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【廃寺宣告】②衰退…生活に溶け込んだ信仰さえも

 ※文化時報2020年8月1日号掲載の連載記事です。写真は浄土宗永福寺が立地する山口県柳井市畑地区の集落。次回は11月19日にアップ予定です。

 地域住民の熱意で創建された寺院が、地域力の低下で荒廃を招いた事例がある。

迫られる宗教法人の解散

 JR柳井駅から約6.5㌔離れた中山間地域にある浄土宗永福寺(山口県柳井市)は、本堂は簡素だが、清潔感は保たれている。ただ、14年8カ月にわたって住職がいない。

 永福寺のある畑地区は、山あいを縫うように広がる水田の中に各戸が点在する限界集落。農業を営む人々の生活に、信仰が根付いてきた。末広彰治さん(80)は「子どもの頃は庵主さん=用語解説=がおられて、施餓鬼会の時には演芸が催された。配られる菓子が楽しみだった」と思い出す。

 かつて集落には42戸あり、それぞれの家に子どもがいた。それが10年前に20戸余りまで減少し、今では13戸になった。デイサービスに通う高齢者の独居世帯ばかりで、子どもがいる家は1戸のみ。末広さんは「10年先には、3、4戸が残るかどうか」と話す。
 
10年ほど前には、皆で出資して寺の屋根を修復した。6年前までは、関連寺院の僧侶を招いて盆の施餓鬼会を営んでいた。しかし、今では寺を支えきれなくなった。

 7月8日に浄土宗寺院問題検討委員会が同寺を訪問して行った聞き取り調査で、「今は宗教活動を行っていないのか」という質問に、住民はうなずいた。ただ、記者の問いかけに末広さんらは、

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