データ分析・活用の事例を分析する:ECサイトデータで実店舗の品揃えを決定する
分析屋の下滝です。
本記事のシリーズでは、データ分析・活用だと思われる事例を分析しながら、我々はどのような活動をデータ分析やデータの活用だと呼んでいるのかを考察していきます。
なお、データ分析の各種の枠組みを分析していくという別観点のシリーズは以下を御覧ください。
過去の事例記事の一覧はこちら。
過去の事例分析を整理してまとめた記事はこちら。
事例
今回は、ECサイトと実店舗を両方もっている企業でのデータ活用の事例となります。ECサイトでの売上データを用いて、実店舗での品揃えを行うという事例です。
具体的には以下のOh My Glassesの事例を参考にします。
ECサイトでの購買データや商品データからは、都道府県単位で年代別・性別でどんなメガネのデザインが売れているかを把握することができます。たとえば、東京に住む20代、30代の人がどんなメガネを好んで買うのか、というのがわかります。この事例での施策は、この把握をもとに、特定の都道府県(たとえば東京)の実店舗(たとえば渋谷)での品揃えを行うというものです。たとえば、実店舗での20代、30代向けの品揃えをECサイトでの売れ筋をもとに行います。つまり、ECサイトで売れているなら実店舗の客層に合わせれば、実店舗でも売れるだろうという試みとなります。
ここでのポイントは以下です。
・既にこの施策を実施しており、成果が出ている。ポイントだとみなす理由は、初めてこの施策を実施する際は、まだ仮説であったと思われるためです。ECサイトのデータをもとに実店舗の品揃えをすれば売れるのではないかという仮説です。この点に関しては、プロセスの観点から後の節で考察します。
プロセスパターンによる表現
分析にあたっては、この事例がどのようなプロセスで構成されているのかに着目します。具体的には、いくつかのプロセスのパターンで構成されると考えます。
プロセスのパターンとしては、現時点は、以下を特定しています。
・集計の動機を生み出すプロセス
・集計のプロセス
・調査の動機を生み出すプロセス
・調査のプロセス
・解釈の動機を生み出すプロセス
・解釈のプロセス
・知識を生み出すプロセス
・比較のプロセス
・非課題抽出プロセス
・課題抽出プロセス
・非課題抽出の動機を生み出すプロセス
・機会を探す動機を生み出すプロセス
・機会となる仮説を生み出すプロセス
・機会となる仮説を検証するプロセス
・想定を生み出すプロセス
・仮説を生み出すプロセス
・存在を期待する仮説を生み出すプロセス
・施策の実行結果を期待する仮説を生み出すプロセス
・仮説を検証するプロセス
・存在を期待する仮説を検証するプロセス
・施策の実行結果を期待する仮説を検証するプロセス
・疑問を生み出すプロセス
・疑問に対する仮説を生み出すプロセス
・疑問に対する検証方法を生み出すプロセス
・疑問に対する仮説を検証するプロセス
・施策案を生み出すプロセス
・施策を生み出すプロセス
・施策案を施策に具体化するプロセス
・施策の仮説を生み出すプロセス
・施策を実行するプロセス
・施策の仮説を検証するプロセス
これらのプロセスパターンの特徴の一つは、「分析」という言葉を使っていない点です。これらプロセスパターンの部分的な組み合わせのいくつかをデータ分析と我々は呼んでいるのではないか、という仮説です。
今回の事例でもこれらのプロセスで表現できるのかを確認していきます。表現できなければ、表現できるプロセスを特定し修正していきます。
事例の表現
分析する事例を再掲します。
わかりやすい要素からプロセスで表現していきます。
まずは、以下のようなプロセス要素として解釈できると考えました。
・集計のプロセス:ECサイトでの都道府県単位で年代別・性別でどんなメガネのデザインが売れているかのデータの集計結果
・非課題抽出プロセス:東京に住む20代、30代は、メガネタイプAを好んでいる
ここで「非課題抽出プロセス」は集計結果から、比較をもとにして何らかの知識を得るプロセスです。
・比較対象1:東京に住む20代、30代のメガネタイプAの販売数
・比較対象2:東京に住む20代、30代のメガネタイプBの販売数
・知識:東京に住む20代、30代は、メガネタイプAを好んでいる
仮に、メガネタイプAが好まれていると設定しました。
ここでの注意点は以下となります。
1.個々の商品ではなく、メガネタイプというタイプだとして表しています。
2.東京で20代と30代といったように、購入者を絞り込んでいます。
3.メガネタイプAとメガネタイプBといったように、2つのタイプしかないと仮定しています。
3に関しては、比較対象を2つだけとしていますが、任意のN個としてもいいかもしれません。以下はN=3とした場合です。
・比較対象1:東京に住む20代、30代のメガネタイプAの販売数
・比較対象2:東京に住む20代、30代のメガネタイプBの販売数
・比較対象3:東京に住む20代、30代のメガネタイプCの販売数
