第2回《日本の川と暮らし》
Author:北中康文(自然写真家)
田んぼに張る水も、工場で流す水も、そして、家庭で使う水も、そのすべてが川(一部は地下水)から供給されている。水道の蛇口をひねると新鮮な水が出るのは、蛇口が浄水場を通して川とつながっているからだ。普段、何気なく使っている水だが、我々の暮らしにとって川はなくてはならない存在である。そこで、第2回の今回は、日本の川と我々の暮らしについて、そのつながりを5つに分けて見ていこう。
(1)生活の基盤と川
私たちが生活する大地の多くは、大半が平坦な土地だ。つまり、平野といわれる地域に人口が集中している。中でも、大都市は大きな川の河口に位置することが多い。水が確保でき、平坦で住みやすいからだ。しかし、この平坦な土地は、日本列島が生まれた頃からあったものではない。時の流れとともに、川が上流から土砂を運び、その土砂が堆積して形成されたものである。そんな日本の川と平野の関係を、2枚の写真で紹介したい。
(2)農業を支える川
時代が変わっても、私たちの主食はお米だ。このお米を生み出す田んぼは、川から供給される水がなければ存続できない。もちろん、田んぼだけではない。野菜や果物などの耕作地にも水が不可欠である。そんな農業と川の関係を鳥目線で眺めてみよう。
(3)交易路を生み出す川
川は古くから人々の活動を支えてきた。とくに、人や物資の移動にとって、川はなくてはならない存在だった。川の流れを利用した水運が、人や物の交流を促した。そして、産業革命が訪れると鉄道や車の輸送が主役となったが、そのルートを提供したのは、やはり川だった。川が刻んだ谷に沿って、今も多くの鉄道や道路が敷かれている。そんな川が生み出す交易路を、写真とともに見てみよう。
(4)エネルギーを作り出す川
日本全国には3,000を超えるダムがある。利水、治水、発電、それぞれ目的は異なる。しかし、我々が抱くダムのイメージは、やはり水力発電ではないだろうか。戦後、日本の産業発展を支えた水力発電は、映画にもなった黒部ダムに象徴されている。しかし、エネルギーを作り出す川は、ダムだけではない。そんな川の姿を2枚の写真で見てみよう。
(5)スポーツや観光を提供する川
日本の川が暮らしに与える恩恵の5番目は、スポーツや観光を提供してくれること。川幅を拡げる中下流部では河川敷も広がり、住民に憩いの場を提供してくれる。さらに、景勝地を流れる川では船下りが行われ、川面から絶景を堪能することも可能だ。日本の川は、私たちに健康活動や感動まで与えてくれる。そんな典型例を見ておこう。
第3回へ続く。
Author Profile
北中康文(きたなか・やすふみ)。1956年大阪府生まれ。東京農工大学農学部卒業。スポーツカメラマンを経て、1993年より自然写真家として活動。全国1600ヶ所の滝をカメラに収めるなど、水をテーマとしていたが、水の器としての地質の重要性に気づかされる。2019年DUIDA認定ドローン操縦ライセンス取得。その後、3年半を費やし全国109一級河川を空と地上から撮影。日本の川の多様性に驚かされる。主な著書に「日本の地形地質」(共著)「日本の滝①②」「滝王国ニッポン」「風の回廊~那須連山~」「シャッターチャンス物語」「LE TOUR DE FRANCE」など。2007年「日本地質学会表彰」受賞。
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