【映画】「緑の夜」感想・レビュー・解説

なんともザワザワさせられる物語だった。冒頭からずっと「何かちょっと描写が欠けている」と感じるくらい、2人の関係性が謎めいたまま進んでいく。しかし、その謎めいた感じが、割と良いと言えば良い。ギリギリのラインで関わりが成立している2人のヒリヒリした感じに、なんだがグッと心を掴まれた感じがある。

ただ、後半のある時点から、一気にストーリーに置いていかれてしまった。ちょっとびっくりした。「えっ?」という感じだったし、結局最後まで観ても、なんだったのか分からない。どうしてあんな展開が実現したのか、そしてラストに主人公は一体何をしていたのか。分からない。

ただ、「ギリギリ成立しているのか、あるいはギリギリ成立していないのか分からない」という関係性を、一定のリアリティを保ちながらずっと描き続けている感じは凄いなと思うし、そのような関係性が成り立っているかのように見える主演女優2人の演技も見事だった。

2人の女が出会う。まったく見知らぬ者同士だ。出会ったのは空港の保安検査場。職員のジン・シャが、緑の髪の女に金属探知機を当てる。靴に反応が。女に脱げと命じたが、近くにいた上司が「そいつは大丈夫だ」と言う。しかし、トラブルを嫌った女は、裸足のままその場を去る。

仕事を終え、バスに乗り遅れたジン・シャに、未だ裸足のままの緑の髪の女が近づいてくる。「靴を返してよ」。ジン・シャは女を家へ連れて帰り、自分の靴を渡す。

しかしその後、2人はある計画を抱いて共に”逃亡”する。

中国人のジン・シャは、韓国人の夫と結婚したが、今は別居状態。3500万ウォンあれば、韓国の永住権が得られるため、ジン・シャは大金が欲しい。緑の髪の女のある”秘密”を使い、永住権を得ようとする。

彼女たちは、2人で「危険な夜」を乗り越えようとする……。

映像やキャラクターはとても良かった。ただ、全体的には、うーんという感じだったかなぁ。2人の関係性は「ギリギリの状態で成立している」と言えるが、本作『緑の夜』という作品も「ギリギリの状態で成立している」のかもしれない。だから、観る人によっては「良い」と感じられる可能性もある。

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