒頭で議論したデータの役割自体に当てはまるものもあるかもしれません。
・仮説を確認するため
・仮説をつくるため
・課題を発見・抽出するため(問題点を発見するため)
・施策の検証のため(実験結果の分析のため)
・意思決定のため

たとえば、「仮説をつくるため」です。これらに関する関係性の分析は、また別の機会に行いたいと思います。

まとめ

今回は、DMの販促物として、ビンゴを作成するために、購買データを使う事例をみました。

今回の事例は、これまでの事例のようにプロセスパターンで表現することが難しいのではないかという結果になりました。難しい理由は分析しきれませんでしたが、機会があればチャレンジしたいと思います。

次回は、商品企画のために、アパレルショップでの試着前のデータを収集する事例をみます。

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