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得度した在宅医・岡山容子さん 大谷派奉仕団に講演

※文化時報2020年9月12日号の掲載記事です。

 真宗大谷派のビハーラ活動者が集い、聴聞=用語解説=や清掃活動を行う「東本願寺ビハーラネットワーク奉仕団」が2、3日に同朋会館で開かれた。全国から約20人が参加し、6月に大谷派僧侶となったおかやま在宅クリニック(京都市中京区)の岡山容子院長の講演「医者の私が、お坊さんになった訳」「終末期医療の実践~死ぬって怖いのでしょうか」で研鑽を積んだ。

 岡山院長は「『死んだら敗北』ではない。死はゴール」と呼び掛け、具体的に患者と接するためのノウハウを伝授。「在宅医療は『ただそばにいる』というケアが可能。五感を満足させることが大切」と、生活全体を支える在宅医療の在り方を解説した。

 また、看取りや介護を支える技術的な側面にも言及。死に直面した親族の問題行動の背景を知るために、相手の話の内容を繰り返す「反復」などで傾聴することや、普段から親族の看取りへの理解を進め、「別れ」を意識して過ごしてもらうことで、最期の瞬間に立ち会わなくても後悔が残らないように促すことの重要性などを説いた。

 普段はデイサービスセンターで働き、奉仕団に初めて参加したという蓮光寺(滋賀県長浜市)の筧承(かけひ・たすく)住職は「福祉は皆が幸せになる道を探すことが大切だという思いがある。逝く側も見送る側も、双方が救われる道を探るための具体的な構え方を教わることができた。有意義だった」と話した。

「僧侶は苦しみを聞いて」

 岡山院長は「治らない人の苦しみを和らげたい」と終末期医療を志して麻酔科医となり、現在は開業医として在宅医療を行っている。自身と浄土真宗や仏教との親和性を感じ、今年6月に大谷派で得度した。

 奉仕団の中心メンバーで、岡山院長の僧籍取得を支援した瑞興寺(大阪市平野区)の清史彦住職は「西洋医学が浸透する前は、仏教と医療は近い関係性があった。現代の仏教と医療をつなぐ人になってほしい」と期待を込める。

ビハーラ奉仕団2

 岡山院長は「急性期は病院で、慢性期は在宅で」と呼び掛ける。

 岡山院長によると、現在は国が在宅での看取りを推奨する地域包括ケアシステム=用語解説=の関係もあって在宅医療は診療報酬が高く、医師1人と事務員2人で約30人の患者がいれば、病院経営が成り立つのだという。

 岡山院長は地域活性化のためにも、周辺の訪問看護ステーションや介護事業所などを利用し、勉強会を行いながら地域全体での看取りを目指す。その中で「地域が育つことで持続性が生まれる。ここに寺院も関わってもらえれば」と、地域インフラとしての僧侶や寺院の可能性を示唆する。

 ただ、同時に僧侶が活動するための金銭面を担保する仕組みがないことも指摘。「人材の確保や、次の事業を進めるためにもお金を得る方法を考えることが大切」と強調する。

 岡山院長は「医師は痛みを緩和し直接的に患者の役に立てるが、僧侶は〝役に立たない〟ことを意識することから始まるのではないか。患者や家族、医療者の苦しい気持ちを聞いてほしい」と説く。

 自身も僧侶としてスタートラインに立ったばかり。「学びを深めたい。志を同じくする人たちと共に活動できれば」と前を向き、在宅医療の普及や、入居者がカフェの運営などを通じて社会と関われる高齢者住宅の開設などに邁進する。(編集委員 泉英明)
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【用語解説】聴聞(ちょうもん=浄土真宗)
 浄土真宗では、阿弥陀如来の救いを「聴聞」することを重んじる。宗祖親鸞聖人は『顕浄土真実教行証文類』(教行信証)の中で、「楽(この)んで世尊の教を聴聞せん」と記し、説明書きとして加えた左訓(さくん)に「ゆるされてきく、信じてきく」と示した。第8代蓮如上人は、『御一代記聞書』で「聴聞にきはまる」と強調。「聴聞」を「後生の一大事」として、現代までその教えが受け継がれている。

【用語解説】地域包括ケアシステム
 誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らせる社会を目指し、厚生労働省が提唱している仕組み。医療機関と介護施設、自治会などが連携し、予防や生活支援を含めて一体的に高齢者を支える。団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を図っている。

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