・知識:東京に住む20代、30代は、メガネタイプAを好んでいる
Nをいくつとするのかは、メガネのタイプがいくつ存在するかで決まります。
2に関しては、どうしてこの都道県と年代で絞り込むのか(あるいは着目するのか)、といった方向づけが存在していると考えられます。ここでは、集計するには、集計には動機があると捉えます。ということで、集計に至る前のプロセスを考えてみます。以下のようなプロセス要素として解釈できると考えました。
・集計の動機を生み出すプロセス:渋谷店の品揃えをECのデータを用いて行いたいため、東京に住む20代、30代が好んでいるメガネタイプを知りたい
続いて、この「集計の動機を生み出すプロセス」へのインプットとなる要素は何になるでしょうか。これまでの事例では、仮説とすることが多かったように思えます。参考として前回の記事でのプロセスを以下に示します。
今回の事例では、仮説の要素は出てくるのでしょうか。以下のように表現できなくはありません。
ただし、ECのデータを使って実店舗の品揃えを行うのが初めてなのかどうかで微妙なニュアンスが異なるかもしれません。一度施策が成功していれば、2回目以降は再現性があるとして、あえて仮説の意識は持たないかもしれません。この点に関しては次の節で考察します。
事例としては、この後、実際の品揃えを行う施策があり、その施策結果をもってして仮説を検証するプロセスがあるとして考えて表現できますが、省略します。
考察
いくつかの考察を行います。
・施策の再現性と仮説検証継続の主観性
・データの役割
施策の再現性と仮説検証継続の主観性
今回の事例は、ECでのデータを用いて、実店舗での品揃えを決定するというものでした。ここでのビジネス観点でのポイントは、ECでのデータを用いて実店舗での品揃えを決定することが実際に売上に結びつく施策なのかが初めての場合は分からないということです。一方で、初回で成功した場合は、次回以降も成功するのではという自信が持てると考えられます。つまり、初回は仮説検証の意味合いが強く、二回目以降は弱いのではないかということです。別の言い方をすれば、再現性のある施策を発見したということです。
今回の事例では、少なくとも2つの軸での再現性が満たさせることが望まれます。
・同じ店舗内で時間軸が異なる場合の再現性:同じ店舗内で時間軸が異なっても再現性があるのかどうか。たとえば1月はうまくいったとしても2月はうまいくのかどうか。
・店舗が異なる場合の再現性:店舗が異なっても再現性があるのかどうか。たとえば渋谷店でうまくいっても、横浜(神奈川)店でうまくいくのかどうか。
以下の図では、左が初回のプロセスを、右が初回の施策が成功したとしての2回目以降のプロセスを示しています。
一方で、以下の図では、左が初回のプロセスを、右が初回の施策が成功したとしての2回目以降のプロセスを示していますが、このケースの場合は、でもまだ仮説だとして扱っています。
ここでのポイントは、どの時点で仮説検証のプロセスを打ち切るのかは、主観で決まりそうだということです。
データの役割
今回の事例はデータ分析なのでしょうか。データ分析の定義自体を模索しているのが本記事の内容ですので、定義自体は扱いませんが、データの役割に関しては、過去の記事では以下のものを挙げていました。
・仮説を確認するため
・仮説をつくるため
・課題を発見・抽出するため(問題点を発見するため)
・施策の検証のため(実験結果の分析のため)
・意思決定のため
これら各項目自体の定義にも曖昧さがありますが、今回の事例がこれらの役割のどれに当てはまりそうなのかを練習として考えてみます。
仮説を確認するため
当てはまりません。データをみて、仮説を確認したわけではありません。
仮説をつくるため
当てはまりません。データをみて、仮説を作ったわけではありません。
課題を発見・抽出するため(問題点を発見するため)
当てはまりません。データから課題や問題を発見したわけではありません。
施策の検証のため(実験結果の分析のため)
当てはまりません。施策を行った結果のデータを見たわけではありません。
意思決定のため
当てはまると思われます。ただし、意思決定のため、というのは非常に汎用的な言葉であるため、この言葉の意味を明確にする必要があります。ここでは意思決定は、選択肢からの選択であると定義しておきます。実店舗にどんな商品で品揃えするのかどうかの意思決定も選択肢からの選択であると考えられます。とすると、この意思決定をするにあたり、ECサイトのデータが関与してきます。ECで売れている商品を優先して選択するという選択基準となるためです。そういう意味では、「意思決定のため」というよりも「選択基準のため」といったほうが具体的な表現なのかもしれません。
まとめ
今回は、実店舗の品揃えのために、ECサイトでの購買データを使う事例をみました。
次回は、DM施策の施策自体の製作にデータを使う例をみます。次回はこちら。
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