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地域で看仏連携 鹿児島も「お寺の保健室」

※文化時報2021年7月5日号掲載記事です。

 鹿児島県看護協会は6月26日、浄土真宗本願寺派の妙行寺(井上從昭住職、鹿児島市)で第1回まちの保健室=用語解説=を開いた。看護師と僧侶が協働する「看仏連携」の地域版として今後、毎月第4土曜に開催。血圧測定など簡単な健康チェックを糸口に、相談や傾聴を通じて、高齢者や子育て世代の孤立を防ぐ。(主筆 小野木康雄)

門徒以外も相談に

 来場者は本堂の受付で検温と消毒を済ませると、看護師から身長、体重、血圧、血中酸素飽和度、握力を順番に測定してもらう。その後、相談ブースへ。薬のことは薬剤師、食事のアドバイスは栄養士。そして人生相談には僧侶が乗る。

 「ついでにあれこれ聞けて良かった」「気分が明るくなった」。参加した32人からは、そんな声が聞かれた。

 訪れたのは、門徒だけではない。近くに住む今村富代子さん(77)は「自分は門徒ではないが、大丈夫か」と、何度も確認してから来たという。「運動、食事、ワクチン。尋ねたかったことを全部聞けて、安心した」と笑顔を見せた。

大規模イベントから脱却

 県看護協会はこれまで、集客が期待できる大規模なイベントに合わせてまちの保健室を開いてきた。ところが、新型コロナウイルスの影響でイベントが軒並み中止になり、昨年度は1回も開催できなかったという。

210705まちの保健室本堂

まちの保健室が行われた妙行寺本堂

 このため、大阪府看護協会が浄土宗願生寺(大阪市住吉区)などで行っているまちの保健室を参考に、お寺での開催を検討。臨済宗妙心寺派僧侶の河野秀一氏が代表を務める「看仏連携研究会」を通じ、妙行寺とつながった。

 県看護協会の田畑千穂子会長は「地域に根差した寺院コミュニティーに看護師が関わることで、生前から死後まで住民の方々を支えられる。『お寺の保健室』として、他でも広がっていけば」と期待する。

交換ノートで傾聴へ

 妙行寺は会場を貸しただけでなく、運営にも積極的に関与している。一例が、「交換ノート」と題したA5判の冊子の製作だ。

 来場者は血圧などの測定値を記録するとともに、体や心に関する質問や気になったことなどを記入。看護師や僧侶が回答を書き、これを繰り返すことで、悩みや不安を「見える化」する。

210705まちの保健室交換ノート

傾聴に役立つ交換ノート

 考案した井上孝彌副住職は「同じ担当者がつけば、回を重ねるごとに関係性ができていく。相手の変化も分かるし、より深い話を傾聴できる」と、狙いを明かす。

 新型コロナの感染防止対策も万全だ。広い本堂を開け放てば換気は十分。手指消毒や検温はもちろん、来場者がどこに何分滞在したかも記録する。県看護協会の福島寿美代・鹿児島地区理事は「対面でなければ、デリケートな悩みは打ち明けづらい。対策をしっかり行い、身近な語らいの場を守りたい」と力を込める。

 この日は実際に来場者の悩みに気付いた看護師が、井上住職に傾聴を引き継ぐ場面もあった。井上住職は「何ができるかを模索するお寺にとって、まちの保健室はとてもいいきっかけになる。お寺が乗らない手はない」と話している。
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【用語解説】まちの保健室
 学校の保健室のように、地域住民が健康などさまざまな問題を気軽に相談できる場所。図書館や公民館、ショッピングモールなどに定期的に設けられ、看護師らによる健康チェックや情報提供が行われる。病気の予防や健康の増進を目的に、日本看護協会が2001年(平成13)度から展開している。

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