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Feel the Contest 2022 セミファイナリスト 播磨マイア

イタリアで開催される若手ニットデザイナーのためのコンテスト『Feel the Contest』。2022年のセミファイナリスト33名のひとりに、文化ファッション大学院大学(BFGU)ファッションテクノロジーコースの播磨マイアさんが選出。大学院でサステナブルなコレクション制作に取り組んでいる播磨さんに、コンテスト作品のコンセプトや制作過程について聞きました。

ーセミファイナリストおめでとうございます。惜しくもファイナリスト選出は逃しましたが、2022年6月末にイタリア・フィレンツェで行われた糸とニット素材の国際見本市​​「Pitti Immagine Filati」で作品が展示されたんですよね。

ありがとうございます。自分が見に行けなかったのが残念です。

Pitti Immagine Filatiでの展示の様子

ー「Feel the Contest」応募のきっかけから教えてください。

応募した当時、ファッションテクノロジーコース1年生の基礎研究で、ホールガーメントとゼロウェイストパターンについての研究をしていました。その時に、ゼミの先生から応募を勧められたんです。ニットを専門に学んでいたわけではありませんでしたが、チャレンジしてみようと思ったんです。

ー応募時に必要なのは、ポートフォリオとデザイン画2体でしたよね。

はい。大学時代に手編みや家庭用編機でニットを制作したことがあったので、ポートフォリオにはその作品を入れました。

ー今回コンテスト側から与えられていたテーマは「Feel the Green」でした。播磨さんの作品のコンセプトについて教えてください。

私は、アルゼンチンのブエノスアイレス出身なのですが、コロナで帰国できなくなってしまい、グーグルマップのストリートビューで大学時代に通っていた道なんかを見ていたんです。ブエノスアイレスは東京のような都会ですが、私が住んでいた場所は街路樹も多くて、美しいんです。そこから「Green」を取りました。

まず、ストリートビューの写真をコラージュして、それをもとに絵を描きました。ちょうど選択授業で水墨画を習っていたので、水墨画で。そしてその絵をコンピューターニットの機械を使ってジャカードの柄として編みました。

色のポイントは、グリーンとパープル。パープルを選択したのは、アルゼンチンの桜みたいな存在の、ジャカランダという紫色の綺麗な花があって、それを思い出して。

ミニコレクション2体のデザイン画

ーコンピューターニットは大学院の授業で初めて触れて、まだ難しい部分もあったのではと思うのですが。

基礎研究での経験がありましたから、効率的に進められたかなと思います。ただ、プログラミングはまだ難しい部分もあるので、コンテストの作品はすべてホールガーメントではなく、成形というパーツごとに編んでいく方法も採用しました。木の枝を模したパーツは手編みで作り、刺繍して立体感が出るように仕上げています。

パンツは四角で編んだパーツをそのまま使えるように、股ぐりの部分だけをホールガーメントで作るような、パターン上の工夫もしています。

また、色々な素材を試したりもしました。デザイン画のような透け感を出したかったんですが、コットンだけの糸だとすぐ切れてしまって、最終的にはウールとキュプラの混紡の糸を使いました。

ー「Feel the Contest」は糸会社がスポンサーとなり、制作に必要な糸が提供されます。糸会社とのマッチングはどのように行われるのでしょうか?

生分解性の、プラスチックフリーの素材でやりたいですという希望は最初に伝えました。Filideaという会社とマッチングし、会社の方にデザインの意図を説明して、希望の糸や太さを伝えました。そして送られてきた糸見本帳から使用したい糸を選びます。

ー制作のスケジュールはどうでしたか?

1月が応募締切で、実際の制作は春休み中に。春休みがなくなってしまいましたが、基礎研究のブラッシュアップのような感覚です(笑)。4月にはミニコレクション2体を完成させ、5月にはファイナリスト5名を選出するウェブ投票が行われました。今年は去年に比べて投票数がとても多かったそうで、ファイナリストには残れませんでしたが、他の参加者の方はニットを専門に学んだ人ばかりでとてもレベルが高かったと思います。

ー先ほどブエノスアイレス出身とおっしゃっていましたが、播磨さんのご自身のこともお聞きしたいです。

私は、アルゼンチンで生まれ育った日系3世で、ブエノスアイレス大学のファッションデザイン専攻を卒業しました。卒業制作をブエノスアイレスファッションウィークの新人デザイナー枠で発表することもできて、日本で新しいチャレンジがしたいと思って来日しました。

日本に来たのは2020年の3月。パンデミックが始まり、私が着いた1週間後に国境が閉じてしまいました。当初は進学するつもりもなかったのですが、世界の状況も変わってしまって、BUNKAだったら日本でも世界でも知られている学校なので、就職や今後他の国に行くとしても有利かなと思い、BFGUに入学しました。

ーファッションテクノロジーコースを選んだのはなぜですか?

確かにパタンナーのコースですよね。私はデザイナーとしてもっと作り方を知りたかったんです。色々な仕様や技術、作り方を学びたいという目標で入学したのですが、みんなパターンや縫製が完璧で、技術的なレベルがすごく高くて、ついていけないって1年生の時は落ち込みました。今は、みんなと比べないで、自分はこういうコンテストに参加したらいいのかなって思うようになったんですけどね。

ー卒業研究はどのようなことを?

引き続きサステナブルをテーマにしていて、生分解性素材を使った土に還るコレクションを制作中です。カポックという植物由来の中綿を使った立体感のあるものや、ポリ乳酸(生分解性バイオマスプラスチック)の糸を使ったニットなどを作っています。

ー最後に、今後「Feel the Contest」に応募する方に向けて、メッセージをお願いします。

チャレンジが一番だと思います。コンテストは、違う目線でファッションを見られるいい機会だから。「Feel the Contest」は素材を提供してもらえますし、ニットデザイナーを目指しているかたには特におすすめしたいです。

Feel the Contest
主催:Consorzio Promozione Filati、Fondazione Pitti Immagine Discovery
賞:Made in Italyのカプセルコレクション制作
対象:22~35歳の新人デザイナー
提出作品:ポートフォリオ、CV、ニットウェアミニコレクション(2体)のデザイン画

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