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福祉仏教で聞法道場存続 作業所を併設

※文化時報2021年12月20日号の掲載記事です。

 真宗大谷派の門徒が約50年前に自費で建て、独力で毎月の聞法会を続けてきた安住荘(大阪市平野区)が、仏教を基軸とした社会福祉活動を展開するNPO法人ビハーラ21(杉野恵代表理事、同区)の手で、障害者作業所を有する聞法道場に生まれ変わる。来月13日には新体制の聞法会「安住講」もスタート。地域の中で、福祉仏教の実践活動が本格化する。(編集委員 泉英明)

 安住荘は、篤信の門徒だった内山宗一氏(故人)が1974(昭和49)年、1階を聞法道場、2階を住居として建設し、毎月の聞法会を開始。その後、子息の宗之氏が運営を引き継ぎ、一般財団法人「安住荘」として、毎月の聞法会に加え、ちぎり絵や生け花教室なども実施するなど、地域文化の一翼を担ってきた。

 ところが、宗之氏の後継者がおらず、財団法人は存続の危機にひんした。財団側は、理事で大谷派参議会の中嶋ひろみ副議長や、大谷派恩楽寺(大阪市東住吉区)僧侶の乙部大信氏ら聞法会の関係者と協議。来年3月までに建物を解体した上で聞法会を「安住講」として存続させ、恩楽寺と光源寺(同区)を会所とする計画を進めていた。

 状況が一変したのは、今年5月。中嶋副議長が、大谷派大阪教区の宗議会議員でビハーラ21の創設に尽力した清史彦・瑞興寺住職に相談し、全てが動き始めた。本部の近隣に手頃な拠点を探していたビハーラ21で引き受ける話が一気に前進。11月25日にはビハーラ21の三浦紀夫事務局長が、一般財団法人「安住荘」の代表理事に就任した。

 互いの法人の独自性は保持したまま建物を改装し、今月8日にはビハーラ21の障害者作業所が大阪市旭区から転居した。作業所は住居だった2階部分に置き、来月から始動する。聞法会は「安住講」の名を冠し、乙部氏らの協力で講師を選定しながら再スタートを切る。

 乙部氏は「聞法の場を継続したいという門徒さんの思いが実った。自身の講師としての出発点だった場所でもある。残ったのはうれしい」と喜ぶ。

 今後は、仏教と福祉を柱に、地域に開かれた存在となることを目指す。ビハーラ21の杉野代表理事は「安住荘を通じて聞法や障害者との関わりへの敷居を下げ、地域の人たちに命の大切さなどを伝えられる場にしたい」と話した。

杉野代表理事

ビハーラ21 の杉野代表理事。住居だった2階を作業所に改装した

敷居下げ、地域に開く

 篤信の門徒が建てた稀有な聞法道場が、障害者作業所と併設する全国でも珍しい施設へと生まれ変わる。キーワードは「敷居を下げる」だ。

 財団や建物の存続へ一役買った清史彦住職は、来月15日から安住荘で「親鸞入門講座」を開く。「寺ではなく、あえて安住荘で行う。聞法会は、財団の公益事業の一つ。ここに福祉の視点が加われば、地域との関わりが広がるはず」と話す。

 安住荘の三浦紀夫代表理事は「同じ建物に障害者の作業所と聞法道場が同居したことに意味がある」と力を込める。障害者や福祉に関わる人たちが仏教に触れ、聞法会で聴聞する人たちが障害者らと交流するのが理想だ。

 杉野代表理事は「年齢や性別、障害の有無に関わらず、全ての人がいて『地域』となる。仏教が生活の中心にあったかつての生活へ、戻していくきっかけとなれば」と語っている。

三浦代表理事

1階の聞法道場と安住荘の三浦代表理事
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