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2022年映画ベスト・スリー②『リコリス・ピザ』『偶然と想像』『ケイコ 目を澄ませて』【映画レビュー】

今年は昨年より劇場に運ぶ回数が倍増。映画館で映画を見る喜び。楽しませてもらいました。

『リコリス・ピザ』

2022年にポール・トーマス・アンダーソンの新作を見られる喜びよ。

『ファントム・スレッド』、『インヒアレント・ヴァイス』、『ザ・マスター』とここ数作が難解というか見るのに気合いが要る作品だったのに対し、今作は何とも軽やか。

あまりにも瑞々しい舞台設定。
画面の右から左、左から右へと走る主人公2人の姿に惚れ惚れする。

お話としては何てことはないラブストーリーだが、明確な筋立てもなく、劇的な展開もなく進んでいく。

しかしながら、ひとつひとつのシーンがドラマティックでロマンティックで映画的としか言いようがない演出でもって楽しませてくれる。

やはり、ポール・トーマス・アンダーソンは自分にとって特別な監督なのだと改めて思った。

2022年ベスト映画本。PTAファン必携の1冊『Paul Thomas Anderson;Masterworks』


『偶然と想像』

公開は2021年12月だが、見たのは今年の2月なので入れさせてもらった。

今年見た映画のお話(脚本)の中で、一番面白かったのが今作。
これは誰が見ても面白いと思えるような1作だと思う。

濱口竜介監督は、『ドライブ・マイ・カー』のアカデミー賞作品賞ノミネートにより世間的に一躍脚光を浴びたが、ひとつハードルがあるとすれば上映時間が長いこと。

『ドライブ・マイ・カー』179分
『親密さ』255分
『ハッピーアワー』317分!

本作は121分だが、3作の短編集なので非常に見やすい。

そして、3作品とも話がめちゃくちゃ面白い。

1番目から3番目へと『偶然と想像』の偶然の部分がより濃くなっていく。話のフィクション性が高まっていく感じ。
あり得そうであり得なさそうなストーリーが進んでいき、途中、誰もが「えー」と心の中で叫んでしまうツイストが起こる。

万人におススメの1本。


『ケイコ 目を澄ませて』


直近で見た作品では群を抜いて素晴らしい作品。

聴覚障害のある女性ボクサーの実話をベースにした映画。

特に劇的なことが起こる訳でもない。主人公が通うボクシングジムの会長が病気になりジムの閉鎖を決めるくらい。

劇伴も最小限でとにかく静か。
16mmフィルムの映像もミニマム。

だが、この得も言われぬ感動は何なのだろうか。

練習する姿、ホテルでバイトをする姿、ジムのある下町の一角、電車の高架下、川沿い、弟と暮らすアパート・・・。

目を見張ることが起こっていないのに一瞬もスクリーンから目が離せない。
劇場を後にしてからも静かに余韻が残っている。

いま映画館に行くのなら、まずおススメしたい1作。

(text by President TRM)


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