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ヘルスデータサイエンスにおけるプロジェクトの考え方

分析屋の藤島です。
前回、ヘルスデータサイエンスとは?という記事を書きました。

今回はヘルスデータサイエンスにおけるプロジェクトの考え方ということをテーマに調べ、例を考えてまとめました。
他の分野のプロジェクトでも共通していることがあるかと思うので、ぜひ参考にしてみてください!


1.医学系研究について

厚労省が作成した【人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針】によると、医学系研究について次のように定義されています。

人を対象として、

  1. 傷病の成因(健康に関する様々な事象の頻度および分布並びにそれらに影響を与える要因を含む)の理解

  2. 病態の理解

  3. 傷病の予防方法の改善又は有効性の検証

  4. 医療における診断方法および治療方法の改善または有効性の検証を通じて、国民の健康の保持増進又は患者の傷病からの回復もしくは生活の質の向上に資する知識を得ること

上記の定義の例は以下のようになります。

  1. 傷病の成因の理解
    喫煙と肺がんの関連性や、遺伝子と特定の疾患の発症リスクの関係性

  2. 病態の理解
    アルツハイマーやがんといった病気が身体に及ぼす影響

  3. 傷病の予防方法の改善又は有効性の検証
    感染症に対するワクチンの開発や予防方法

  4. 医療における診断方法および治療方法の改善又は有効性の検証
    MRIやCTなどの画像診断技術の精度向上や、新薬開発

また、医学系研究には探索的側面と検証的側面の2つの側面があります。
探索的側面は、研究テーマや意義の妥当性を評価し、新たな知見を見出すことを目的としています。
一方で検証的な医学系研究は、既存の仮説や理論を強固な根拠とすることを目的としています。

臨床試験を例に考えてみましょう。
臨床試験の第Ⅰ相試験では初めて人に医薬品を投与するため、医薬品の有効性や安全性を調べるため、第Ⅰ相試験は探索的な試験といえると思います。

その一方で臨床試験の第Ⅱ・Ⅲ相試験では、医薬品を投与することで有効性や安全性を検証し、安全かつ有効である根拠を得る段階なので、第Ⅱ・Ⅲ相試験は検証的な試験といえると思います。

【参考URL】
https://www.mhlw.go.jp/content/001077424.pdf


2.問題解決について

問題解決のプロセスとして有名な「As is / to be フレームワーク」をご存知でしょうか。
As is/to beフレームワークは、現状(As is)と理想的な将来の状態(To be)とのギャップが問題だと定義されています。

ここでいう理想と現状は下記の通りです。

  • 現状:実際の姿、望まれない状態、予期しないこと

  • 理想:あるべき姿、望ましい状態、期待されること

iPS細胞を例に考えてみましょう。

  • 現状

    • iPS細胞技術は研究の段階であり、臨床応用は限られている。

    • iPS細胞の作製には複雑なプロセスが必要であり、効率が低い。

    • iPS細胞の実用に向けた安全性や有効性について、まだ確実な情報が不足している。

  • 理想

    • iPS細胞技術が臨床医療の現場で広く利用され、患者の治療や再生医療に貢献する。

    • iPS細胞の作製プロセスが効率的であり、大量の細胞が迅速に作製できるようになる。

    • iPS細胞の実用に向けた安全性や有効性が確実に確保され、患者に安全で有効な治療法が提供される。

上記を踏まえると、例えばiPS細胞の作製プロセスについて、「iPS細胞の作製プロセスの効率化」という課題が挙げられるのではないでしょうか。
またiPS細胞の実用化について、「iPS細胞の実用に向けた安全性や有効性の確保」という課題が挙げられるのではないでしょうか。

課題が明確になれば、次に行うのは課題を解決するための「方法」を「仮説」として定義することです。
例えば「iPS細胞の作製プロセスの効率化」という課題を解決するための「仮説」としては、「iPS細胞の作製にかかる時間を短縮し、効率よく作製できるようになることで、大量のiPS細胞を効率よく作製できるようになる」というのが仮説になると思います。

この仮説が立てられたら、仮説の確からしさを検証するために、適切にデータ収集を行い、データに基づき評価を行う段階になります。
例えば「iPS細胞の作製にかかる時間を短縮し、効率よく作製できるようになることで、大量のiPS細胞を効率よく作製できるようになる」という仮説に対して、仮説の確からしさを検証するには以下のことが行われると考えられます。

  1. 実験でデータの収集
    バイオテクノロジーを用いてiPS細胞の作製プロセスを効率化するための実験を行い、データを収集する。

  2. データ解析
    1.で集めた実験データをもとに、どのくらいの時間でいくつ細胞が作製できたのか、そのうちiPS細胞がどのくらいの時間生存できていたのかなどを解析する

  3. 評価
    解析した結果をもとに、実現可能性や問題点などを洗い出す。

ここまでできたら、評価をもとに新たな実験を考えたり、今回収集したデータを用いて追加解析をした方が良いのか考えたりする流れになると思います。


3.最後に

今回記事として書いた「問題解決について」は、ヘルスケア分野に限らず様々な分野で使えると思うので、ぜひ活用してみてください!

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
この記事が少しでも参考になりましたら「スキ」を押していただけると幸いです!



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