京女、創基100年でビジョン
※文化時報2021年3月18日号の掲載記事です。
京都女子大学は3月13日、同大体育館で創基100周年記念式典を開いた。ジェンダー(社会的性差)平等への貢献など五つの達成目標と、新学部の設立など六つの具体的な計画に取り組むことを示した「京都女子大学第2次グランドビジョン」を発表し、その実現に向けて決意を表明した。
達成目標は2029年が年限。ジェンダー平等の実現に貢献できる女性の養成▽教育、研究の両面における持続可能な開発目標(SDGs)=用語解説=達成への貢献▽多様な学生が集まり、多様な価値観の中で、生涯学び続ける大学▽世界の大学と連携し、人類に資する研究を推進▽時代の変化に合わせて新たな価値観を創造する大学―の五つを掲げた。
これらを実現するための具体的な施策として、データサイエンス系新学部の設置▽既設の学部改革▽ジェンダー研究と教育拠点の設置▽女性活躍を支えるリカレント教育(学び直し)の充実▽SDGsへの貢献▽東山キャンパス整備計画の推進―の六つを挙げた。
竹安栄子学長は「男性からの視線に煩わされることなく可能性を広げられる本学の環境は、女性の人間形成に大きな意義を有する」と説明。「本学設立に情熱を傾けた女性たちの思いを胸に、新たな100年の歴史を築いていく覚悟だ」と述べた。
式典には、浄土真宗本願寺派前裏方の大谷範子名誉教授ら学校関係者や足利善彰本願寺派総務、門川大作京都市長ら約200人が集まり、学園のさらなる発展を願った。
大谷名誉教授は「お言葉」で、「新型コロナウイルスにより、潜在していた社会の問題や矛盾が明らかになった。親鸞聖人の時代から人間の本質は変わらないことを改めて知らされた」と指摘した。
その上で、阿弥陀如来の智慧と慈悲に支えられることで、自信や勇気、他の人に対する寛容さを持った行動が可能になると説き、「変化が当たり前の社会で生きる上で大きな力になり、平和な社会の構築につながる」と語った。
女性3人の熱意が礎
甲斐和里子・大谷籌子・九條武子
男女平等の精神が行き渡らず、女性の法的権利が排除されていた戦前に、京都女子大学につながる教育機関が設立されたのは、3人の女性と仏教婦人会の熱意が根底にある。
同大学は1899(明治32)年、甲斐和里子氏が仏教精神に基づく女子教育を目指して創設した顕道女学院にルーツがある。
その後、大谷光瑞・本願寺派第22代宗主の妻で仏教婦人会総裁だった大谷籌子(かずこ)氏や、光瑞宗主の妹で歌人の九條武子氏によって、高等女学校令による京都高等女学校が顕道女学院を母体として設立され、学校法人京都女子学園の礎となった。
1918(大正7)年の大学令の制定を契機として、大学設立の認可に向けて動き出したが、女子教育への無理解を背景に、当時の文部省は認可しなかった。そのため、20年3月に京都女子高等専門学校を設立。所期の目的が達成されたのは、戦後の学制改革を経た1949(昭和24)年だった。
竹安学長は式典でこうした歴史をひもとき、芝原玄記理事長は「1920年の時点で、本学園はすでに大学としての充分な資質と内容を整えていた。創基100年という耳慣れない言葉を用いたのは、厳密を期するため」と説明した。
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【用語解説】持続可能な開発目標(SDGs)
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。15年に国連本部で開かれた「国連持続可能な開発サミット」で採択された。17の目標と169の達成基準からなり、誰一人取り残さないことを誓っている。
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