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カフェデモンク 傾聴を地域で

※文化時報2022年3月11日号の掲載記事です。

 東日本大震災から11年となるのを前に、超宗派の宗教者らによる傾聴移動喫茶「カフェデモンク」に関わる有志らが2月25日、「第1回カフェデモンクサミット」をオンラインで開いた。北海道えりも町で精神障害者らの居場所づくりに取り組む「カフェデモンクえりも」からの報告をメインに、参加者約100人が多職種連携や地域活動の可能性について考えた。

真心で生まれる共感

 カフェデモンクえりもは、精神科医療のないえりも町で月2回の外来診療や訪問診療を行ってきた浦河ひがし町診療所(北海道浦河町)が、孤立する当事者や家族へのケアが必要とみて、宗教者に連携を持ち掛けたのがきっかけ。2015(平成27)年8月から月1回、えりも町の施設などで開催してきた。

 曹洞宗法光寺(えりも町)の佐野俊也住職を代表に、キリスト教の牧師を含め宗教・宗派を超えて宗教者らが協力しており、行政職員や福祉関係者、精神障害のある当事者も加わって、息の長い活動を続けている。

 副代表で浦河ひがし町診療所のソーシャルワーカーを務める高田大志さんは「会の進行や運営に当事者が入り、専門家らと協働することに意味がある」と強調。18年の北海道胆振(いぶり)東部地震=用語解説=の後、最大震度7を観測した厚真(あつま)町でもカフェデモンクを開くようになったと紹介し、「当事者は、精神障害のつらい経験と被災者の気持ちを重ね合わせて、傾聴活動を行っていた」と明かした。

カフェデモンクえりも提供1

2015年に行われたカフェデモンクえりも。左端が佐野住職、右端が高田さん=北海道えりも町

 佐野住職は、東日本大震災の被災地で活動に参加した経験を元に、「カフェデモンクには、言葉を出せないときでも伝わる力や、真心をもって相手と向き合うことで生まれる共感がある」と指摘。研究者の視点で活動を見守ってきた浮ヶ谷幸代・相模女子大学名誉教授(文化人類学)は「参加者にとって、自分の存在価値や役割を見いだす場となっている」と評価した。

「場」を開き、ほぐす

 カフェデモンクの原点は、東日本大震災の被災地にある。

 2011年5月、宮城県南三陸町の避難所で初めて行われ、それから10年間で約400回開催された。色とりどりのスイーツや香り高いコーヒーで「場」をほぐし、臨床宗教師=用語解説=をはじめとする宗教者らが被災者らの苦悩に耳を傾けている。

 曹洞宗通大寺(宮城県栗原市)の金田諦應住職が発案し、僧侶や修道士を指す英語のモンク(monk)と文句、悶苦の語呂合わせでカフェデモンクと命名した。

 この日のサミットでは、金田住職がこうした経緯を説明し、カフェデモンクについて「震災によって動かなくなったそれぞれの物語を再び動かし、破壊された地域社会の関係を再びつなぎ合わせる役割があった」と述べた。

カフェデモンクサミット・金田住職

カフェデモンクの歩みについて語る金田諦應住職

 また、現在は全国14カ所に広がり、訪問看護ステーションでの開催や困窮者支援を目的とした活動など、新たな展開が始まっていると報告した。

 サミットの開催目的については「東日本大震災で得られたスキルや教訓を、次世代に伝えることが、亡くなった方々や被災した方々に対する私たちの使命」と語った。次回は5月28日を予定している。

【用語解説】北海道胆振東部地震(ほっかいどういぶりとうぶじしん)
 2018年9月6日午前3時7分、北海道胆振地方中東部を震源に発生したマグニチュード(M)6.7の地震。厚真(あつま)町で最大震度7を観測した44人が犠牲となり、住宅491棟が全壊、1818棟が半壊した。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)
 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数21年3月現在で203人。

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