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世代超えた〝学園祭〟…寺フェスで活気

※文化時報2021年12月9日号の掲載記事です。

 本堂前の特設舞台に、子どもや若者が次々に上がる。ジャズダンスにアクロバット体操、和太鼓に吹奏楽。まるで学園祭か文化祭のようで、地域のお年寄りものぞきに来る。日蓮宗蓮久寺(千葉県君津市)が行う寺フェス「秋の舞音祭(ぶおんさい)」。どんな魅力があるのか。(山根陽一)

君津市長も応援

 11月27日土曜日。晩秋の青空の下、蓮久寺に続々と人が訪れた。境内には子ども広場が設けられ、秋の味覚を堪能できるキッチンカーも登場。その場で書いて渡す御朱印やおみくじもあり、老若男女を飽きさせない工夫があった。

 今年で5回目を迎えた秋の舞音祭は、江口隆晶住職(41)が「君津市民が集って楽しめる場にしたい」と企画した。今回は後援団体に君津市、君津市社会福祉協議会、私立翔凜中学・高校、地元サッカークラブのアトレチコ君津が名を連ね、当日は石井宏子君津市長も駆けつけた。

 ほぼ毎年顔を出すという石井市長は「蓮久寺のイベントは地元活性化に大きく貢献しており、子どもから高齢者までみんなが笑顔になる」と評価。政教分離の原則=用語解説=との兼ね合いについては「布教や説法をしているわけではないので問題ない。行政としてもできる限り支えていきたい」と語る。

蓮久寺 市長と住職

江口住職(右)と石井市長

一度は途絶えた

 君津市は、東京湾アクアラインを利用すれば都心から約30分で行けるが、元々は南房総ののどかな田園地帯。日本製鉄の製鉄所を有する工業都市としても知られる。

 1965(昭和40)年、旧八幡製鐵君津製鉄所の創業とともに多くの労働者が流入し、新旧の住民が混在する町となった。江口住職の父、隆祥前住職は住民同士の交流を図ろうと、80~90年代にかけての約10年間、「蓮久寺祭り」と称して縁日を開催した。

蓮久寺 高齢者も参加

高齢者もおみくじ目当てにやって来た

 一時はにぎわいを見せたが、少子高齢化が進み、途絶えてしまった。「町に活気を取り戻したい。父がやってきたことを、新しい時代にふさわしい形にしてよみがえらせたい」。総本山身延山久遠寺で修行を積んで2015年に自坊へ戻った江口住職は、考えた。

「生きている間に来て」

 地元のさまざまなイベントに足を運んだ。盆踊り大会、ラジオ体操、神社のお祭り。千葉県の青少年相談員にもなった。幅広い世代に顔を覚えてもらい、会員制交流サイト(SNS)を活用しながら人の輪をどんどん広げていった。

 そんな中で、細いベルト状のラインの上でバランスを楽しむ綱渡りのようなスポーツ「スラックライン」の体験会を開催し、注目を集めた。「楽しそう」と思ったことなら何でも取り入れてきた。

 一つ形を成すと面白いもので、「手伝わせてほしい」と声が掛かるようになる。それが、今回のイベントで協力してくれた翔凜高校サッカー部やサッカークラブのアトレチコ君津だ。いつのまにかイベントをつくる陣容が整っていた。

 こうした仕組みを、「シェアテンプル」と名付けて発信している。お寺を舞台に、地域の人々から学んだこと、楽しんだこと、気付いたことをシェアしようという取り組みだ。お寺を楽しく温かい場所にすることで、町や人に活気を与えようとしている。

 江口住職は言う。

蓮久寺 キッチンカー

お昼過ぎにはキッチンカーが境内に

 「生きている間にお寺に来てほしい。日蓮聖人が現世での幸福の追求を説いているように、『ワクワクする』『行ってみたい』と思われるお寺でありたい」

【用語解説】政教分離の原則
 国家の政治と宗教を分離させる原則。政治と宗教が互いに介入することを禁じる。日本国憲法では信教の自由を定めた20条と、宗教団体への公金支出を禁じた89条で規定される。

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