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2023 International Youth Design Competition ファイナリスト 賈 怡雯

中国の壮大な歴史と文化に囲まれた北京・万里の長城にある居庸関(きょようかん)を舞台に開催された「2023 International Youth Design Competition」。ファイナリストに選出された文化ファッション大学院大学(BFGU)修了生、賈 怡雯(カ イブン)さんに、応募したコレクションのテーマやコンテストのこと、留学についてお聞きしました。

ーまず、応募のきっかけから教えてください。カさんは、北京服装学院ご出身なので、もともとコンテストのことは知っていたのでしょうか?

中国で働いている友人から教えてもらいました。私は、いま日本で留学関係の仕事をしているので、最初は私の学生たちで誰か応募できないかという話でした。でも、みんな忙しく、コンテストの募集要項を確認すると、卒業3年以内であれば参加することができるとの内容だったので、私自身が応募してみることにしたんです。

私が大学生の時は、このコンテストはまだ2回目くらいで、そんなに有名ではありませんでしたし、会場も北京服装学院内のホールでした。今回初めて万里の長城が会場ということで、とても魅力的に感じました。

ーカさんは2020年にBFGUを修了されていて、今回応募した作品は当時の修了制作ですよね。テーマは「クレヨン」でした。

最初は「目の病気」というテーマで、デザイン画を描きました。大学生の時、母が目の病気で入院し、毎日お見舞いに行っていた経験から、人間の視覚について興味を持ち始めました。色弱の人、弱視の人、私たちが見えている世界は皆同じなのかという疑問です。

その疑問から発展させた今回の制作のリサーチの中で、天文学者ルシアン・ウォーコウィッチのスピーチに出会いました。私たちが見ているのは、幅広いスペクトルのほんの僅かな可視光線の部分だけであること、それはたった1本のクレヨンで絵を描いているようなものだと。その話から、自分が握った唯一の「クレヨン」で描いたコレクションです。

デザイン画

ー制作でこだわった部分はありますか?

日本に来て、お店で売っている服の裏側まできれいに作られているのを見て、自分の作品も裏側もきれいに作ろうと思いました。それで裏側を全部パイピングで処理しています。フリルの部分は0.3cmの三つ折りにしたり、きちんと裏地を付けたり。今回の作品はシンプルに見えるかもしれませんが、細かいところをデザインしています。

波打つフリルやポケット口
ループボタンのディテール

BFGU1年生の時、時間をかけて制作したはずの13体の修了作品を捨ててしまったクラスメイトもいました。私も、1年生の作品は全部箱に入れて仕舞ってしまいました。2年生の作品は作って終わりではなく、普通に着られる服を作りたいと思ったんです。

ーその修了制作から6体を今回のコンテストで発表しました。参加してみて、3日間いかがでしたか?

飛行機やホテルも用意してもらえましたし、色々な国の学生の作品が見られたのが良かったです。母校の北京服装学院も5年ぶり。学校も先生も変わりありませんでした。自分が学生だった時に、コンテストのボランティアで参加したことがあったのですが、今回は自分にボランティア学生がついてくれたので、とても楽でした。

ー中でも印象に残っていることは?

ショーの会場がとても綺麗でしたし、モデルさんに着装してもらって、万里の長城で作品を発表できたのに感動しました。あと、大雨(笑)。

居庸関を背景にしたランウェイ
大雨のため、ショーが一時中断した
雨のバックステージ

ーカさんが北京服装学院からBFGUに留学した理由は?

北京服装学院では、BUNKAの教科書でパターンを学びます。日本の教科書は説明が分かりやすく、立体裁断の先生からも日本の技術はすごいと聞いていたので、日本でちゃんと勉強したいと思っていました。また、学校の図書館には『装苑』や日本の雑誌がたくさんありました。もうひとつは、付き合っていた彼が建築を学びに先に日本に留学をしていて、彼と一緒に日本に行きたいというのもありました。

北京服装学院図書館にある『装苑』

ー最近は中国から日本への留学が人気だそうですね。

10年ほど前はデザインを学ぶため、イギリスやアメリカへの留学が人気でした。中国では良いブランドの良いポジションにつくには学歴が必要ですから。そうして帰国した人たちは中国国内でデザイナーになりましたが、現在、腕のいいパタンナーが不足している状況です。それで今度は、日本でパターンの技術を学びたいと思って留学する人が増えました。

もうひとつの理由は、90年代から日中関係が良くなって、テレビで日本のアニメやドラマが見られるようになったこと。それを見てきた私の世代は、日本には色々な面白いことがあって、行ってみたいと思っています。山本耀司さんや川久保 玲さんのような有名なデザイナーもいますしね。REDBOOK(中国のSNS)で、文化服装学院の入学式スナップなども人気です。

ー今後、コンテストに挑戦したい学生にメッセージを。

環境にやさしいものを作ってください。すごく大きな作品を作る人もいますが、コンテストが終わったら、学校を卒業したら、その作品はどうなりますか? 服の価値の短さでいえば、ファストファッションと同じではないでしょうか。コンテスト如何に関わらず、ファッションデザイナーにとって大事なことだと思います。

https://www.instagram.com/mcialtk/

International Youth Design Competition
主催:北京服装学院、北京市昌平区人民政府
開催地:中国・北京
応募資格:在学中、または卒業後3年以内の者、チーム参加可
応募作品:4~6体のコレクション (メンズ/ウィメンズ/ユニセックス)
提出作品:コレクションのデザイン画、写真
賞:金賞 1名:50,000 RMB(約98万円)、トロフィー、賞状
銀賞 1名:30,000 RMB(約58万円)、トロフィー、賞状
銅賞 1名:20,000 RMB(約39万円)、トロフィー、賞状
優秀賞 5名:6,000 RMB(約11万円)、賞状

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