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お寺を元気に 富山と大分から

※文化時報2022年1月11日号の掲載記事です。

 真宗大谷派は、井波別院瑞泉寺(常本哲生輪番、富山県南砺市)と四日市別院(中西無量輪番、大分県宇佐市)で、「寺院活性化プロジェクト」を推進している。宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃事業の一環で、地域の特徴を生かして人が集まる開かれた場づくりを目指す。両別院の取り組みを先行事例として全国の寺院へ波及させたい考えで、モデルケースとなるか注目が集まる。(編集委員 泉英明)

雑貨店オープンへ

 井波別院瑞泉寺は、日本有数の木造建築である本堂と、聖徳太子をまつる太子堂を持つ。周辺地域は井波別院の再建で培われた「木彫刻のまち井波」として、2018年に文化庁の日本遺産に認定された。

 活性化の取り組みは、経済産業省の「ローカルデザイナー育成事業」として開始。全国で地域コミュニティーづくりを進める「studio-L」の協力で、地元の僧侶や地域の人々と「物語のあるおみやげづくり」を検討してきた。

 現在は、事業を寺院活性化プロジェクトで引き継ぎ、メンバーらが立ち上げた任意団体「テラまちコネクト」を中心に、絵本『井波瑞泉寺ものがたり』などを作成した。テラまちコネクト代表で、大谷派真敎寺(南砺市)の齊藤優華住職は「瑞泉寺は他地域から嫁いできた人たちには知られていない。町と寺をどのようにつなぐかを考えたい」と話す。

 昨年10月には山門前の旧売店を改装し、オーダーメイドの木彫りアクセサリー「ジュ・ジュエリー」などを販売する「テラまち雑貨店」をプレオープンさせた。4月の本格オープンに向け、月3日ほど試験的に営業。子育て中の母親らが、働きながら集まる場を目指す。

 常本輪番は「若い世代を中心に活動が広がりつつある。寺院の敷居を下げられるよう協力しながら進めたい」と語った。

東西別院が協力

 四日市別院は、江戸時代に「九州御坊」として九州の寺院を統括した歴史を持ち、東西本願寺の別院が軒を連ねる。この独特の「東西別院の甍(いらか)が並ぶ姿」は、地域の人々の原風景として親しまれる。

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東西本願寺の別院が軒を連ねる四日市別院。手前が東別院の山門=大分県宇佐市

 四日市別院のプロジェクトは昨年9月に始動。まちづくりなどを手掛ける大谷派徳満寺(滋賀県長浜市)門徒の中山郁英・企画調整局参事が携わり、地域の関係者らを集めて11月に初のワークショップを行った。

 メンバーは、市議会議員の僧侶や酒店の女性、観光協会や商店街の関係者ら約20人で、東西別院の職員も加わった。グループごとに活性化に向けたアイデアを出し合い、移動図書館の「本堂で本どう?」などの取り組みが寄せられた。年初にも実現に向けた会合を持つ。

 中西輪番は「別院報恩講(お取り越し)と、地域との関係性が薄れているのではないか」と危機感を表す。地元の原風景だった「お取り越し」の敷居が高くなっていないかという思いだ。

 別院報恩講初日の12月13日には「初逮夜のつどい」として、星野哲・立教大学社会デザイン研究所員らによるシンポジウム「その終活で大丈夫?~お寺で〝集活〟のススメ」を開き、寺院の足場である「死生観」をベースにしたつながりを模索し始めた。

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終活シンポであいさつする四日市別院の中西輪番

 また11月には、別院の山香遼書記を中心とした「坊主バー」を仏間で開催。技能実習生のベトナム人女性らも参加するなど、独自の取り組みも進んでいる。

事業を冊子化、波及へ

 宗派による四日市別院のプロジェクトは始まったばかりだが、井波別院瑞泉寺は今年6月末で宗派としての事業を終え、以後は別院独自の取り組みとして歩みを進める。宗派は、これまでの事業を取りまとめ、助成金申請やブランディングの手順などの事例を記した冊子を作成する。

 昨年11月には井波別院瑞泉寺で、プロジェクトメンバーらを対象に、地域コーディネーター研修を実施。真宗本廟(東本願寺、京都市下京区)の緑地帯を核とした地域との活性化事業「おひがしさん門前未来プロジェクト」を進める宗派職員らも参加し、全国へ波及させるための一歩を踏み出した。

 大谷派寺院活性化支援員の松田亜世・企画調整局参事は「まず寺院を開いていく。開いた先に仏教との出会いがある」と力を込める。過疎化や核家族化で進む寺離れを食い止め、新型コロナウイルスの影響を受けた寺院活性化の一助となるか、期待がかかる。

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テラまち雑貨店と井波別院瑞泉寺の常本輪番=富山県南砺市
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