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「神々と伝染病」の関わりを知る

※文化時報2020年9月26日の掲載記事です。

 神道国際学会(マイケル・パイ会長)は13日、第24回国際神道セミナー「神々と伝染病」を開催し、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」で配信した。疫病と宗教の関わりを軸に、八坂神社の野村明義禰宜(ねぎ)、大阪大学大学院の永原順子講師、東京工業大学の弓山達也教授がそれぞれのテーマで講演し、新型コロナウイルス感染拡大下の宗教の在り方を考えた。

 はじめに、野村禰宜が「祇園祭の本質」をテーマに講演した。疫病封じの祭として知られる祇園祭の本質が「水と空気の浄化」にあったとし、「医療の未発達な時代も、水と空気の重要性が経験として知られていた」と指摘した。

 その上で、人間の経済活動によって大気や海洋の汚染が進む現状を憂慮。新型コロナウイルスを「行き過ぎた経済活動に歯止めを掛ける神さまの意思」と受け止め、「祇園祭の理念を世界に広め、環境保全や世界平和につなげたい」と語った。

 続いて、永原講師が「水の中の異界~祭儀・風習にこめられた人々の祈り」の講題で講演。海から現れて疫病を予言した妖怪「アマビエ」など、海や川にまつわる怪異や風習を紹介し、水を異界として敬い恐れる日本人の自然観を示した。

 浄化や恵みの象徴とされる一方、災害や疫病の原因ともなる「水の両義性」を指摘し、「水が持つ恐ろしい面について、宗教者はどう考えるのか」「新型コロナウイルスによる社会の変化を受け、神々とどう接していくべきか」と問題提起した。

 最後に弓山教授が「国難と信仰―宗教が宗教であるために」と題して講演した。スペイン風邪流行下の大正時代、お盆や初詣が盛大に行われた事例から「『生と死をつなぐ』という宗教本来の役割が生きていたからこそ、国難の中でも行事が行われた」と見解を述べた。

 同様の例として、福島県いわき市のお盆の伝統行事「じゃんがら念仏踊り」を紹介。後継者不足に悩んでいたが、東日本大震災を契機に市民らが復興させ、新型コロナ禍でも3割以上の団体が活動を継続した。

 弓山教授は「震災で意味が見つめ直され、芸能から供養行事に生まれ変わったことで、自粛ムードの中でも実施されるようになったのではないか」と分析。

 その上で、「感染拡大により、宗教の役割が改めて問われている」と強調し「宗教にかかわる者が自ら考え、自分の言葉で発信する必要がある」と呼び掛けた。

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