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もしものための話し合い 「デスカフェ」ガイド

※文化時報2021年7月15日号の掲載記事です。写真は本願寺派明覺寺(京都市下京区)の本堂で行われたデスカフェ。

 死について気軽に語り合う「デスカフェ」の普及を目指す初のガイドブック『デスカフェ・ガイド~「場」と「人」と「可能性」』が、株式会社クオリティケアから発刊された。執筆代表を務めたのは、浄土真宗本願寺派の宗門関係校、京都女子大学でデスカフェ研究を手掛ける吉川直人助教(社会福祉学・介護福祉学)。約2年間のフィールドワークを基に豊富な事例が紹介され、ヒントに富んだ一冊となっている。(安岡遥)

 デスカフェは1999年、スイスの社会学者、バーナード・クレッタズが開始。飲み物や軽食を手に、くつろぎながら死について話し合う。ルールを定めたガイドラインも作られ、約70カ国で開催されてきた。

 国内でも2010年ごろから、僧侶や葬儀関係者、医療従事者らによるデスカフェが増加した。グリーフ(悲嘆)ケアやワークショップと組み合わせた独自の形式も多く、新型コロナウイルス感染拡大以降はオンライン開催が盛んになっている。

 吉川助教は19年から、デスカフェの多様性や地域コミュニティーの構築をテーマにフィールドワークを展開してきた。昨年9月には、全国14団体が集まるオンラインイベント「デスカフェサミット」を主催。参加団体が中心となって、開催情報などを発信するポータルサイト「デスカフェ・ポータル」もオープンし、主催者間の交流が進んでいる。

 吉川助教によると、デスカフェが求められる背景には、高齢化に伴う死亡者数増加やコロナ禍による葬送儀礼の変化があるという。「多くの死、急激な死に向き合う私たちには、現状にかかわらず『もしものための話し合い』という視点が必要」と指摘する。

 「デスカフェは、死という向き合いにくいテーマを気軽に語れる貴重な機会。参加者同士で新たなコミュニティーがつくられるなど、大きな可能性を持っている」と吉川助教。「本書を通じ、参加したい人と運営したい人の双方にヒントを提供できれば」と期待を寄せる。

本・デスカフェ

死を語れば、豊かな生に

 ガイドブックに取り上げられている事例の一つが、浄土真宗本願寺派の若手僧侶による団体「ワカゾー」(霍野廣由代表)の「ワカゾー流デスカフェ Deathについてしゃべるんデス」。2015年から、主に寺院で開催している。

 参加人数は通算500人以上。カードゲームを通して世界各国の死生観を学ぶ「死生観光トランプ」や弔辞を作るワークショップなど、特色ある取り組みが話題を呼んでいる。

 昨年秋には、吉川助教が主催した「デスカフェサミット」にも参加。メディアへの掲載を機に、「参加してみたいが雰囲気が分からない」「どんなことを話し合っているのか」といった問い合わせが多く寄せられるようになったという。

 霍野代表は、「死を語ることは豊かな生につながる」と語る一方、「内容がイメージしにくく、参加に不安を覚える人も多い」と指摘。「『デスカフェ・ガイド』という参考書ができたことは大きな一歩だが、それだけでは足りない。すでに活動している私たちが、デスカフェに参加したい人や立ち上げたい人をしっかりとサポートする必要がある」と話していた。

 『デスカフェ・ガイド~「場」と「人」と「可能性」』は2420円(税込)。問い合わせはクオリティケア(03-3953-0413)。

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