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お寺こそ終活の拠点 専門家と協力、無料相談

※文化時報2020年9月2日の掲載記事です。

 終活の全てを相談できるワンストップサービスをお寺が担おうと、真言宗須磨寺派の昭和寺(神戸市須磨区)が活動を本格化させている。行政書士やファイナンシャルプランナー、遺品整理やお墓の専門家らをメンバーとし、中山戒仁住職が代表となって団体を結成。終活を「周活」と書き換え、弘法大師の縁日に当たる毎月21日に同寺で無料相談を行っている。(春尾悦子)

証しや思いを継承

 中山住職らの団体は「須磨周活連絡協議会」。人生の周囲を取り巻く大切な行事や生きてきた証し、思いを収集・整理・継承することを「周活」と位置付けた。さまざまな節目で決断して次へ進むための手伝いに、僧侶や専門家が当たるという。

 合言葉は「おもいやり」。思い立ったらまず相談▽モヤモヤ解消、元気の秘訣▽要るもの残して、後整理▽「優しさ」「想い」の再確認▽良縁繋いで想いを実現!―の頭文字を取った。

 中山住職は、在家出身の僧侶。2016年に一般社団法人「宗務ネットワーク佑想庵」を設立し、宗教法人の運営サポートのほか、日常の困り事から葬儀・法要まで、さまざまな相談に乗ってきた。須磨周活連絡協議は、この社団の活動でチームを組んだ専門家らと共に立ち上げたという。

 「お年寄りにとって、法律相談はハードルが高くて行きにくい。お参りのついでに寄れる気軽さと、門をたたけばお坊さんがいるという安心感がある」。中山住職はお寺が窓口になる利点を、そう説明する。

職員住宅を改修、檀家ゼロから

 山陽電鉄須磨寺駅から徒歩5~6分。大本山須磨寺までの参道に、昭和寺はある。寺といっても民家のようなたたずまいで、看板がなかったら見過ごしてしまいそうだ。

 それもそのはず、建物はかつて須磨寺の職員住宅として利用。家族葬に対応できるようにと荘厳を整え、須磨寺本堂に奉安していた大日如来尊像を本尊とした。鎌倉時代の作と目されるという。実際に何度か少人数の葬儀を行ったこともある。

 神戸市長田区の無住寺院から宗教法人を受け継いだ昭和寺として、須磨寺派の小池弘三管長が住職を務めていた。

 中山住職は、須磨寺派の潮音寺(須磨区)の副住職も務めており、須磨寺の法要に出仕するうち、今春、小池管長から昭和寺を任されたという。

 「寺としては、檀家ゼロからのスタート」と中山住職。社団運営のノウハウを生かしながら、須磨寺への参拝がてら気軽に立ち寄って相談してもらおうと、弘法大師の縁日を相談日とした。

昭和寺2

各分野の無料相談に応じる相談員たち。右手前が中山住職

デジタル遺品整理が課題

 8月21日に行われた無料相談のテーマは「不動産 死後手続き」。中山住職をはじめ、遺品整理・生前整理に詳しい「家じまいアドバイザー」の屋宜明彦氏、お墓と仏壇の専門家で「終活デザイナー」の松澤哲平氏ら6人が昭和寺に集結し、新型コロナウイルスの感染防止対策を講じながら相談者を待った。猛暑日とあって来訪者はごく少数だったものの、今後も毎月21日にはメンバーが待機するという。

 現代社会ならではの相談は、デジタル遺品整理。スマートフォンなどのデジタル機器やネット通販、キャッュレス決済などのID・パスワードを本人しか知らないと、死亡後の解約などに困難が伴う。

 「遺品整理の現場から、寺院や僧侶の役割が見えてくる」。中山住職は、そう語った。

 本尊の宝前に置かれたステンドグラスの灯明も、現代の事情を反映している。火を使わないで済むようにと、僧侶とステンドグラス作家が共同で制作。「入所する施設に仏壇を持っていけない」「火の始末が心配で灯明や線香を使うのが怖い」といった高齢者の悩みに応えたという。

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