【映画】「息子の面影」感想・レビュー・解説

内容に入ろうと思います。

息子の消息が分からない。友人と国境を越えると告げたきり、連絡がないのだ。メキシコでは、若者が国境を越えようとして命を失うことが多い。母マグダレーナは、警察に相談するが、まともな対応はしてもらえない。遺体が発見された場合の照合用に血液の検体を記録してもらい、また、息子のものと思われるバッグの写真を目にする。息子かもしれない焼死体を見せてもらったが、とても判別できる状態ではなかった。
死体安置所で偶然声を掛けられた女性がこんな話をしていた。4年前にいなくなった息子を、ずっと生きていると信じていたが、少し前に、ようやく世間と同じ結論に達した。息子は死んだのだ、と。しかしその矢先、息子の遺体が見つかったと連絡がきた。死後2週間だって。死後2週間。だから、何を言われたとしても、諦めちゃダメよ。
マグダレーナは、改めて息子を探すための道程へと踏み出すことになる。そして、どうにか手に入れた僅かな手がかりを元に、遠くの村まで向かうことになる……。
というような話です。

公式HPによると、「監督もキャストもほぼ無名ながら、公開されるや世界中で称賛された映画」であるようだ。僕はそもそもドキュメンタリー映画なのかと思って観に行ったので(映画を観る前に内容などを調べないようにしている)、フィクションだったことにも驚いた。

映像は、とても綺麗だった。風景の切り取り方や、人物を映し出すショットなどなどだけからも、「寂しさ」みたいなものが滲み出るように思う。正直、状況を説明するような描写がほとんどないので、あらゆる場面で「どうしてこのような状況になっているのか」「今誰が何をしているのか」ということが上手く掴めなかったのだが、それでも、映像を観ていれば、映画全体の寂しげなトーンが色濃く伝わってくる。

ただ、個人的には、物語的に「もう少し何かあってほしい」と感じてしまった。これがドキュメンタリーであるなあそうは思わないが、フィクションであるなら、もう少し何か起こってほしい気がする。もちろん、これが「メキシコの現実」のだろうし、それこそを描きたかったのだと思うが、「物語」という点で言えば、ちょっと弱さを感じてしまった。

とはいえ、ラストの展開には正直驚かされた。なるほど、そうなるのかと。ラストの展開が描き出す現実の背景も正しく理解できているわけではないが、なんというのか、そのあまりに「絶望」しかない状況には驚かされてしまう。

どうにかして、世界がもっと穏やかであってほしいと願うばかりだ。

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