見出し画像

孤立防ぐコロナ対策を

※文化時報2022年2月18日号に掲載された社説です。

 早くも正念場を迎えたと言えるだろう。政府の孤独・孤立対策である。

 新型コロナウイルス感染拡大の第6波で、全国の自宅療養者数は約54万7千人(2月9日時点)となり、第5波のピーク時の4倍を超えた。濃厚接触者を含めると、かなりの人が隔離され、物理的に孤立した。保健所からの連絡がなく、不安な日々を過ごした人も多い。

 政府はオミクロン株の特徴を踏まえ、濃厚接触者の待機期間や無症状者の療養期間を、10日間から7日間に短縮した。感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取るためという理由だが、孤独・孤立のリスクも十分考慮すべきだ。

 「新型コロナウイルス感染拡大は、(中略)社会において内在していた孤独・孤立の問題を顕在化させ、あるいは一層深刻化させる契機になったと考えられる」。政府の「孤独・孤立対策の重点計画」に記された一文である。

 昨年12月28日、政府は孤独・孤立対策推進会議の第1回会合を開き、重点計画を決定した。会議に出席した岸田文雄首相は、2021年度補正予算と22 年度予算で、総額63億円を孤独・孤立対策に投じることを明らかにした。

 だが、この数字だけでは、政府が対策に本腰を入れるかどうかは分からない。63億円は一見すると多額だが、22年度予算案に計上された衆議院議員465人分の議員歳費(95億円余り)の約3分の2にすぎない。

 さらに内訳を見ると、熱中症対策推進事業(環境省)や地方消費者行政強化交付金(消費者庁)など、名称だけでは孤独・孤立対策に直結しないような項目も含まれている。各省庁から関連しそうな事業費をかき集めてきた印象は拭えない。

 新型コロナによる隔離生活で、孤独・孤立の問題は一気に社会全体へとあふれ出た。わが事として捉える人々は、第5波の時よりも増えたはずだ。公助を担う行政はもちろん対策を迫られているが、共助の必要性もまた、注目されるべきだろう。

 宗教が育むコミュニティーやネットワークは、共助に十分な貢献ができる。大いなる存在や人知を超えた力があると信じられれば、孤独・孤立の断崖に立たされたとき、踏ん張る一助になる。たとえ特定の信仰を持たなくても、神仏に見守られているという感覚があれば、痛みやつらさは多少なりとも和らぐ。

 重点計画には「孤独・孤立は、人生のあらゆる場面において誰にでも起こり得るものであり、支援を求める声を上げることや人に頼ることは自分自身を守るために必要であって批判されるべきものではない」とも書かれている。

 上がった声は、誰が受け止めるのか。頼られる相手は、誰がふさわしいのか。宗教者には、自分の胸に手を当てて、考えていただきたい。特に寺院住職は、自分の檀家・門徒が孤独・孤立に陥っていないか、日頃から気を配る必要がある。

【サポートのお願い✨】
 いつも記事をお読みいただき、ありがとうございます。

 私たちは宗教専門紙「文化時報」を週2回発行する新聞社です。なるべく多くの方々に記事を読んでもらえるよう、どんどんnoteにアップしていきたいと考えています。

 新聞には「十取材して一書く」という金言があります。いかに良質な情報を多く集められるかで、記事の良しあしが決まる、という意味です。コストがそれなりにかかるのです。

 しかし、「インターネットの記事は無料だ」という風習が根付いた結果、手間暇をかけない質の悪い記事やフェイクニュースがはびこっている、という悲しい実態があります。

 無理のない範囲で結構です。サポートしていただけないでしょうか。いただければいただいた分、良質な記事をお届けいたします。

 よろしくお願いいたします。


サポートをいただければ、より充実した新聞記事をお届けできます。よろしくお願いいたします<m(__)m>