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自死者は往生できるか

※文化時報2021年7月15日号の掲載記事です。

 浄土宗京都教区の布教師会(勝田良樹会長)は6月30日、大本山百萬遍知恩寺(京都市左京区)で研修会「自死者の往生について」を開催した。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、希死念慮者や自死者が増加傾向にあることを踏まえて企画。林田康順大正大学教授を講師に招き、教学的な見地から向き合い方を学んだ。

 林田教授は、自死を引き起こす直接的要因が「鬱」であると指摘。死を免れたいという思いを、つらさから逃れようとする思いが上回った結果が自死であるとした。

 その上で、「自分なりに精いっぱい頑張ってきた結果が、目の前の鬱病患者の姿。ありのままに受け止め、ひたすら寄り添う姿勢が大切」と強調。「一人一人は、仏となるべき可能性を内に備えた尊い存在。だからこそ命を粗末にしてはいけないと、浄土宗僧侶は念頭に置かなければならない」と訴えた。

 ただ、希死念慮者に命の尊さを伝えても心に響かない可能性に触れ、「自分のことを大切に思う人が存在することに気付いていただくのが大切」とも述べた。

 一方で自死遺族については、自身を責め続ける状態にあるとして、「無条件の温かいまなざしを向けるべきだ」と呼び掛けた。

 自らを殺すという破戒行為への救いの有無についても言及。「地獄・餓鬼・畜生の三悪道にあっても、阿弥陀仏の光明を見れば、安らぎを得て再び苦しみを受けることがない」と伝えた法然上人の教えに基づき、遺族の思いを乗せて回向すれば浄土往生がかなうとの見方を示した。

 さらに、往生した人が遺族の傍らに戻って導き、浄土で再会できるという教義を引き合いに、「心のつながりは決して失われないという教えは、自死遺族の大きな支えになる」と語った。

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