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合言葉は「何もしない」

※文化時報2022年1月1日号の掲載記事です。

 何もしないのが、お寺の魅力―。臨済宗妙心寺派大本山妙心寺の塔頭(たっちゅう)・長慶院(小坂興道住職、京都市右京区)が、何もしない時間を過ごしてもらうイベント「アットテンプル(at Temple)」を月1回行っている。忙しすぎる現代社会へのアンチテーゼとして、畳敷きの本堂でひたすらくつろいでもらう。気が向けば賽銭を入れてもらうという無料のイベントだ。

 寝たり、読書にふけったり、弁当を食べたり。参加者は何をしてもいいが、何もしなくてもいい。そんな気軽さと脱力加減が売りのイベントだ。「こんな内容で人が来るのかと思ったが、毎回20人前後が参加する」と、小坂住職。中には、悩みを相談する人もいるという。

 企画したのは、京都市北区の法衣仏具店「久柳(くりゅう)」を営む昌子久晃(しょうじ・ひさてる)さん。「現代人は忙しい。時間があれば常に何かをしていて、何もしないことが難しい」。そう考えて小坂住職に持ち掛け、昨年6月に始めた。「何もしない」を合言葉にすれば、住職も何もしなくて済むので負担にならない、という思惑もあったという。

 10月29日には、初めて夕方から夜にかけて開催。参加者らは、和ろうそくの明かりの下で思い思いに過ごした。近くに住む主婦、夏原香里さんは「毎日バタバタしなければならない主婦には、静の時間が必要と感じる」と話した。

 昌子さんは、父が経営する昌慈法衣店(京都市北区)を飛び出し、9月1日に独立創業した。社会の人々に寺院を身近に感じてもらうことを目指し、自由に行動できる環境をつくろうと考えている。自分で養蚕に取り組むなど職人の技術や思いを学ぶ活動をしており、「本業でも、社会貢献につながるような商品を提供したい」と話している。

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